リカンナの猫 3 (スピンオフ作品)
その後は普通に仕事に戻った。でも、若様がふわふわの可愛いものを抱っこする姿を見られた。しかも、想像以上に色っぽい寝間着姿だった。セリナとリカンナだけの秘密だ。もちろん、ヴァドサ隊長は言わないだろうから。
二人は若様のところにいて仕事をしていなかった分、みんなのご機嫌取りに外の庭の掃き掃除に出た。庭は広いので結構、落ち葉を集めるのが大変なのだ。だから、みんなにはありがたがられるが、実はこっそり内緒話ができるから、この仕事を買って出たのだ。
それでも、用心しいしい話に花を咲かせる。昔からジリナの目を盗んで内緒話をするのが身についていたので、二人は仕事をしながら内緒話をするのが、上手かった。
手をせっせと動かしているが、口も小声で動いている。
「ほんっとに若様、可愛かったよねぇ。」
「しかも、まさかの寝間着…!」
「しゃがんだ時、どきどきしちゃった。だって、寝間着がめくれてけっこう、中まで見えそうになってたじゃない。」
「わたしなんてミーを渡すのに、隣にくっつくぐらい寄ったから、心臓がばくばくで飛び出しそうだった。しかも、いい匂いするし、まつげは長いし、唇もさくらんぼみたいでおいしそうだった。」
「…あんた、危ないこと言ってんじゃないわよ。それ、聞かれたらきっとフォーリさんにコレ、よ。」
セリナは思わず本気でリカンナの発言に注意した。コレ、の部分は首を斬られる仕草をする。もちろん、仕事のクビではない。首を斬られるという意味のクビだ。
「あの人、気配ないから、いつ、現れるか分かんないのよね。気をつけないと。」
「あんた、その割には顔がにやけてんだけど。」
「だって…!可愛かった……。だけど、気をつけないと。」
セリナは言いながら、きょろきょろと辺りを見回す。
「まあ、そうだけど。」
リカンナも周りを見回す。その後は場所を進む。庭全体をするため、けっこう屋敷の建物から離れた所まで来て、二人はまた話を再開した。
「…でも、あんたが言うとおり、おいしそうって言うのは分かるわよ。」
「あんた、人に言っておいて何、危ない発言、繰り返してんのよ。冷静になって聞けば、かなり危ないわ。」
セリナの発言に、リカンナが多少焦る。
「だって、若様の首筋……。」
ぽかん、とリカンナにセリナは箒の柄で叩かれた。リカンナが真っ赤になっている。
「あんたの言おうとしたこと、分かるから…!だけど、ダメでしょ、口にも出しちゃまずいでしょ…!あんたの方がより、危ないわよ。絶対、ダメだからね、分かったわね…!」
「…ありがと、リカンナ。わたし、この話聞かれてたら、今日、死んでたわ。」
あぁ、危ない、とリカンナは言いながら、せっせと落ち葉を集める。
頭をさすったセリナもすっかり目が覚めて、落ち葉を集める。
フォーリに頼まれて、こっそり会話を聞いていたヴァドサは、うーん、と考えいいことにした。お互いにきわどい発言をしたら、注意し合っているし。年頃の少女達が、そういうお喋りに夢中になることも知っている。姉や従姉妹がいたから知っていた。リカンナがいる限り大丈夫だろう。
フォーリには、お前を怒らせたらまずいことを二人とも理解している、と報告しておこう。
ヴァドサは屋敷に戻った。