253話
異様と言えば異様な光景に躊躇ったものの、気を取り直した翡翠は凛達の下へ。
「あ、翡翠お帰り。向こうも無事終わったんだね。」
「うん!ついでに少し奥の方にいた魔物達も片付けといたよー。それとねっ、にひひー♪丞くんお願ーい!」
「翡翠様、連れて来たぞ。」
「ありがとー!」
翡翠の紹介で丞と一緒に来た人物。
それは茶色、緑色、黄色、紫色の髪色をした、複数の男女だった。
「まぁ♪」
「それでねっ、そこにいたこの子達が新しく仲間になったんだー!」
翠のテンションが上がり、リアクション込みで翡翠がじゃじゃーーーんと説明。
十数もの新たな加入に凛達も気持ち前のめりになる傍ら。
代表らはこんな人達いたか?とばかりに不審そうな表情で新参者達の事を見、互いにアイコンタクトを送る。
翡翠に紹介された男女は勿論、人化スキル入力済みの魔物達で、計15名。
内訳はランドドラゴン、ラージディオネアマスキプラ、ドラゴンツリー、イービルバターカップ、イービルミモザ、イービルウルフズベイン。
各1~4人ずつとの構成だ。
いずれも、2つ目のエリアで見掛け、圧力に屈し…説得の末に投降した者達。
折角だから新しく仲間を増やせるだけ増やそうとの流れから棗達に本来の姿へ戻って貰い、暴れ回った結果とも。
尚、あまり争いを好まない金花と銀花は翡翠の近くに控え、不参加。
それでも戦意を喪失したのに変わりはなく、元ランドドラゴン達は見るからにしょんぼりしている。
ついでに、今回で初となるロックスライムも仲間に。
オーバ山を出る前に送還を済ませ、今はライムと戯れ中だ。
「あの、凛様。こちらの方々は…?」
「詳しくは申し上げられませんが、これから行動を共にするに至った人達ってところですね。」
「はぁ…。」
「丞、皆を教育係の元へ連れて行って貰える?」
「分かりました。」
凛に頼まれ、ランドドラゴン達を先導する形でこの場を後にする丞。
困り顔でその光景を眺める代表達を他所に、奥へ繋がる箇所が崩れ、魔物が押し寄せた事。
簡単にではあるが魔物達を片付け、植物魔法で穴を塞いだと翡翠が説明。
「私達は限界状態にありました。もしもあのまま助けが来なかった場合、全滅も普通に有り得たかと…。」
「こちらの方々の戦い振りは、言葉では言い尽くせない程に凄いものでした…しかし、採掘場の奥にあんな魔物達がいたとは…。」
「それなりに長く勤めてますが…初めて見る魔物が多かった様に感じます。」
「ええ。土属性のドラゴンや岩で出来たスライム、酸を飛ばすスライムや木と同化した少女の魔物は他の場所でも出ると聞き及んでますが…それ以外はさっぱり。」
これらは、ブラッドロード公爵家の親衛隊4名の発言。
流石に隊長、副隊長クラスではないものの、魔銀級相当の実力者。
精鋭に変わりはない。
オーバ山は今まで、外や採掘現場周辺でゴブリンやホブゴブリン、レッサーオーガやオーガ、サイクロプスが1日に数回出現する程度。
しかし本日、採掘現場の向こうから見た事がない魔物達が。
それも多数押し寄せ、最早採掘云々どころの騒ぎではなくなった。
もし明日以降もとなると作業そのものが行えるのかすら怪しく、不安さが表情に出てしまっているとの状況。
「安心して下さい…とまでは行かないかも知れませんが、ひとまず僕達がオーバ山へ向かい、中の様子を見て来ますので。」
「そうでした!喜べ皆、こちらにおられる凛様方は、帝国最強である皇帝陛下が足元にも及ばない程に強いそうだ!それはアレックス第3皇子殿下もお認めになられている!」
「凛達なら、例え災厄級の魔物が相手だろうが問題なく片付けてくれる。だから皆は吉報を待ち、各々が為すべき事を為せ。」
代表が叫び、アレックスの肯定で『おおおお!!』と沸き立つ兵士達。
「えっと…行ってきます。」
先程までと一転。
期待に満ちた眼差し、雰囲気に居た堪れなくなった凛が、半ば逃げる様に移動。
『お気を付けて!』
非常に元気の良い送り出しで更に困り顔の凛に翡翠達が笑い、彼を宥めながら歩みを進めた。
オーバ山内部に入った凛達は、手始めとして採掘現場にある塞いだ穴を解除。
30体位ではあるが再び魔物達が押し寄せ、問題なく薙ぎ払う。
その後も魔物の撃退を繰り返し、道なりに進む事500メートル程。
先刻翡翠達が訪れた、採掘現場以上に広い空間へと1行は出る。
「ここなら広いし、まぁまぁ自由に戦えると思うんだー。棗ちゃん樹くん柊くんはかなり余裕だったし、梓ちゃんも本来の姿でギリギリイケるんじゃないかな?」
「ふみゅ?んー、訓練以外で(通常形態に)戻るなんて考えた事なかったのです。でも、広さは十分なのです。」
翡翠に水を向けられた梓が目を瞬かせ、可愛らしくキョロキョロ。
やがて大きめな仕草で頷いた。
「私は(元の姿に戻ったのが)凛と初めて会った時以来だったから緊張したわ。」
「私達は戦い自体が好きと言う訳ではありませんからね。」
「元の姿に戻るのも、緊急時でなければ必要ないかと。」
「成程ね。じゃあ、これから広い部屋に出ても元に戻らずこのまま戦う?」
棗、樹、柊の順で口を開き、凛が首肯を交えての質問。
「私はさっきので満足したし、この姿で慣れたもの。だから良いわ。」
「お嬢様もこの様に申しておりますし。」
「私達も大丈夫です。」
「梓は?次に似た広さの部屋に出たら戻ってみる?」
「お願いするのです!」
棗はいつの間に用意したのか優雅に扇子を口元に当て、樹と柊は穏やかな笑みで、梓は鼻息荒くやる気を見せての返事。
因みに、棗は素気なく話してはみたものの、実は単なる誤魔化し。
本来の姿こと巨大な花だった時の名残と言うか凛の反応を未だ覚えており、恥ずかしさから辞退したとの流れ。
樹と柊にはバレており、2人から温かい視線を向けられるが全然気付いていなかったり。
「この部屋、ずっと前に使われた様な形跡があるね。」
「うん、あたしもさっきそう思ったんだよねー。」
「本格的なのは後日するとして、軽く調べてみよっか。」
「手伝うわね。」
凛と翡翠が辺りを見回したのを機に、翠込みで簡単ながら行われた調査の結果。
ここより先にある空間、それと現在地の両隣にある通路は500年以上前に封鎖。
それも、土魔法で無理矢理埋められて…だ。
その影響により人が入らなくなって久しく、今いる場所や次の空間には結構な量の金属類が。
金、銀、銅、鉄…以外にミスリルやアダマンタイトも埋蔵され、更にもう1種。
「…で、これがここでしか取れない鉱石、土靱鉱な訳だ。今回は見える位置にあったから取れたけど、得やすさとの意味では火鉱石や氷水晶より難易度が上かも。」
茶色い鉱石が混じった、バスケットボール大の岩を左手に掲げた凛が告げる。
この岩の発見場所は室内に入ってすぐの高い位置。
コブみたく壁に生えていたのを発見→採取したとの運びだ。
解析によると、突き出したりする茶色い部分が土靱鉱。
強力な土属性を帯びた鉱物らしく火鉱石等と同じで属性を扱いやすくするとの効果があり、硬いのに名前通り靭やかとの不思議な性質を有している。
「あー、確かに…掘らずに土靭鉱を採取出来るのって、お兄ちゃんと美羽ちゃん、楓ちゃん位だもんね。あ、翠ちゃんと梓ちゃんも出来るか。」
「うふふ♪」
「なのです!」
「うん、翠は土を司る大精霊だし、梓はそのドラゴンバージョンみたいなものだからね。」
楓なら土神化を使って。
翠と凛と美羽と梓は環境操作スキルで手繰り寄せる形で集める事が出来る。
因みに、環境操作スキル所有者は翠で、他3名は適性があって使えるが正しい。
それと、僕達はアクティベーションだったりエンシェントドワーフのスキル鉱物生成で量産が可能。
今後は土靭鉱も加わるのも重なり、わざわざ掘ってまで苦労する必要はないとも。
「そだねー。」
「よーし、ガンガン行こうぜー!」
「「ルル(ちゃん)、それは良くない。」」
凛の説明に翡翠が同意。
拳を前方に突き出してやる気を漲らせるルルに2人が待ったを掛け、「え?あたい何かやっちまった?」的な目線を向けられたのはご愛嬌。
入手した土靭鉱を無限収納へ直し、再度出発する凛達。
通路沿いに300メートル程進むと、細かく枝分かれした通路が出現。
枝分かれした通路1つ1つにそこそこの数の魔物がおり、手分けして討伐。
10分程で合流を果たした凛達は、次に縦横1キロ以上の広い部屋に出る。
部屋の中には凡そ600体の魔物がおり、凛達に気付いたのか一斉にそちらを向く。
「数が多いな…仕方ない、ちょっと疲れるけど、壁に届かないよう(威力を)落とすか。」
凛は少し困った様子で玄冬を鞘から抜き、無数の飛ぶ斬撃を魔物達に向けて放つ。
加減に加減を重ねたからか多少手間取ったものの、開始1分で残り4割位にまで減り、翡翠達も参戦。
瞬く間に戦闘を終えるのだった。




