#22 エピローグ 告白
「ねー、れいちゃん。本当に来て大丈夫だったの? 身体はへいき? 歩くのつらくないの?」
私は親友に尋ねた。
「もー、心配性だなぁーまほちゃんは。もともと元気だったけど念の為の入院なんだよ? それに精密検査の結果は『異常なし』なんだから大丈夫だよー」
親友のレイナは笑顔で答える。
誘拐事件から救助後。
吸血鬼に噛まれたレイナは、一週間ほど入院をしていた。
警察からは吸血鬼感染はしていないという見立てだったけど、あとから判明したら取り返しがつかないことになるので誘拐事件の被害者は全員、精密検査と経過観察を受けた。
今日はその退院日。
だから私はレイナともう一人の友人を迎えに行ったのだけど、あいにくもう一人は既に退院したあとだった。
もう一人の友人、いや相棒の桃宮ヒメノはさっさと退院したあと『武蔵野の森の黒猫カフェで待ってる』というメッセージを送ってきた。
どうしたの?
何の用事?
何時に行けばいいの?
など聞いてみたのだが、全て既読スルー。
(まったく何だってのよ!)
と不審に思いつつ、私は素直にヒメノから呼び出しがあった場所へと向かった。
どうせ退院祝いに顔を見に行く予定だったし。
「それにしても今回の敵は最終巨悪じゃなかったんだねー」
レイナが私に話しかけた。
「ねー。吸血鬼女王なんて偉そうな肩書のくせにラスボスじゃないなんて、まったくガッカリよ」
その言葉に私は唇を尖らせた。
「マホヨちゃん、トーキョー電力からエネルギーを得たあとは相手になってなかったヨ。吸血鬼女王はボコボコにされて泣いてたシ。あれがラスボスは無理があるんじゃないカナ」
使い魔につっこまれた。
「吸血鬼女王を泣かせたんだ……まほちゃん」
「まったく情けない怪人よね!」
「どう考えても吸血鬼女王を泣かせるマホヨちゃんがおかしいんだけどね」
「なによ、せっちゃんまで」
私はがんばったんだから、褒めなさいよ。
まぁ、警察の人たちにも、公安の山田さんにも呆れられたんだけど。
爽やかな木漏れ日の中、私とレイナが会話しながら森の中を歩いているうちに、赤い屋根の喫茶店が見えてきた。
看板には『黒猫カフェ』と書いてある。
普段は客のいない閑散としたテラス席。
そこに珍しく先客が座っていた。
都内の有名な私立女子校制服姿でグラスに入ったアイスティーを優雅に楽しむその姿は、どこから見ても立派なお嬢様。
見知った顔、というより私を呼び出した張本人。
「やっほー、ヒメノ。退院したのね」
「遅いわよ、マホヨ」
私が声をかけると、ヒメノは短く返事をした。
「あんたが時間の指定しなかったでしょ」
「もう1時間も待ってたんだから」
「大して待ってないじゃん」
「私には長かったのー」
じゃー、時間指定しなさいよ。
よくわからないやつね。
「元気? ヒメノちゃん」
「ええ、そっちはどう? レイナちゃん」
「今日、退院できたよ。もう元気いっぱい☆」
レイナとヒメノが笑顔で挨拶している。
いつものようにギスギスしてない。
このまま仲良くしてほしい。
「いらっしゃいませ」
いきなり横から声をかけられた。
慌ててパッと振り返る。
この気配を消して現れるのは……。
「ちょっとー、脅かさないでよ、レンくん。普通に登場してくれないかな?」
「気配を消すのはついクセで。ご注文はどうされますか?」
笑顔で立っていたのは、いつみても美少女のように見える中性的な美少年のレンくん。
「私はロイヤルミルクティー。れいちゃんは?」
「私も同じやつを」
「かしこまりました」
レンくんが普通に店の中に入っていった。
(あれ?)
いつもなら怪しいマジシャンみたいに、その場で飲み物を取り出すのに。
今日は調子が悪いのかな?
まぁ、いっか。
そんな日もあるんだろう。
その間、私とレイナとヒメノは他愛ない雑談をした。
入院中はどうやって暇つぶしをしたとか、最近の芸能ニュースの話題とか。
注文をしてから5分ほど経った頃に。
「……お、おまたせしました。ご注文のミルクティーです」
ドリンクが運んでこられた。
か細い、怯えるような女の子の声。
レンくんではない。
レンくんの声も女の子っぽい声なんだけど、ここまで可愛い声ではない。
新しいアルバイトの子かな? と思って私がドリンクを運んできた子の方を向くと。
「は?」
「え?」
私は目を見開いた。
そこにいたのは、煤けたような灰色の髪と真っ赤な瞳の女の子――『吸血鬼女王』赤沢アリアだった。
(なんでこいつがここにっ!?)
混乱する頭とは逆に、反射的に身体が動いた。
「光の魔法少女・変身!! 」
私は即座に魔法少女の姿になる。
そして、右手に魔力をためて光り輝く拳の構えをとり……。
「ひええええっ!!! た、助けてー!! 殺さないでーー!!」
ドリンクを運んできた女の子が腰を抜かしてた。
レンくんが放り投げられたドリンクを、空中で上手にキャッチしている。
女の子が情けなく悲鳴をあげるのを聞いて私は眉をひそめた。
こいつ、本当にあの吸血鬼女王の赤沢アリア?
もしかして、他人のそら似?
だとしたら、いきなり光り輝く拳をしようとした私ってかなりヤバいヤツなんじゃ?
「あのー、ごめんなさい。貴女が私の知ってる怪人に似てたものでつい過剰に反応しちゃって」
私が謝りながら、腰を抜かしている彼女のもとに近づこうとすると。
「マホヨ。そこでへたり込んでるのが私やレイナを攫った吸血鬼女王の赤沢アリアで間違いないわよ」
とヒメノが言った。
「やっぱり殺さなきゃ」
再び右手に殺気と魔力を溜めて……。
「ひええええええ!!!」
「やめなさいって」
赤沢アリアが四つん這いで逃げてゆき、私はヒメノに頭をはたかれた。
「なんで止めるよ! ヒメノ!」
「あのね……、今のこいつは藤の魔女さんと従者契約してるから悪さはできないの。だから退治する必要はないのよ」
「……なんでそんなことになってるの? 怪人は怪人収容所に送られる決まりでしょ?」
「それがねー、SS級怪人の吸血鬼女王を収容できる施設が国内には存在しないのよねー」
「SS級? S級じゃないの?」
「それは普通の吸血鬼ね。吸血鬼女王はSS級。百年に一回現れるかどうかの伝説の怪人よ」
「……こいつが?」
頭を茂みにつっこみ、お尻は出したままぷるぷる震えている赤沢アリアのほうを見ながら言った。
「マホヨさん、うちの新人アルバイトをあまりいじめないでくださいね」
レンくんが私とヒメノの会話に割り込んできた。
「別に虐めてない! ちょっと、光り輝く拳を構えただけだから」
「マホヨさんの本気のパンチを食らったらほとんどの生物は消滅しますからね。マホヨさんの殺気に反応して、武蔵野の森の動物たちが一斉に避難していきましたよ」
レンくんが、苦笑しながらテーブルにドリンクを並べる。
えぇー、それって私が悪いのー?
「…………人を災害みたいに」
「実際、災害みたいなもんでしょ、マホヨは」
「納得いかないわね」
「まーまー、まほちゃん。落ち着いて」
レイナにまでなだめられた。
「アリアさん、もう隠れなくても大丈夫ですよ」
「本当? レン様。私殺されない?」
いつの間にか移動したレンくんが、赤沢アリアの手を取って立ち上がるのを助けている。
「ええ、大丈夫です。身体についている木の葉と土を払ってきてください」
「……もし光の魔法少女に殺されそうになったら守ってくれます?」
「……たとえ灰になってもちゃんと復活させますから」
「守ってくれないんですか!?」
「本気の光の魔法少女相手に無茶言わないでください」
「魔女様の弟子のレン様ですら勝てないんだ……」
なんかレンくんと赤沢アリアが仲良くなってる。
なんだ、あれ。
「ねー、ヒメノ。レンくん、説明してよ」
なんか私が悪者みたいになってるし。
「さきほどヒメノさんが言った通りですね。SS級怪人の吸血鬼女王を収容する施設が国内にないため、近隣で一番の魔法使いである藤の魔女が国から依頼をうけました」
レンくんがすらすらと答えた。
「にしたってさー。このまえ大量誘拐事件までおこしておいて、お咎めなしって甘すぎない? れいちゃんは血を吸われたし、ヒメノだって襲われたじゃない」
私は憤慨する。
が、ヒメノは私の言葉にあきれたように溜息を吐いた。
「あのねー、マホヨ。あんたの聖なる一撃でこの子って灰になって消滅してたのよ? 十分罰は受けてるでしょ」
「え? ……あー、そうよね。私も確認したし……じゃあ、なんで生きてるのよ?」
私がちらっと赤沢アリアのほうを睨むと、「ひぃぃ!」と怯えが顔でレンくんの後ろに隠れている。
「僕と藤の魔女が復活させたんですよ。国からの依頼で」
「なんでよ!?」
消滅したままでいいじゃん!
「吸血鬼女王は強力な不死人の怪人ですからね。いくらマホヨさんの一撃が強くても、放置しておけば十数年もすれば復活します。だったら復活して逃げられるより、こちらで回収して管理したほうが安全という国の判断です。で、SS級怪人を管理をできる魔法使いが東京だとうちのマスターしかいなかったので、ここで預かってるってわけですよ、マホヨさん」
レンくんが説明を締めくくる。
「……むぅ、なるほど」
一応、筋は通っている。
確かに十数年後に人知れず復活されて、また大量誘拐事件なんかを起こされたらたまったもんじゃない。
にしてもなー。
極悪な怪人をこんな簡単に許していいものか。
私の不満顔を見たヒメノが、ぽんと私の肩に手をおいた。
「マホヨが怒る気持ちもわかるんだけどさ。あの子って魔法少女をやってた時は、かなりたくさんの怪人を捕まえたり退治してたらしいの。その成果を考慮してっていうのと、あとはそもそも赤沢アリアって吸血鬼女王っていうヤバい怪人なのに、人を殺したことないんだよね?」
「…………え?」
ヒメノの言葉に私は驚く。
人を殺してない?
だって、吸血鬼って人の血を吸う怪人でしょ?
しかも犯罪組織のボスだったのよ?
「まぁ、自分を怪人に改造した違法魔法使いへ復讐とか、犯罪組織の裏切り者の粛清とかはしたみたいだけど、一般人を手にかけてはないって意味ね。それが情状酌量の判断材料となって、今の状況ってわけ」
「はーあ……、そーなんだー」
私はレンくんのうしろでぷるぷる震えている赤沢アリアを改めてみた。
この前戦った時は、威厳と強者感に溢れてたけど。
今は捨てたれた子犬みたい。
私の怒りは霧散してしまった。
「ねぇ、れいちゃん」
「んー? どうしたの、まほちゃん」
すでにテーブルにつき、ミルクティーをちびちび飲んでいた親友に尋ねる。
「れいちゃんは、あいつに誘拐されて血液まで奪われた被害者なんだけど、その怪人がここで普通に自由にしてて気にならない? 怖くない?」
「んー? なんかまほちゃんに怯えてるし、私の身体は特に不調もなかったからいいんじゃないかな?」
レイナは気にしてなさそうだった。
じゃあ、私もこれ以上は気にしなくていっか。
私はレイナの隣の椅子にどかっと座り、ミルクティーを一口飲んだ。
「で、ヒメノ。呼び出した理由ってこれのこと? 赤沢アリアがミサキさんのところにいることを伝えたかったってわけ?」
「んー、それもあるけど。本題じゃないかな」
「そうなの? じゃあ、本題ってなに?」
私が尋ねると、ヒメノは意味ありげな視線を向けてきた。
「?」
私はヒメノの言葉を待った。
しばらく私とヒメノは見つめ合う。
となりのレイナも、黙ってそれを聞いている。
「ねぇ、マホヨって魔法少女を卒業したいのよね?」
「うん、でもこの調子じゃあ、当分先の話になりそうだけどねー」
最終巨悪候補だった、吸血鬼女王はあんな感じだし。
死ぬのはいやだし、恋人ができる気配もないし。
20歳までには卒業したいなー。
なんて考えていると。
「ねぇ、マホヨ」
「なに?」
ヒメノが顔を近づけてきて、ぽつりと言った。
「好きよ」
「え?」
ヒメノ、今なんて言ったの?
好き?
まぁ、友達としては私も好きだけどなんで急に。
「だからマホヨ。私の恋人になって」
「………………へ?」
恋人?
好きってそういう意味?
「ええええええええええええええええええええっ!!」
大声を上げたのはレイナだった。
「マホヨは、魔法少女を卒業したい。だから恋人がほしい。ちょうどいいでしょ?」
「えっと……」
駄目だ。
頭が追いつかない。
さっきミルクティーを吸血鬼女王が持ってきた時より混乱してる。
「ちょっと待って! ヒメノちゃん、それっておかしいよね?」
私よりも先に混乱から回復したのはレイナだった。
「なんで? 私はマホヨが好きだし、問題ないでしょ?」
「女の子同士だよ!?」
「レイナちゃんはお硬いなー。今の時代だとそんなの普通だって」
「そ、そうなのかなー」
「で、マホヨ。返事は?」
「えー、えーと。えーと……」
私があたふたしていると。
「私のこと……好きじゃないの?」
潤んだ瞳でさらに整った顔を近づけてくるヒメノ。
「そ、そりゃ好きだけど……それは友達というか、相棒というか……」
「この前はキスだってした仲でしょ?」
「え”え”っ!?」
隣のレイナが変な声をあげる。
まずい。
「なにそれ! まほちゃん、聞いてないんだけど!」
「い、いや……それは契約のためであって……」
「聞いてないんだけど!!」
レイナが詰め寄ってきた。
「ふふん。ごめんねー、レイナちゃん。先にファーストキスを済ませちゃって」
ヒメノ! 煽らないで!
が、レイナはその言葉をきくと「すん」と真顔になった。
そして、すすすっと私に近づいて肩を抱きしめてくる。
「あれー? まほちゃん、言ってないんだー。私とまほちゃんはとっくにファーストキスを済ませてるって」
「な”っ!?」
今度はヒメノが変な悲鳴をあげた。
「ちょっと、れいちゃん。それはちっちゃい頃の話で……おままごとの延長というか……」
「小6まではキスしてたもんねー。100回以上してるんだから」
やめて、れいちゃん。
黒歴史なんだから。
「よくそれで私におかしいとか言えたわね! そっちのほうがよっぽどでしょ!」
ヒメノがレイナに詰め寄る。
「中学に入ってからはしてないし!」
レイナが言い返している。
「……うわ」
「……小6は引く」
少し離れたところから、レンくんと赤沢アリアが私たちを見て引いた顔をしていた。
ちょっと!
勝手に聞いて、引いてるんじゃないわよ!
「くっ……、計算が狂ったけど。マホヨも私のこと好きなんでしょ! だったら今日から恋人ね!」
「えぇっ……? そ、そーなのかなー」
なんか強引に押し切られようとしてない?
「でも、それだとヒメノも魔法少女卒業しちゃわない?」
「いいよ!」
ヒメノが力強く言った。
「いいの!?」
全然辞めるつもりなかったのに?
「この前は、満月の夜じゃなかったら普通に危なかったと思うし。今回はたまたまラッキーでマホヨに助けてもらえたけど、毎回うまくいくとは限らないし潜入に失敗したら引退って決めてたんだよね」
「そう……なんだ」
私はスリルを楽しんで、おとり捜査をするヒメノに口うるさく心配してた。
でも注意するまでもなく、ヒメノは引き際を決めていたらしい。
「だーかーらー、ね? 私と恋人になろ……」
「だめーー!!」
ヒメノの言葉を遮ったのは、レイナだった。
「ちょっとレイナちゃん、告白の邪魔しないでよ」
「いやだよ!!」
「なんで?」
「だって、私だってまほちゃんのこと好きだし!!」
「「え?」」
レイナの言葉に、私とヒメノが驚きの声をあげる。
「あの……れいちゃん? 何を言って……」
「私だってまほちゃんがずっと好きだったのに……。それを告白するのを我慢してたのに……、ぽっとでのヒメノちゃんに奪われちゃいやだよ!」
「ぽっとでってなによ! 私は5年以上マホヨの相棒やってきたんだけど!?」
「私は0歳からまほちゃんと一緒にいたんですけど? 5年とか最近だから」
「くっ……、これだから幼馴染は……」
「まほちゃん! 私だってまほちゃんのことが……す、好きだから! 私と恋人になってよ!」
「え、……えぇ」
私が戸惑った声をあげると、レイナの表情が曇った。
「……駄目かな? まほちゃんは、私のことが好きじゃない?」
「そんなわけないでしょ!」
即座に否定する。
「じゃあ!」
レイナがぐいっと、身体を寄せてくる。
「マホヨ!」
ヒメノも同じくらいの勢いで迫ってくる。
「「どっちを恋人にするの?」」
私を二対のキラキラした瞳が見つめてくる。
0歳からの幼馴染――椿レイナ。
魔法少女の相棒――桃宮ヒメノ。
二人とも大切な友人。
私だって二人のことが好きなんだけど、恋人になりたいと思われていたとは想像もしてなかった。
だけど、告白されて嫌な気はしなかった。
むしろ嬉しかった。
今まで男の子に告白されたことは何度もあったけど、どの人よりもドキドキした。
だから、別に恋人になるのも悪くないかな? って思った。
なんだけど……
(二人のうちのどっちかを選ばないといけないの……?)
「どっちかを選ぶとか無理んだけど~~~!!」
私が頭をかかえていると。
「あのー、マホヨちゃんマホヨちゃん」
使い魔のせっちゃんが話しかけてきた。
「なによ? せっちゃん」
いま取り込み中です。
「盛り上がっている所悪いんだケド……」
女三人が姦しく騒いでいる時、使い魔のせっちゃんが言いづらそうに話しかけてきた。
「どうしたの、せっちゃん」
「マホヨちゃんがレイナちゃんやヒメノちゃんと恋人になっても、魔法少女は卒業できないよ?」
「「「えぇーー?」」」
私たちは口を揃えて驚きの声を挙げた。
「な、なんでよ!?」
私は使い魔を問い詰めた。
「恋人ができたら魔法少女を卒業っていうのは、異性の恋人に限るって決まりだからサ。異性の恋人だと子どもができる可能性があるからネ。同性の恋人の場合は、卒業扱いにならないよ」
「うそでしょ! そんなこと聞いてないんだけど!」
「一応、魔法省が発行してる魔法少女免許に注釈で書いてあるんだケド……。確かにきちんと説明したことはなかったカモ」
「この令和に、なんて時代遅れな!!」
「魔法省もお役所だからねー。そのうち見直される可能性はあると思うヨ。ただ現時点においてはマホヨちゃんが、レイナちゃんやヒメノちゃんと恋人になっても魔法少女は継続できるネ。よかったヨカッタ」
「よくない!」
私は天に向かって大声で叫んだ。
少し離れたところではレンくんが気の毒そうに、「そんなことも知らなかったんですか?」という顔でこっちを見ている。
その後ろで吸血鬼女王の赤沢アリアが、「そんなことも知らなかったの?」という顔をしている。
(こいつら……)
言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!
ヒメノとレイナは、どうしようという顔でおろおろしている。
(二人から告白されたから、私は答えなきゃいけないんだよねー……)
仮に付き合っても、魔法少女は卒業できないんだけど。
だからって、適当に返事をするわけにもいかない。
ちゃんと考えて、ちゃんと答えなきゃ。
「まほちゃん……」
「まほよ……」
可愛らしい二人の女の子が、キラキラした目でこちらを見つめてくる。
(いったん、持ち帰って考えよう……)
とても、今日この場では決められない。
吸血鬼女王を相手にするより、ずっと難しい問題だ。
このあと、私は一週間返事に悩んだ。
その間にも、東京では絶えず怪人が発生して、光の魔法少女は呼び出される。
魔法少女の卒業。
それはもうしばらくあとのことになりそうだ。
――おわり。
■大切なお願い
これにて完結です!!
『面白かった!』『続きが読みたい!』と思った読者様。
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