-part19-もっと
「ちょっと、私もトイレ行きたい。紘一借りるね」
「あぁ。そこの角だから」
「分かった。ありがとう」
奈菜がトイレで席を立った後に、美穂に向かって言う。
「おい、美穂。さっきのはなんだ?」
「兄貴。ごめん言い過ぎた」
俺から、怒られるのが分かっていたからか、美穂はすぐに謝ってきた。
「知ってるだろ。奈菜が上がり症だって」
俺が奈菜と仲良くなってから、別にみんなと距離を取りたくて取っていた訳ではない。自身が極度のあがり症であるから打ち明けてくれた。それからは、俺が間に入り友達みんなとの仲を取り持つようにして、徐々にみんなと馴染める様になっていったのだ。
「でも、明らかに、奈菜は兄貴に依存・・・」
「なんの話?紘一。早くゲームの続きやろ」
奈菜がトイレから戻って来た。
「・・・兄貴、何か飲み物貰ってもいい?」
「飲み物?冷蔵庫から好きな奴取っていいぞ」
「やったー。って、お茶しかないじゃん」
嬉々として、冷蔵庫の扉を開けた美穂だったがジュースは品切れ状態。
「二人だけ、ジュースずるい」
「お茶で我慢しろよ」
駄々をこねて、ジュースを買いに行かせようという作戦だろが、俺には通用しないぞ。
「これ、さっきの撮った写真なんだけど」
「どのジュースが要るんだい。可愛い妹よ」
* * * *
「私もジュース買いに行くよ」
「いいよ。コンビニまで行かないと行けないだし。なんで、2リットルサイズで頼むんだよ」
紘一は、私と美穂ちゃんを置いて、ジュースを買いに行ってしまった。
「兄貴にべったりですねぇ~」
「それは、美穂ちゃんもでしょ。どうせ、私の邪魔をしに来たんでしょ」
「・・・相変わらず、兄貴の事になると上がり症を疑う素振りになるね・・・」
・・・いつもなら、人にどう思われるているかで、胸がいっぱいになって不安でどうしようもなくる。だから、昔は人と関わらないようにしてきた。
けど、紘一の前では、どう思われてるなんて心配より別の感情でいっぱいになる。
もっと。話がしたい。
もっと。私を見て欲しい。
もっと。もっと。もっと・・・。
「———ちょっと。聞いてる?」
「ごめん、美穂ちゃん。聞いてなかった」
紘一の事で頭がいっぱいになってしまっていた。
「だから、ちゃんを付けを辞めてよ。私は奈菜の事を《《ライバル》》だと思って、下の名前で呼んでるんだから」
「・・・・さっき撮った写真くれるなら、呼び捨てにする」




