-part1-朝食
朝。目を覚ますと、台所から味噌汁のいい匂いがした。
現在、俺は一人暮らし。
そんな、俺に毎朝、朝食を作りに来てくれている人がいる。
「起きたか?丁度、朝食の準備が出来た」
「おはよう。いつもありがとう」
「・・・お礼を言うなら、もっと誠意を込めろ、誠意を。もう作りに来ないぞ」
「とても、おいしい朝食をありがとうございます。お父様」
「やめろ。気持ち悪い」
「誠意を持てって言ったのは、そっちだろ」
今、言い合いをしている相手は、坂上 秀樹。俺の父親である。
父は、料理人をやっており、店に出勤する前に毎朝、俺の部屋に来ては朝食を作ってくれている。
「あーあ。もっと可愛い子が毎朝来てくれたら、いい目覚めになるんだけどな」
「お前。父さんに女装しろって言ってるのか」
「ぶッー。なんでそうなるんだよ!」
危なかった。飲んでいた味噌汁を吹き出しそうに・・・ちょっと、吹き出してしまった。
「汚いぞ」
「誰のせいだよ」
近くにあったティッシュ箱からティッシュを数枚取り、吹き出した味噌汁を拭く。
「じゃあ、父さんは行くからな」
「分かった。・・・いつも言ってるけど、別に無理してまで、朝食を作りに来なくてもいいだけど」
料理人の朝は忙しいって聞いた事がある。
それにだ。一人暮らしを始めたのは、俺のわがままでもある。
「ふぅ。そうだな。紘一。俺が来なかったら、朝食を抜くだろ」
「出来る限りは用意するよ」
「・・・たまに夕食を抜いているお前がか?」
「な、何を根拠に・・・」
「俺は料理人だ。朝の台所の状態で昨日使われてないのが、分かる」
「外で食べ来たかもしれないだろ」
「ふーん。外で食べて来たのか?」
「うん」
「嘘だな」
「何故に!?」
「これでも、父親だからな。お前は自分の事になるとおろそかになる時があるからな。大方、何か面倒ごとを頼まれて、そっちを優先したんだろ」
「・・・・・・・」
「まぁ、お前に彼女が出来たら朝は来ないようにするさ。おっと。そろそろ、店に行かないと行けない時間だ。じゃあな」
「あっ。・・・一応、母さんにもよろしくって言っておいてもらえないか?」
「・・・あぁ。分かった」
父が出て行った後、食器を洗って片付け、戸締りをし、俺も部屋を出た。