-prologue-定例会議
彼女が欲しい。
彼氏が欲しい。
特に思春期の男子女子一同心の底からそう思っているだろう。
彼氏彼女が欲しくてたまらない。けど、告白する勇気はないし、他人の幸福を指をくわえ、ただ見つめ続ける。
そんなのは嫌だと思う人たちで、この委員会は作られたのだと、俺は思っている。
今月も定例会議の時間になった。
学園隅にある、もう使われなくなった教室でコの形に並べられた机にそれぞれが座る。席順は決められてはいないが、会長と副会長がみんなを見渡せるコの中央に座る。
「まず、カップリング率を報告します」
お面を被った一人が立ち上がり、まとめたであろう資料をスラスラと読み上げる。
委員全員が、何かしらの方法で素顔を隠している。
「今月は先月に比べ、カップリング率は・・・・」
* * * *
小一時間程で、定例会議が終了し、会長である俺と、副会長がこの場に残って後片付けをしていた。
「まさか、10組以上も今月カップルが誕生していたなんて」
「仕方ないですよ。最近、5人以上委員会を抜けたんですから」
「そうなんだよな。しかも、ほとんど主力メンバーだったし」
委員会のスタスとしては、去る者に対して特段何かすると事はない。
入りたい時に入って、抜けるのは自由だ。
ただ、数点の掟を守ってさえいれば。
「はぁ。彼女欲しいな」
「会長!他の者に示しがなくなりますよ」
副会長に怒られてしまった。
それもそうだ。この委員会は学園でカップルが誕生しないようにする、すれ違い実行委員会なのだから。