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異世界転移は謎解きクエストの始まり ~せっかく主人公に抜擢されたのに、テンプレ通りにストーリーが進まない!~  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中


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34話 命を狙われてた!

「そんなことより、モン太が言ってたことが本当だったら、あたし、殺されちゃうの?」


 どこか放心していたフィリスは、彩良の言葉で我に返ったようだった。


「おそらく」


「ちょっと待ってよー……」と、彩良は頭を抱えた。


「遅かれ早かれそうなっていただろう。最初から僕に君を殺させるつもりだったんだから。

 いつまでも生きていることがわかったら、別の手を打ってくる」


「ジェニールってことよね? でも、なんで? ここに放り込んでおけば、あいつの目の届くところにいないんだから、怒らせることもないでしょ。今さら殺すなんておかしな話じゃない?」


「ジェニールの狙いは僕の方だよ。サイラはそのための道具として利用されたに過ぎない」


「ちょっと待って」と、彩良はさえぎった。


「話についていってないんだけど。狙われてるのはあたしの方でしょ?」


「君がここで殺されたら、当然僕が犯人になる。僕を処刑する理由ができるだろう?」


「つまり、ジェニールはフィリスに死んでほしいってこと? 理由は?」


「ジェニールとは次期国王の座をめぐって争っていたんだ。もっとも僕は呪いにかかってしまったから、回復の見込みなしということでジェニールの不戦勝。もう世間では終わった話だと思っていたんだが……。

 こうして狙ってくるところを見ると、王太子に決まったわけではないのか?」


「アリーシアって王女様がジェニールと王位争いをしているって聞いたから、まだなんじゃない?」


「アリーシアが?」と、フィリスは意外そうな顔をした。


「ほら、ジェニールは『国王にはちょっとー』みたいな人じゃない。アリーシア王女に国王になってもらいたいっていう人がきっといっぱいいるのよ」


「僕がいなくなった今、そういう話が出てきてもおかしくはないが……。アリーシアがそんな話に乗り気になるかな」


「アリーシア王女を知ってるの?」


「僕の妹だからね」


「そういう関係かぁ……。でも、どうして? 話が出てきている以上、国王になるのは女性でも問題ない国なんでしょ?」


「例外的に認められるのは確かだよ。でも、今回ばかりはアリーシアが王太子に立つ例外はない」と、フィリスは断言した。


「どうして?」


「王妃を母親に持つ正当な王子がいる上、年明けに聖女が召喚される。聖女はどうやっても女性。女性のアリーシアでは結婚することができない」


「国王か王太子と結婚するんだったっけ……」


「ジェニールが王太子の最有力候補になる理由がわかるだろう? アリーシアがそれを知っていて、王位争いをするとは思えないよ」


「え、待って。それなら、ここはフィリスが呪いから回復して、また王子に戻してもらえば、フィリスが聖女と結婚して王太子になってもいいってことじゃないの。

 これでジェニールとの結婚も阻止できるし、国の未来も安泰。すべて丸く収まるわ!」


 ついにクエスト攻略法がわかったと勢い込んだ彩良だったが、今置かれている状況にようやく頭がめぐってきた。


(あれ? あたしが今ここで殺されたら、フィリスを処刑する理由ができちゃうわけで……)


「あれれ……?」と、彩良が首を傾げると、フィリスがかすかに微笑んで見せた。


「ようやく事態が飲み込めてきた? ジェニールからしたら、僕がいつまでも生きているのは迷惑極まりないことだろう。聖女の召喚前には確実に死んでいてもらいたいに決まっている」


「じゃあ、あたしをここに放り込んだのは、最初からフィリスがあたしを喰い殺すことが目的で……。道具ってそういうこと?」


「君も始末したかったのなら、一挙両得とでも言うのかな」


「あんの極悪王子めー!!」


 ジェニールが目の前にいたら、ブン殴る勢いで叫んでいた。


「結局のところ、ジェニールの思惑は外れて、今日まで二人とも無事に生き延びてしまったと」


「それで路線変更? あたしを殺して、フィリスの仕業に見せかけようって魂胆(こんたん)なわけ? で、殺人罪で処刑?」


「まあ、そういうことだろうね。どう殺すつもりなのかは知らないが、さすがの僕も目の前に新鮮な死体が転がっていたら、遠慮なくいただくだろう。どの道、殺人の罪は着せられる」


 まるで他人事のように淡々と話しているフィリスを見て、彩良の方が頭に血が上ってしまう。


「フィリスー!! どうしてそういう生々しいことを平然と言うわけ!?」


「すまない。事態を冷静に判断しているだけで、悪気があったわけではないんだよ」


「あのねぇ……。だいたいフィリスはジェニールに対してもっと怒っていいんだからね。殺人の罪を着せられようとしてるのよ? 普通怒りまくるわよ」


「そういう性格にできていないんだよ。でも、まあ、君が代わりに怒ってくれているから、わりと気持ちはすっきりしていたりする」


 そう言って、フィリスは楽しそうに笑っていた。


「まったくもう」と、彩良もこんな危機的状況だというのに、つられて笑ってしまった。


「ともあれ、君の仲間が警告してくれたおかげで、打てる策もできたわけだ。感謝しないとね」


 フィリスがそう言って向けてきた笑顔は、先ほどのものとは打って変わって、今にも消えてしまいそうなほどはかなく見えた。

次話は再びウルたちの話になります!

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