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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
世界周遊~シリウ神聖国編~
195/253

177話

理彩が入社してから3年目の春。

人材教育と称し、(実際はハラスメントの一環で)1人の男性社員を指導するよう指示を受けた。

彼女にとっては初めての部下に当たり、既にセクハラ紛いの数々を撥ね退けて頭角を表した頃でもある。


その男性社員は大学を卒業したばかりの後輩。

右も左も分からない新人の彼を伴った状態で当時の上司が作業中の理彩の元へ訪れ、「今日新しく配属された◯◯君だ、彼をなるべく早く1人前に育てる様に」とだけ告げ、どこかへ行ってしまう。


後輩君は「え、それだけ?」と呆気に取られ、理彩は嘆息。

軽い自己紹介の後、簡単な業務から教える流れとなった。


彼は(東大卒の理彩から見て)あまり出来が良いとは言えなかったものの、真面目で努力家。

何か言えば「はい!」と元気良く返してくれる事から、「ワンコ系男子ってこんな感じなのかしら?」なんて考えながら教育していった。


そんなこんなで1年近くが過ぎ、奮励努力(ふんれいどりょく)した甲斐。

並びに無意識の内に発動させた導き手スキルの効果も相まって、少しずつ成果が出始める。


2人の間に笑顔が増え、仕事とはこんなに楽しいものだったのかと思えるまでになったある日。

後輩君の目の下に、先日まではなかったクマが出来ている事に気付く。


不思議に思った理彩がどうしたのかと尋ねたところ、ただの寝不足ですと返されて終わる。

少し冷たい態度な気もしたが、寝不足なら仕方ないと小さく溜め息をつく。


それを発端として日を追う毎に痩せていき、目は虚ろ、時折ブツブツと呟くまでに悪化。

甘い系やお茶だった飲み物はブラックコーヒーへと変わり、1日1本ではなく数本。


それだけに留まらず、レッド◯ルやモン◯ターと言ったカフェイン含有飲料。

更にはユ◯ケル等の栄養剤へ手を伸ばすまでに。


流石におかしいと調べた結果、上司や他の男性社員が彼に仕事を押し付けていた事が判明。

言葉巧みに説得し(騙し)、自ら動くよう仕向けるものだから余計に質が悪い。


しかも理彩の目を(あざむ)く目的でなのだろう。

定時で共に会社を出た後、電話やメールで呼び出すと言う徹底ぶり。


あまりにも卑劣なやり方に苛立ちを覚えた理彩。

男共へ怒りをぶつけたい衝動に駆られるも、それ以上に後輩の体調が心配。


彼らには彼らの仕事があり、それで給料を貰っているのだから請け負う必要はない。

自分の分だけやれば良いと諭す。


そこを邪魔する男性社員達。

バリケードと言う形で理彩の周りを囲い、必死で叫ぶ彼女を他所にどちらに味方した方が良いかを優しく。

時に怒鳴って後輩に迫り、無理矢理連れて行ってしまった。


以後、後輩は男達の良いように使われ、半年程で会社を退職。

人間不信に陥り、実家へ引き籠もる様になったのだとか。


責任を感じた理彩が彼を訪ねた事もあったが、1言2言話し掛けただけで残りは向こうが。

それも一方的に罵詈雑言を浴びせられ、見兼ねた家族から「もう来ないで下さい」と面会謝絶を受けるまでに。


それをどこで知ったのか男性社員達が理彩を嘲笑(あざわら)い、(自分達の行いは棚に上げて)後輩も碌に育てられないのかと罵ってみせた。


人1人の人生を狂わせておいて(わら)うとは何事か、と静かにキレた理彩は今まで以上に結果を突き出し、その年の内に課長に昇進。

逆に彼らを追い詰め、関係者全員会社から叩き出した。

クビにしても尚彼女の溜飲は下がらず、(これまでに嫌々ながら得た伝手越しに)外部から攻め、徹底的に追い打ちを掛ける様から、付いた渾名(あだな)が『氷の女帝』。


仕事中は一切笑顔を見せなくなり、常にクールに振る舞う彼女。

男性に恐れられ、女性は才能や美貌の高さから常に羨望の眼差しを受けるまでに。


そんな彼女ですら里香が神だと知った時は大きく表情が変わり、相当落ち込んだ。

と言うのも、理彩は東大卒ではあるのだが、卒業との意味では里香が先。

里香はわずか10歳、つまり飛び級で学業を終えたからだ。


だがそんな偉業が不思議と話題に上がらず、家族も凄いねー位しか扱われなかった。(実は凛の成長をリアルタイムで見たいが為、ここでも神パワーを発揮したのは内緒)

理彩は引っ掛かり…厳密にはずっと頭の隅に靄が掛かった様な感じを覚えながら大人へ。

だからこそ「妹が実は神だなんて…そんなの敵う訳ないじゃない」と崩れ落ちたりなんて場面も。




閑話休題


「そ、そう言えばステラちゃんも元日本人なんだよな?なのによく操縦出来たね?」


気分転換も兼ね、光輝はステラに水を向けてみる。


「ふっふっふっ…努力の賜物です。」


腕を組み、素敵な笑みを浮かべる彼女。

コメントに困った光輝が「努力でどうにかなるんだ…」と苦笑いになるのは仕方がない。


「まぁ、凛様には全然敵わないですけどね。操縦技術もですけど、何より反応速度が段違いですもん。」


かと思えば不服そうな顔で凛を見やり、今度は凛が微苦笑。


「これでも最近までは鈍かった方なんだよ?資格を取る為に専門学校へ通い始めてからはゲームセンターとか全然行かなくなったし。」


「それは前にも聞いたけどさー…。」


凛の返事に益々ステラがブー垂れ、一方でゲームセンターと言う単語に引っ掛かりを覚えた光輝が「ん?」と呟く。


「凛さん、アーケード(ゲーム)とかってやる?」


「え?あ、はい。学生の時以来にはなりますが友達と。」


「例えばどんな?」


「1番多いのはガン◯ムものかな?後、たまーにFPSとかも。」


「実はランキングに名前が載ったり、なんてのは…。」


「Rinと言う名前で載せたのは何回か…いや、結構あるかな?」


「マジか…。」


凛が可愛らしく首を傾げる一方、光輝が考える仕草を取り、「凛さんの姉がRioさんで活動してるのに何で気付かなかったんだ俺…」と呟く。


「ランキングがどうかされたのですか?」


「いや、どうして本人が知らないんだよ…凄まじいスコアを叩き出したとかで当時世界中で話題になった位だぞ?」


「え、その建物(ゲームセンター)内だけとか、広くても近隣や同じ都道府県の順位ではないのですか?」


「何故にそんな認識…。」


「この子、普段はしっかりしてるんだけどたまに抜けてるところがあるのよ。」


「何か分かった気がします…で、さっきの答えだけど、日本全国は勿論、種類によっては世界規模のものもある。今話したのは後者で、ニュースでも取り上げられた位なんだ。最終的にアメリカのプロゲーマーが挑戦するも、有り得ない(クレイジー)と言って匙を投げたとか。そんなプロゲーマーを凌駕するRinとは一体!?…みたいな感じで盛り上がり、本人を特定しようって流れに。でも不思議と長続きせず、有耶無耶なまま終わったとの記憶が…。」


「もしかしてお姉ちゃん?」


「間違いなく里香が絡んでる。むしろあの子が鎮静化させたと考えて良い位だわ。」


凛が尋ね、理彩がキッパリと言い放ち、「俺もそう思います」と光輝も同調。


彼らの推察通り、凛のストーk…もとい保護者である里香は、ナチュラルに結果を残す凛の尻拭いをして回るのが日課。

同時に楽しみでもあり、学生の時点で既に並外れた身体能力を持つのが関係してか月に何度も友人から部活の応援依頼を受け、その度に多大なる貢献をする弟。

ゲームセンターに於いてもれは然りで、当たり前の様にハイスコアを叩き出すものだから隠蔽工作が大変。


ただ本人は仕方ないわねーなんて言いながらクネクネし、非常にだらしない顔で作業に当たるので全く苦に思っていないのが救いか。


ついでに、凛の意外な。

かつ当然と言えば当然な過去を聞いたステラは「あのニュース、凛様だったんだ…その頃から変態じみた機動って…」と微妙な顔を浮かべ、(朔夜を含めた)周辺も似た感じの空気が包んだのは言うまでもない。




「光輝さん、僕からも1つ聞いて良いですか?」


今度はステラからの質問。

凛の事だからこれ以上は考えても無駄だと諦めたが故の判断でもある。


「ん?何かな?」


「もしロボットに乗るとしたら、やっぱりゴツい系ですか?勇者王だけに。」


「え、何でそれを…。」


「忘れました?昨日の転移魔方陣越しに音声を拾ったとの件。」


「そうだった…でもまぁ、無骨なのは好きだな。ガン◯ムで言えばバルバ◯ス、ス◯ロボオリジナルだとダイ◯ンガーみたいな感じで。」


「おー、なんか分かるかもです。それじゃそれじゃ━━━」


ロボット談義で盛り上がり、「そう言えば、理彩姉さんも好きは好きだよね。SDの方だけど」なんて凛が呟けば2人も驚いた顔でそちらを見やる。


「意外です。」


「てっきり興味ないものとばかり。」


「…そんな意外そうな目で見ないで頂戴。ただ、小さいながらもぴょこぴょこと一生懸命動く姿がまるで凛みたいって思っただけだから。」


「そうそう、僕小さいから…って酷くない?」


予想外のコメントにより笑いが発生。

凛1人だけが両頬を膨らませ、それが余計に微笑ましく捉えられたのか更に声量が大きくなる。


《ご歓談のところ申し訳ありません。エリオット様が拉致されました。》


しかし直後に届けられたナビからの報告。

笑うどころではなくなり、光輝と理彩以外の声がピタリと止まるのだった。

本当は先週の内にここまで進むつもりだったのですが、思ったより後輩君の件が長い&重くなったので分ける事にしました。

てなわけでようやく物語が進みます←遅

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