二十六代目聖女戦争
伯爵令嬢フローランス(六才)のとび蹴りが、伯爵令嬢エミリール(六才)の顔面に炸裂し、二十六代目聖女が決定した。
王子の婚約者も兼ねている聖女は、家柄もよろしい上流階級の年頃の娘たちが集められ、教養と品格を審査されたうえで、殴り合いで勝った者が勝ち取る結果になった。
もちろん、暴力沙汰で次期聖女を選ぶ予定ではなかったが、なし崩し的にそうなってしまったのだ。
聖女フローランスの天下は、三年しか持たなかった。
流行り病が王国に蔓延し、治癒魔法が使えないフローランスは役立たずの聖女と、中傷されるようになった。
そこに城に乗り込んできたのは、片手に署名の束と別の手にケーキを持った伯爵令嬢エミリール(九才)。
流行り病を、治癒魔法で片っ端から治し撲滅したエミリールは、助けた人に聖女推薦の署名にサインをさせ、乗り込んできたのだ。
王国はエミリールの実績を無視できず、要求を拒否することができなかった。
かくて、フローランス(九才)は追放され、新聖女エミリール(九才)が誕生した。
「おくらいになりなさい」
ケーキは見事に敗北者フローランス(九才)の顔面に叩つけられた。
その三年後、フローランスは返り咲く。
魔物侵攻を阻止した功績と馬鹿でかいカエルを掴んで、城に戻ってくる。
聖女を奪還したフローランス(十二才)。
聖女を剥奪されたエミリール(十二才)。
「ざまぁでございますわ」
大カエルは、追放されるエミリールの顔面に叩きつけられた。
その後も、聖女をめぐる攻防は続き、城の中で取っ組み合いもたびたび起こった。
王子との婚約が決定し、隣国の姫は不安な表情で聞く。
「私のような小さな国の姫でよろしかったのでしょうか?」
「よろしいどころか、こちらから婚約をお願いしている立場だ。聖女と王子の婚約者が一緒なのはいろいろ不都合だからな」
姫の従者が、王子に処罰されるのも覚悟で質問する。
「この国の聖女様二人が、姫様に害をなすことは考えられますか?あれだけ婚約者の座を奪い合っているのですから」
予想外のことを言われ、王子は思わず吹き出す。
「ないない。あの二人は、いまだに僕を嫌っているよ。子供のころの僕は、権力をふりかざしてわがままを押し通す嫌な奴だったから、当然だけどね」
「しかし、あれだけ聖女の座を奪いあっているのでしょう」
「まあ、得意分野が違うからな。相手が困ったら乗り込んでくるんだ」
「どういう意味です?」
「君達もこの国に二日もいればわかるよ。あの二人は単なる親友だ」
おわり




