32話 サイラの救出作戦、決行中
この話はウル視点です。
『大変! 大変!』
ピッピが叫びながらウルの隠れていた茂みに飛び込んできた。
***
サイラ救出作戦を決行すべく、ウルは十日ほど前、夜の闇をぬって王都の近くまでやって来た。
ピッピの情報によると、幌の付いた馬車が時々王都に入っていくらしい。それならウルも中に隠れて城壁の中に入ることができる。
そんなわけで、ウルは草むらに隠れながら幌馬車が通り掛かるのを待っていたのだが――
数日がたってもやって来ない。
退屈したピッピがサイラの様子を見に行ったところ、王宮から彼女の姿が消えていることが発覚した。
(まさかあのクズ野郎に殺されちまったんじゃないか!?)
そう思うと、ウルは居ても立ってもいられず王都の中に飛び込みたかったが、一緒に来たモン太に引き止められた。
クマ子がいない今(巨体過ぎるため留守番)、どうやらモン太がウルのお目付け役に回っているらしい。
結局、『ボクでもサイラの匂いくらいわかるよ』とピッピが言うので、サイラの行方を探すのは任せた。
それから朝飛んでいくピッピが、夕方『まだ見つからなーい』と戻ってくる毎日を過ごし、本当にピッピの鼻でサイラが見つかるのかと疑っていたところだった。
***
『サイラは?』
『まだ見つかってないけど、居場所はわかったよ。北の塔ってところ』
ピッピは急いで飛んできたのか、フウフウと荒い息を吐いている。
『よし、じゃあ、案内してくれ』
『まだ幌馬車が来ていないよ』と、モン太が丁寧に教えてくれる。
『うっ。サイラの居場所を探しているんじゃなかった……』
『その前に、ピッピ、大変って何?』と、モン太が聞く。
そういえば、『大変』と言いながらピッピは戻ってきたのだ。
『あ、そうだ! サイラが殺されちゃうよ! あの王子が手下に命令してるの、聞いたんだ!』
ピッピは羽をバタバタさせながら甲高い声で騒いだ。
『なんだと!? 早く助けに行かないと!』と、ウルは反射的に立ち上がった。
『うん、急いだ方がいいよ。今夜にでもやるって言ってた』と、ピッピが付け加える。
『こうなったら強行突破するぞ。モン太、今度は止めるなよ。サイラが死んだら元も子もないんだからな』
ウルの言葉にモン太は深刻な顔でうなずいた。
『さすがに緊急事態だね。幌馬車を待ってる場合じゃない。ウル、人間を襲ってでもサイラを助けに行くよ』
『任せとけ。ピッピ、北の塔の場所はわかるのか?』
『手下の匂いは覚えておいたから、跡は追えるようにしてあるよ。でも、急いでね。もうじき日が暮れる。ボク、飛べなくなっちゃうから』
鳥目は使えねぇ、という言葉は飲み込んでおいた。
そんな話をしている最中に、街道を数頭の馬が疾走して来るのが見えた。遅れて二台の幌馬車が追ってくる。
『オレたち、運がいいぞ』
『うん。少なくとも余計なもめ事は起こさずに済みそうだ』
モン太はそう言いながらウルの背中にピョイと乗る。
それを合図にウルは二台目の幌馬車目掛けて駆け出した。
短めの閑話なので、本日夕方ごろにもう一話投稿します<m(__)m>
次はサイラの出番です!




