表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
世界周遊~シリウ神聖国編~
207/262

189話

10分後


1行はとあるエリアにいた。


そこは通常であれば厳重に厳重を重ねた体制が敷かれ、何人たりとて拒まれる場所。

それこそ女神騎士団長(アーウィン)教皇(フィリップ)ですら入るのを許されない━━━4人目の枢機卿が住まうとされる区画だ。


「…しかし、まさかとは思ったが本当に誰もいないのだな。」


最低でも6人は入口に立ち、その圧で以て足早に通り抜けざるを得ない。

そんな通路が現在は誰もおらず、アーウィンが不思議そうにする。


「露払いは済ませましたから。」


「露払い…?ああ、先程の戦闘がどうとかの…確か五百と奈々、だったか。」


「お、良く覚えてたな。流石は騎士団長サマってところか…良かったな、2人共。」


そう言って影斗が後ろを振り向けば、いつの間にか五百と奈々の姿が。


「お、俺らもついに日の目を浴びるまでに…!」


少々小さい背丈でツンツンヘアー、両手を後頭部で組む五百が注目された事に歓びを見出す。


「え、日の目をって…アンタ日光が弱点じゃん。浄化されたいの?キモッ…。」


突っ込みを入れるのはもう1人の人物━━━奈々だ。

セミショートながら片目を髪で隠す彼女は、まるで変態を目の当たりにしたかの如く本気で気持ち悪がる。


それが何故か五百にとっては面白いらしく、彼女が毒を吐こうが関係なく「辛辣ぅ!」とケタケタ笑っていた。


「り、凛殿の配下には個性豊かな者が多いのだな。」


引き攣った顔のアーウィンが視線を五百から凛へ移せば「優秀ではあるんですけどね」と苦笑いで返され、近くにいる双葉と影斗が肩を竦める。




「着きました。」


更に1分が経過し、凛達は一際大きな扉の前に立つ。

その扉は重厚、かつ他者を寄せ付けない。


そんな雰囲気を纏っており、アーウィンやレイラ、召喚組が圧倒される。


「さて、では開けましょうか。」


「凛様。」


「その役目、我らに。」


凛が踏み出そうとしたタイミングで(六花以外では)最後のメンバー、闢と鼎が姿を見せる。

静かに佇みながらでの登場にアーウィンとレイラが目を丸くするも、やはりお構いなしだ。


「そう?じゃ、お願い。」


その言葉と共に扉が手前に引かれ━━━


「ついにここまで!」


「ここから先へ行かせるもんですかっ!」


「この命に代えても!」


向こう側から、3人のシスター風女性。

狐宵裏隊のメンバーと思しき者達が襲来。


「邪魔どす…♪」


しかし静によって一蹴。

厳密には長い髪を伸ばし、拳状に変えて殴るとの形だ。

その際、さり気なく勉にボディタッチし、「ひょあっ」との悲鳴を頂戴してもいた。


空中にいた3人は予想外の展開に瞠目。

こちらへ向かって来る髪にばかり意識が向き、碌に回避出来ないまま。


つまり3人が3人して(もろ)に攻撃を喰らい、仲良く後方へと吹き飛ばされていった。


「…ん?チッ、呪いの類いか。しゃらくせえ、倍返しにしてやんよ。」


直後、舌打ちを交えながら渋面を作る双葉。


彼女が感じ取ったのは明確な殺意。

『死』を具現化した様な、目に見えない抱擁だった。


自身も悪意の塊故に素早く気付いた双葉は、これまた見えない『ナニカ』で瞬く間に捕食。

その場で咀嚼・解析し、仕掛けたであろう2人。


部屋をある程度進んだところにいる司祭服の男女(ただし肌は青白く、生気が感じられない)へ向けて散布。

黒い靄に包まれた2人は、程なくしてバタリと倒れた。


四狐魔(・・・)だけでなく、此奴らまで…!」


部屋の中心にて、1人佇む妙齢の女性。


彼女が唯一の女性にして最後の枢機卿。

しかも朔夜クラスの美貌の持ち主であり、苦々しい表情の後にギンッと目を見開く。


それを合図に長い金髪が揺らめき始め、人間から巨大な狐へと姿形が変化。

豪華な祭服は裂け、9つの尻尾をゆらゆらと揺らめかせ、10メートルはあろうかと言う高さから1行を見下ろし、大きく遠吠えをする。


尚、部屋は(特別仕様になっているのか)彼女より数メートル程度ではあるが高く、軽く走り回れる位には広かったりする。


「ぐっ…よもやここまでとは…。」


「立っていられない…。」


アーウィンとレイラがプレッシャーに耐え兼ね、苦しげに片膝を突くも、辛そうにしているのは彼らだけ。

フィリップは「おっとっと」と陽気にへたり込み、召喚組は(凛が施した)結界により難を逃れたからだ。


だが彼らはそれどころではなく、凛達共々「嘘でしょ…?」と言いたげな顔を巨大金狐に向ける。


「聞き間違い、じゃないよね…?」


「うん。皆が同じ反応を示す=まず間違いないと見て良いんじゃない…かな?」


「嘘じゃねぇってのかよ…?」


「ん…。」


「ビックリだよね。」


「まさか、『4コマ』なんて役職が…完全に予想外です…。」


凛、美羽、火燐、雫、翡翠、楓が代表で漏らし、他の面々も同意とばかりに頷く。




楓の言う通り、4コマは漫画に携わった事がある者であれば分かる単語。

ただ、大抵はギャグ━━━冗談で終わる場合が多く、真面目な。


それこそ諜報や暗殺を生業(なりわい)とする組織には似つかわしくないのでは?との考えが(よぎ)り、今みたいなリアクションに繋がったのではと推測される。


そんな4コマこと四狐魔は、狐宵裏隊に於ける四天王的な立ち位置。

名をアメリ、ヤクモ、ヒノエ、カレハと言い、双葉と静のおかげで全く印象に残らなかったものの…実は全員が空狐。


神輝金級の実力を所持し、もしアーウィンが挑んだとしても余裕で返り討ちに遭った事だろう。


組織内でも重要な役を担い、巨大金狐を支える事数百年。

子供の様に可愛がる彼女達を酷い目に遭わせたとして、金狐となった女性━━━タマモが目の前にいる存在達に対し、怒りを露にする。


「最早捨て置けぬ…即刻消え失せるが良い!!」


大きく口を開けたタマモは、レーザー状のブレスを発射。

白い閃光が凛達を覆う。


「さて…やる事は山積みじゃ。まずはアメリの解放に、国の立て直し…ああ、御礼参りが先━━━」


「おいおい、そりゃあ気が早えぇってもんじゃねぇか?」


土埃が晴れ、最も手前にいたのは右手を前に翳した火燐だった。


彼女を含め、全員が無傷。

また壁や天井についても同様らしく、そちらまで届いた形跡は残されていなかった。


「何故じゃ…何故朕の攻撃を喰らって生きておる!?」


「あん?見りゃ分かんだろ。大したもんじゃなかったってだけだ。」


「取り零しておいてよぅ抜かすわ。」


「うっせ。」


攻撃跡は火燐の足元で止まっており、抑え切れなかった部分は朔夜。

及びアウトサイダーの面々がマナイータースキルで吸収、被害を最小限に留めた。


ただ、相手方の攻撃が光属性を帯びていた事もあり、顔を顰めながらではあったが。


「つか朕って何だよ、王様気取りか?振る舞い自体は正にそれ(傍若無人)みてぇだが。」


「おのれ…朕を愚弄するか!痴れ者めが!」


「愚弄も何も、そのままのつもりなんだがな。」


「ふざけるでない!」


こうして、タマモ対火燐の戦いが始まる。

タマモが飛び掛かり、火燐が(無限収納から出した)レーヴァテインを抜き放つとの構図だ。


「貴様も炎を得意とするか。」


「だったらどうしたよ?」


「朕に喧嘩を売ったのだ。そう易々と死んでくれてはつまらぬ。逝くならせいぜい苦しんでからにせい。」


「…へぇ?なら、でけぇ図体だけじゃねぇってところをオレに見せてくれ。」


「抜かせ!」


途中、この様な1幕が。


「全然見えん…。」


「状況がさっぱり分かりませんね。」


更に2人の苛烈さは増し、常人の目には追えない速度に。


まだ常人枠に収まる(?)アーウィン、レイラは共に難しい顔を浮かべ、


「そうでしょうか?慣れれば意外と見えるものですよ。」


「「えっ?」」


朗らかに笑うフィリップに目を丸くしていた。




5分後

そこには体の至る箇所から血を流し、横たわるタマモの姿が。


「ふ…ふ…見誤っていたのは朕の方であったか。」


反対に火燐は余裕そのもの。

レーヴァテインを肩に担ぎ、少し離れた場所から見下ろす彼女へ苦しげに語る。


「それでも…やらせる訳にはいかぬ。全身全霊で以て討ち滅ぼしてくれよう。」


ゆっくりと起き上がり、彼女を身の丈以上の白いオーラが包む。

それらを口元へ集約し、先程よりも強大なブレスとして放出。


「はいドーン。」


対する火燐は球状の炎の塊━━━炎系超級魔法クリムゾンノートで応戦。

ブレスより1回り小さいそれは、向かって来るブレスを物ともしないどころか逆に食い破り、突き抜けていく。


「オ、オ…オオオォォォォォォ!?」


数秒後、クリムゾンノートが着弾。

タマモは一瞬で炎に飲み込まれ、堪らずと言った感じで絶叫する。


やがて「ハァッ!」と気合いと共に、炎が消散。

脱力し、息を荒げる彼女へ、火燐から「おー、やるじゃねぇか」との賞賛の声が。


「…この程度…いくら放たれようとも━━━」


「んじゃ、本番行ってみようか。」


「は?ほ、本番…?」


呆気に取られるタマモを他所に、火燐が右手人差し指をクイッと動かす。


刹那、タマモは身の丈以上の結界で覆われ、右から灼熱の炎。

左から猛烈な吹雪が発生、彼女を襲う。


「━━━マカハドマ(氷炎地獄)


火燐がそう呟いたのを機に、炎と吹雪の勢いが一気に増す。


数秒経った頃に位置が入れ替わり、時には前後。

或いは上下、最後は螺旋となって彼女を攻め立てるのだった。

雫「ち◯ちん」


一同『止めなさい』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ