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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
世界周遊~ダライド帝国編~
259/261

238話

「んで、だ。」との前置きを挟み、火燐が言葉を重ねる。


「それが本来の姿って訳じゃねぇんだろ?手足を流れる魔素にムラがあるぜ。」


片目を閉じながらでの指摘に「それも分かるんだね」と答え、


「…っと。これが本来のオイラの姿さ。更に━━━」


全長2メートル程にまで縮小。


「一応こんな感じで、君達みたいな見た目にも出来るよ。」


そして、見た目15歳前後。

身長160センチ位で、赤い色の髪をソフトモヒカンにし、火燐を真似たのか赤っぽいシャツと黒っぽいズボンを着用した容貌に。

ただ、あくまでもそんな風に見えるだけ。

体の所々から火の粉らしきものが上がる辺り、やはり精霊なのだと改めて思わされた。


「さっきまでのは、少しでも多くの魔素を取り込む為に取った姿ってとこかなぁ。と言っても…最近は魔素を取り込んでもこれ以上は吸収出来ないのか、(折角取り込んでも)すぐに抜けちゃう状態なんだけどねぇ。」


空中をふわふわ漂い、少年の様な風貌となった高位精霊がやや残念そうに説明する。




「…最近はってこたぁ(事は)つまり、お前も大戦の生き残りになるのか。」


「も?君がさっき言ってたアイツって人…人?もそうなんだねぇ。」


「ああ。アイツ…セルシウスは元高位精霊だが、氷の大精霊に進化したぞ。」


「大精霊!…良いなぁ、羨ましいなぁ。オイラも(大精霊に)なれるのかな?ここだと限界があるのか分かんないけど、これ以上強くなれないみたいなんだよねぇ…。」


「まぁ、お前次第だろうな。」


「そんなぁ…。」


大精霊と聞き、始めは上がったテンションも段々と下がり、最後はションボリと肩を落とす高位精霊。


いつかは自分も大精霊を…と夢見、憧れ、努力した日々もある彼(?)。

しかし現実は非常なもの。

初めこそ感じた確かな成長も段々と緩やかになり、やがて完全にストップ。

日課を熟すだけの毎日と成り果て、生き甲斐をなくしたとも。


この精霊、今でこそ高位精霊だが大戦時。

怖くて隠れていたが為に無事だった下級…よりも更に未熟な個体を指す微精霊だったりする。

それも、戦いが終わるや否やひょこっと姿を現し、イフリートにバレてこっぴどく怒られるとのオマケ付きで。


挙げ句、罰として押し付けられたのは、出来たばかりのソルヴェーの管理。

当の本人(イフリート)は昔の事だと忘れ、又豪快な性格故に1度も訪れないまま今日に至る。


当の本人…高位精霊は、見た目の通り面倒臭がりな上にかなりののんびり屋。

普段は大きな体の状態を維持し、垂れる様な体勢でマッタリ。

時折間引きとの名目でのそのそと歩き、大口を開けて魔物達を一気に丸飲みにしては元の場所に戻り、再びだらけるをひたすら繰り返している。


「付いて来るのは構わねえが…2つ、条件がある。」


「…ごくり。そ、その条件ってなんだい?」


真面目な表情で話す火燐に釣られ、緊張した様子で答える高位精霊。

他の面々は異なり、彼の口から出た「ごくり」との言葉に不思議がる。


「んだよ、お前も自分でごくりって言うのかよ。」


続く、火燐の呆れ口調に「も?」と更に困惑。


「あ、そう言えばナルちゃんがごくりって口にしたってアレクが。」


思い出した素振りを見せるのはステラ。

火燐の情報源はそこかと理解。

次の瞬間には、「ナル(ちゃん)(様)、ごくりって口で言うんだ(のですね)…」と思う者がいたりいなかったり。




「1つ目はここ、ソルヴェー火山の管理を引き続き行う事だな。オレやお前は平気だが、そうじゃない輩の方が圧倒的に多い…『コレ』みたいなのを探しに、無茶をする馬鹿が今後増えるも安易に予想出来るしな。」


説明しながら、火燐は無限収納から先程採取した直径50センチ程の赤い石。

極めて純度の高い火鉱石を取り出す。

火鉱石は未だ高熱を放ち、見るからに熱そうなのだが一切気にする素振りがないのが逆に気になる。


ついでとばかりにもう1つ。

溶岩が冷えて固まり、随所から火鉱石がはみ出したものも反対の手で用意してみる。


「コイツは前回調査で来た時に入口近く(と言っても地面ではなく山肌の方)で見付けたモンだ。ポール達商人から、再三売ってくれとせがまれてもいる。」


「うわ。流石にさっき程じゃないにしても、凄く高値が付きそうな石だね。」


「ああ。(ポール)曰く、白金貨どころか白金板の値打ちがあるんだと。(ポールに)ソルヴェーの調査結果をって言われたから披露したんだが…商業ギルド本部(クリアフォレスト)で見せたのは失敗だったかもな。周りが(この石を見ながら)ざわついていやがった。このクラスの石がここで採れたとの情報が広まりでもしたら、バカ共が一攫千金を目指してってなりそうでよ。」


「確かに…。」


石を見ながらでの火燐の説明に、少し驚いた後にステラが納得。

納得と言っても、複雑なとの注釈が付いたものになったが。


「…要するに、オイラはこれからもここにいなきゃいけないって事なのかな?」


「建前上はな。最低限、それこそ必要な時以外は…って感じになる。」


「ふーん。2つ目は?」


意外に簡単そうかな?

安堵し、やや嬉しげな態度を見せた高位精霊が、2点目の条件について尋ねてみる。


「折角会いに来てやったんだ、オレと戦え。それが2つ目の条件だ。」


ニヤリと笑う火燐に、ほとんどの者がうわぁ…とドン引き。


例外は苦笑いの凛、それと呆ける高位精霊とファイアバード位。

あれよあれよと(様子を窺っていた魔物を片付けるとの意味で)場が整えられ、巻き込まれた当事者が一切関与せずして展開が進んでいく。




「そんじゃ、準備は良いか?」


火燐が告げる。


準備と言っても、本人は結界の足場から飛び降りただけ。

今は溶岩の上に2本足で立ち、「全然良くないんだけど…」と不満の声を漏らす高位精霊を真っ直ぐ見据えているとの状況だ。


高位精霊は自堕落な、との観点で戦いが嫌い。

(ひるがえ)って火燐。

如何にも好戦的な笑みを浮かべる彼女を納得させるまで戦うとなると、一体いつ終わるのか分からない。

面倒臭い、だるい、ついでに寝たいとの想いで瞬時にいっぱいになった高位精霊が軽く両手を挙げ、降参の意を示す。


しかし火燐はそれを無視。

は?とばかりに固まり、かと思えば直ぐ様目を細め、高速移動。

高位精霊の顔面を掴む━━━所謂アイアンクローを噛まし、掌部分から悲鳴が上がるもやはり無視。


結構な勢いで振りかぶり、岩の足場へ向け、力強くスイング。

綺麗な放物線を描いた後に高位精霊は顔面からズザザザーと滑り、無事(?)着地を決めた。


「…よし、そんじゃ始めますかね。」


「ねえ!ちょっと!なかった事にして話進めるの止めて貰えるかなぁ!?戦う意志はありませんって、オイラ態度で示したよねぇ!?ねぇ!?」


さも仕切り直しとばかりに振る舞う火燐へぶつけられる、高位精霊からの盛大な突っ込み。

「あーうるせぇうるせぇ」と宣う当人を尻目に、「確かに」との想いで満場一致になるのは当然の帰結とも。


「早く外に出たいんだろ?強くなりたいんだろ?今でどれ位なのかオレが見て(テストして)やんよ。」


「そんなぁ…。」


「ほらほら。お前が来ないんなら、オレの方から行くぜ?」


「えっ、ちょっ、オイラ…まだ(心の)準備が…ぐえぇっ。」


「問答無用。」


火燐は文句を垂れる高位精霊を一蹴。

未だ渋る彼との距離を瞬時に詰め、腹部へ見舞った足をゆっくりと下ろした。




それからしばらく。

ぎこちない動きながら行われる高位精霊の攻撃を、時に笑い、時につまらなそうに、時に意外そうに、時に真顔で受け止め、往なし、躱された後に火燐が反撃するを繰り返す。


凛に手解きを受けた彼女は、藍火の稽古は勿論。

暴走状態の美羽を、どうにか相手取れるだけの実力を保持。

かつて(暴走の)被害を受けた藍火から羨望の眼差しを受け、当時ドヤ顔を浮かべた彼女にとって、高位精霊の半ばヤケクソ気味な攻撃等児戯に等しい。


「…凛様。精霊って、火燐ちゃんがやってるみたく簡単に殴ったり蹴ったり出来るものなの?あの高位精霊もセルシウスちゃんみたいな感じ?」


「セルシウスは氷の大精霊で、元々物質に近かったってのもあるかな。そう言った意味では、(ユグドラシル)も同じ。冷たいのを我慢するとか、凍傷にならない為の対策をしっかりすれば出来るよ。

けどあの精霊さんは、大体が炎で構成されている。剣で斬ったとしてもほとんど素通りしちゃうのは勿論として。相手は高温の体だからね。戦いながら火傷ないし大火傷を負うかもだし、攻撃の度に武器の方がダメージを受け、最悪使い物にならなくなる可能性も十分にある。あれは火燐や僕達だから出来る戦法ってだけだから、真似しちゃダメだよ?」


「いやー、流石に炎や溶岩そのものみたいな存在を相手にしようとは思わないかなー。(アンジェリーナ)姫様もそう思いますよね?」


「(ギクッ)…そ、そうですねっ。」


「…姫様?まさか自分もあの精霊と戦いたいなんて…。」


「お、思ってません。微塵も考えてませんからね?…本当ですよ?」


(嘘。)

(嘘だ。)

(嘘だねー。)

(嘘ですね…。)


あろう事かこのお姫様。

出番がないからと、自分も高位精霊と戦いたいと思ってしまった模様。


いくら彼女がこの世界の強者に入る部類だとしても、高位精霊の方が上。

火燐によって(一方的に)痛め付けられ、涙目になっていようが上には違いない。

加えて、相手は炎に特化した高位精霊。

要は魔力の塊で、彼に打ち勝てるだけの火力を持ち合わせている訳でもない。


以降、妙にやる気になった彼女を凛達が宥める。

気持ちがバレ、隠す必要がなくなったが故の行動とも。


それに並行して続けられる、火燐と高位精霊による戦闘。

何度か火の鳥が介入しようとするも止められ、火燐の低いながらも良く通る声。

及び高位精霊の悲鳴が、ひたすら木霊する。


リズ(リーゼロッテ)(の脳筋ぶり)が移った…?気を付けねばなりませんね。」


そんな彼女らを眺めつつ、疑問符を浮かべたアンジェリーナが一変。

ふむ…と顎に手をやり、自らを律するのだった。

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