実況ポイント
だが、どうにも上手に歩けない。
川の位置は覚えているし、体調も悪くないのだが、風船が膨らむように、そして浮遊するように不安が残っている。
「……でも、頑張ったよな」
動画の事を気にするのはやめよう。
誰も観てくれなくたって、俺は動画を作り続けることで、この世界で生きていると証明するのだ。
不安は消え、決意と晴れやかな心だけが残っていた。
夕日が沈むころに帰宅し、焚き火前に腰を下ろす。
今日もなんとか兎を見つけ、昨日のように狙撃することで晩飯にありつけた。もちろん串焼きだ。
鶏肉のような味にも慣れてきたし、小骨が多いがそれも気にならなくなってきている。
「ごちそうさまでした」
今日も無事に生き延びられたことに感謝しなければ。
夕食のあと、どうしても動画の続報が気になり、タブレットの電源を入れると、一件の通知が来ていた。
『実況ポイント機能が解禁されました』
実況ポイントという、初めて目にする言葉。
通知を開いてみると、「実況ポイント交換」という画面が出てくる。
「なになに……水が500ポイント、肉が1500ポイント……」
恐らくこれは、実況動画が誰かに見られるか評価されるかすると貯まるポイントだろう。
他の項目も見ていくと、椅子や机なんかもある。
「ははぁ。強そうな剣とか魔法の道具みたいなのもあるな。これは……まぁいいか」
どのアイテムがどのくらいのポイントで交換できるかは記されているが、大部分はロックされている。
今、俺が交換できるのは水・肉・槍・弓と矢だ。
間違いでなければ、どれもこの世界で作ったり手に入れたものだ。
つまり、俺が一度手に入れたものは、再度制作する手間が省けるのだ。
……城・1億ポイントとか書いてあったのは無視してもいいな。
途方もなさすぎるし、神の遊び心だろう。
良い動画を作れば、生活に必要な道具や家具が手に入るということだ。
すでに肉と水が解禁されているし、最悪人気が出れば、外に出なくても生きていけるのだろう。
このポイント制度によって、俺の動画を観ている何者かが存在するというのも分かった。
肉ってなんの肉なんだろうな。
「で、俺の所持ポイントはどこに……」
今日初めて動画を投稿したのだ。
動画を投稿する事がポイントの解禁条件だろうし、再生数など微々たるもの。
もちろん0ポイントだろう。
しかし、もしかしたら二ポイントくらいだったら入っているかもしれない。
日課として、ひたすら新着動画をチェックしている人がいると聞いた事がある。
ならばと、淡い期待を胸に、画面上に目を滑らせる。
すると――。
「…………所持実況ポイント、40万……?」
編集のしすぎで目がおかしくなったのかもしれない。




