192話
「焚き付けておいてなんだが…『コレ』はないな。」
アーウィンが憮然とした顔で呟く。
彼の眼前には、足首から先と顔以外をぐるぐる巻きに縛られ、「ほどけー!」「今すぐ解放せぬか!」等と叫ぶルスコー達の姿が。
最早威厳もへったくれもなく、ただただ哀れとの感情しか湧かなかった。
ルスコー達から見て、最も手前にあるビットから射出される魔力弾。
執行人の1人の腹部に当たるを合図に糸の様なものが伸び、そのままぐるぐる巻きに。
気付けば呆気なく無力化され、その事にルスコーが苛立ちを露にする。
「面妖な…!お前達、アレを斬り落としてしまえ!」
指示を受けた部下達が最寄りのビットへ斬り掛かるも、ひょいっと避けられるだけ。
それは2度3度。
4度、5度と繰り返そうが、複数人で挑もうが結果は同じだった。
「無駄ですよ。当たりませんし、そもそも当たったところでどうにかなるものではありません。」
そんな彼ら彼女らの努力を、バッサリと切り捨てる凛。
それが余程気に食わなかったのだろう。
矛先がそちらの方へ向き、一斉に走り出す。
「まぁ、そうなりますよね。」
凛は「正当防衛です」と告げ、8基のビット全ての操作を開始。
拘束弾と命名した魔力の弾を次々に撃ち込んでいく。
瞬く間にミノムシ状態の者達が出来上がり、結局凛1人のみ。
しかもわずか数十秒で鎮圧させられたのは言うまでもない。
「これが異端者の力…と言う訳か。」
沈鬱顔のルスコーが呟く。
割と最初らへんで捕縛、及び部下達の動揺を誘う餌代わりにされた彼。
その部下達はレイラが呼んだ近衛騎士達により次々と室外へ連れ出され、自身は未だ変わらず身動きが取れない状態。
即ち近くで転がるエリックと同様、抵抗どころか俎上の魚に近いすらある。
「異端者?未だ貴殿らが思い違いをしているとはな…良いか?凛様はな━━━」
そんな彼をアーウィンが見下ろし、説明を開始。
ルスコーとエリックは話を聞くに連れて段々と瞳を大きくし、やがて真っ青になる。
「そ、そんな…管理者様…しかも女神様の…弟…。」
「林檎…。」
ルスコーが自らの行いを悔い改めるのに対し、エリックはこの様な状況下でもアンブロシアの事で頭がいっぱいの様だ。
非常に残念がる彼を、凛達は何とも言えない顔で眺めるのが印象的だった。
腕組みし、ふーむと言いながら目を閉じるレオン。
「成程な。関係ないかもだが1つ…いや2つ良いか?」
静かに開目から凛へ視線を送り、「どうぞ」と返される。
「あんがとよ。まず1つ目…狐宵裏隊のアメリ、だったか。そいつを見る双葉の目が厳しくねぇ?」
そう言って、ディシーバーズ副長こと双葉を見やる。
彼女は険しい顔でアメリ…厳密にはアメリの胸元を注視。
今にも飛び掛かるのでは?と心配になる程に荒ぶってもいた。
「コレが羨ましいんじゃないッスかね?正直邪魔なんで、普段は押さえ付けてるだけなんッスけど。」
アメリは隠れ巨乳だった。
実際はサラシを念入りに巻き、身内以外には知らされていなかっただけと言うのもあるのだが、パッと見藍火位はありそうだ。
彼女は両腕をクロスさせる形でたわわなものを下から持ち上げ、ふふんと得意げな顔に。
「…へぇ?じゃあ代わりにもいでやんよ。遠慮しなくても良いぜ、邪魔なんだろ?」
座りながらにして身を乗り出し、益々やる気の表情を窺わせる双葉にアメリが引き、「いや、怖えぇよ」と零す。
「じ、冗談だよ冗談。真に受けんなって…。」
「私はなぁ、その手の冗談が1番嫌いなんだよ。」
ツインテールの双葉は同じツインテ仲間の美羽と仲が良い。
ただし共通なのは髪型だけでなく、控えめな胸部も然り。
「いや知らんけど!?」とたじろぐアメリを他所に、にじり寄って行く。
「てな訳で助けて下さいよ獣王サマー。お礼ならしますんで、体で。」
「止めろ、俺がタリアに殺されんだろうが。」
「あら?それだとバレなければ良いみたいに聞こえるのだけれど?」
「勘弁してくれ…アメリも、悪ノリが過ぎるぞ。」
「ざ〜んねん。」
「アナタ、後でお話があります。」
「いやおかしくねぇ…?」
アメリが肩を竦め、妻タリアから説教が待ち受けている事にレオンが内心溜め息をつく。
因みに、アメリは余裕ぶってはいるものの、単なる耳年増に過ぎない。
本人は恋愛経験皆無の超初心者で、もしレオンが乗っかろうものなら途端に慌てふためいた事だろう。
「2つ目は勉についてだ。何となく察しは付くが、昨日見た時と軽く別人になっちまってるじゃねぇか。何となく察しは付くが。」
続けて、残るもう1つの議題こと、対象者である勉に注目が集まる。
彼は少しばかり。
いやパッと見、10〜20キロは落ちたであろう位に痩せていた。
と言うのも━━━
「んふふ…♪」
彼の隣にいる静の手により、大事に大事に守ってきた(?)貞操を奪われた挙げ句、何回も搾り取られてしまったからだ。
静は勉を気に入ったとの話は本当だったらしい。
昨晩、彼があてがわれた部屋に入室するや否や姿を見せ、勉の腕を引っ張る形でベッドへ同道。
「あの…静殿?こう言うのはもっと良く知ってから━━━」「ダ・メ・ど・す♪」「やめっ…ホントに…お願い…あっ、アッーーーーー」的な感じで襲い掛かり、マウントを取り続けた。
へばって動かなくなった彼に強壮効果の付いたドリンクを無理矢理飲ませ、強制的に続行。
やられっぱなしは癪に障るとの反骨精神から燃え上がる勉に、「きゃー♪」なんて言いながらしっかり受け入れ、時には攻守を入れ替わる等していた。
そのおかげで勉は(かつてのダニエル程ではないが)心身共にやつれ、静が吹聴した影響で娼館メンバーのアイリ、プレシアからは興味津々の視線を。
ギャルの理彩とユカサッリナオネからはジト目を向けられる。
「今晩が待ち遠しいおすなぁ♪」
ルンルンとはしゃぐ静から察するに、恐らく今夜は乱戦。
それも最低で3人。
下手すると5人を相手取らなければならず、場合によってはキャシーが参加する可能性も大いにある。(当のキャシーは凛達と談笑し、以前話に出た棗は優雅に紅茶を嗜んでいる)
これには静を取られたと嫉妬を燃やした男達も同情を禁じ得ず、肉食系女子と化した彼女らに喰われる男子。
もとい勉へ対し、心の中でそっと手を合わせた。
「…お仕置き追加。」
「ナンデェ!?おかしくねぇ!?どこにお仕置きの要素あったよ!?」
ボソッと出たタリアの爆弾発言に、レオンが目を剥く。
「プライドの問題です。」
「納得いかねぇ…。」
アメリに静、そのどちらもタリアよりバストサイズが上。
つまり女性として何となく負けたとタリアは考えたらしい。
ツンとそっぽを向き、夫が項垂れようが澄まし顔を決め込む。
「ぐ…ぐぐ…!」
視点は再びアメリ達へ。
手4つで力比べを行い、アメリ側が圧倒的不利な状況へと陥っていた。
「くっそ、やべぇ。本気でやべぇ。タマモ様みたく、行き遅れたまま死にたくないってのに…!」
「…双葉よ、遠慮は要らぬ。思いっ切り叩きのめすが良い。」
「ちょ、タマモ様ぁ!?」
そんな中、アメリが変な事を言うものだから、呆れた顔をタマモより向けられる。
一方周りからは、ぶっきらぼうな口調や仕草に反し、意外と乙女チックな考えの持ち主なんだなと関心されていたが。
了承を得た双葉はニヤリと笑い、腕に更なる力を込め、アメリを追い込む。
やがて組み伏せると同時に、黒い渦を発生。
「えっ!?うっそだろ、おい!?」と叫ぶアメリ共々、その場から消える。
しばらくして、ボロ雑巾と成り果てたアメリを投げ捨てる形で双葉が登場。
彼女はコロコロと笑いながら凛の元へ歩みを進め、さめざめと泣くアメリに同情的な視線が向けられるも、元々彼女が双葉を挑発さえしなければこの様な事態にならなかった。
すぐに自業自得、ご愁傷様と言いたげな顔付きになり、命令を下したタマモは我関せず的な感じに。
つまり誰もアメリを擁護する者はおらず、彼女の啜り泣く声だけが続いた。
そこへ差し伸べられる勉の手。
弱い立場、強い者に抗えなかった。
また初めての時は良い雰囲気でと密かに夢見たとの点で仲間意識が芽生え、どうやら放っておけなくなったらしい。
当のアメリは面食らい、ツンツンとした様子で差し出されたハンドタオルを受け取りつつ、足早にいなくなる。
その際、顔を真っ赤にし、恥ずかしさを誤魔化している風にも見えたとの事。(タマモ&アメリ以外の四狐魔談)
また、これを機にアメリは勉へ突っ掛かる様になり、ぎゃーぎゃー喚きながらも嬉しそうにする彼女。
チョロイン、又はツンデレ乙wと表なり裏なりで揶揄われ、その度に赤面で否定したとかしなかったとか。
そして知り合ってからそう経たずして、勉ハーレム(?)へ仲間入り。
普段とは打って変わって甘える彼女を、他の面々が温かい目で見守ったのだとか。
とある1幕
雫「(゜∀゜)o彡゜あめりん、あめりん」
美羽「えー◯んみたいに言わないの」
雫「(゜∀゜)o彡゜みうぱい、みうぱい」
美羽「も、もー、しょうがないなー♪あまりやり過ぎちゃダメだからね?」
雫「(;-ω-)ん?ん、ん…」
火燐「…今、鼻歌交じりの美羽とすれ違ったんだが、何か良い事でもあったのか?」
雫「(;'-' )…世の中には、知らない方が幸せな事もある」
火燐「何だそりゃ?ははっ、変なのー」
雫「((((;゜Д゜))))(い、言えない…美羽は巨◯だと勘違いしてるみたいだけど、ホントはちっ◯いとの意味だったなんて怖くてとても…)」
名前的には赤髪ポニテっ子のエミリーの方が近いのですが、彼女はC寄りのD。
巨◯とまではいかないのでアメリちゃんに白羽の矢が。
後、この件がやりたくて急遽アメリちゃんを大きくしたのもありますw




