123話
凛達がいる管制室。
そこはクリアフォレスト中に設置した監視カメラ(いずれも半球状で、パッと見押しボタンみたいな感じ)から届けられた映像が閲覧出来る場所だ。
カメラに死角はなく、しかもどの角度からでも最低2箇所は見れる仕様になっている。
なら建物内であれば大丈夫かと言うとそうでもない。
透過能力を兼ね揃えたカメラが天井裏部分にあり、監視カメラ同様、真下だったり斜め下方向が映るよう配置。
例え部屋の隅やトイレ内で万引きを始めとした犯罪を行おうが、即座にカメラが感知。
犯行現場が映された映像をプリントアウトされたものが証拠として突き付けられる。
これに相手側は見苦しい言い訳をしたり開き直るのは当たり前。
中には逆上して飛び掛かる者もいたが、漏れなく無力化され、全て検挙されている。(現時点で、捕まった人数は3桁を軽く超える)
『早くなさい。ですが私の命は奪っても、フェリス・ヴァン・アウグストゥス・ダライドの魂そのものまで奪えるとは思わない事です。必ずや帝国が貴方方を罰するでしょう。』
『くっ、殺せ…ごめんなさいやっぱり嘘ですー!こう言えって聞かされましたけどー、私死にたくありませーん!クーネリア・ヴァン・アウグストゥス・ダライドで身代金請求して良いですからー!帝国のお城に返して下さーい!』
そしてモニターに対面する相手をキッと睨む女性。
別な部屋では、涙を流しながら頼み込む様子の少女が映る。
そんな2人目と3人目のくっころこと、赤髪ポニーテール女性のフェリス・ヴァン・アウグストゥス・ダライド。
それと片目がオレンジの髪で隠れたクーネリア・ヴァン・アウグストゥス・ダライドは、帝国第2皇女と第3皇女…つまりリーゼロッテの妹兼アレックスの姉に当たり、それぞれ剣術と魔術に秀でている。
「アウグストゥス・ダライドを名乗ってるって事は、アレクやリーゼロッテ殿下の家族だろうね。一応連絡を入れてみるか…。」
その後も2人は説教を垂れたり涙を流しながらの懇願を続け、凛はそんな2人を横目に無限収納から映像を取り出す。
「クーネ!」
「ちぃ姉様!ちぃ姉様ーーーっ!!」
牢屋が並ぶ通路、その真ん中辺りにあるソファー等が並んだ部屋(簡単な応接室みたいなもの)に連れて来られたフェリスとクーネリア。
先に待っていたフェリスが立ち上がり、クーネリアが駆け寄って抱き着く。
「大丈夫だったか?痛い事はされていないか?」
「私は大丈夫です!お姉様もご無事そうで何よりです…。」
「ああ良かった。…おのれ王国の奴らめ!私達に対してこの様な扱い。断じて許す訳には━━━」
「呼ばれたから来てみたけど…2人共案外元気そうね。」
そこへ、呆れた表情のリーゼロッテが入って来た。
「「リーゼロッテ姉様!?」」
「私もいます♪」
「アンジェリーナ殿下まで!?…って何ですかその格好は!?」
ご機嫌な様子で顔を出し、そのままリーゼロッテの横に立ったアンジェリーナ。
彼女は膝丈のメイド服に白いエプロン、それも両方にフリルがあしらわれたものを着用していた。
「可愛いですよね〜♪出来ればもっと早く着たかったです♪」
アンジェリーナは今年で25歳。
(こんな事を言っては失礼だろうが)年甲斐もなくくるくる〜と回ってはしゃぐ彼女の姿に、リーゼロッテが溜め息をつきながら額に手を当てる。
フェリスとクーネリアはぽかんと口を開け、アンジェリーナの「うふふふふ♪」との声だけが室内に響く。
「ア、アンジェリーナデンカ。ドウシテ、ソノヨウナオスガタニ。」
それから10秒近くが過ぎても状況は変わらず、固まったままのフェリスが尋ねる。
「それは勿論愛する旦那様に食べて貰う為の料理を…って、もー、何言わせるんですかー!」
「いった!」
アンジェリーナは答える内に恥ずかしくなり、何故か隣にいるリーゼロッテに突っ込みを入れる。
「もうっ!もうっ!」
「いたっ、痛いって!ちょっと、いつまで私に当たるのよ!」
その後もバシバシと叩き続け、リーゼロッテがかなり煩わしそうにする。
「まぁ、そんな訳だからフェリ、クーネ。ここから出るわよ。あ、その前にお茶でも飲む?美味しいデザートもあるわよ。」
ややあって、アイアンクローを食らわせるのと並行して尋ねるリーゼロッテ。
アンジェリーナは「ギブ、ギブですって」と言ってリーゼロッテの右手をタップし、しかし涼しい顔でスルーされる。
「違う…。」
「ん?」
「お姉様はそんなお優しい方ではない!おのれ偽物め!今ここで正体を暴いてくれる!」
「ぷぷっ。リズ、貴方妹に偽物呼ばわりされ…いだだだだ!痛い!リズ痛いです!!」
「はぁ〜、昔から頭の弱い子だとは思っていたけど、まさかここまでとはね…。」
「黙れ!偽物風情が賢しらに姉様を語るな!今この場で成敗してくれよう!」
「へぇ〜?ふぅ〜ん、実の姉に向かってそんな事言うんだぁ?なら、今ここであんたの恥ずかしい話を暴露しても何の問題もないわね。」
リーゼロッテは両手を剣にやるフェリスに鋭い目を向け、話の途中でアンジェリーナをポイッと投げ?。
そして「うう…リズに穢されました」とか聞こえたが、やはり無視を決め込む。
「は?一体何を…。」
「あんた、人前だとカッコつけてるけど、自分の部屋に戻るといつも(見えない場所に隠した)可愛いものでストレス発散してるわよね?」
「なっ…!」
「それと8歳になるまでおね━━━」
「わぁぁぁぁぁ!!」
「極め付けはあれよね。自室じゃない部屋にメイド数人を連れ込━━━」
「すみませんでしたーーー!」
フェリス、人前にも関わらず華麗な土下座を披露。
「あらどうしたの、フェリス?私は偽物なんでしょ?」
「本物のリズ姉様です!偽物呼ばわりして誠に申し訳ありませんでしたぁ!」
「えーーつまらないわーーー。まだまだ暴露し足りないのに…。」
「お願いですから止めて下さい!この通りです!」
何度も頭を下げるフェリスを見て溜飲が下がったのか「まぁ良いでしょう」とリーゼロッテが呟く。
フェリスはぱぁっと笑顔になった後に首を左右に振り、何事もなかったかの様にして立ち上がった。
「して、お姉様。」
「唐突に戻るのね。」
「んんっ。何故王国の第1王女であらせられるアンジェリーナ殿下とご一緒に?確か一方的にライバル視しておられたと記憶していますが…。」
フェリスにとって、帝国城にいた時のリーゼロッテは非常に取っ付きにくい存在だった。
と言うのも、彼女は幼少期から頻繁に諜報員を王国へ派遣し、結果を聞いて悔しがる場面が多々あったからだ。
加えて、基本的に上から目線で話し、気分屋なところも大きい。
それでも一応は長女だからか面倒見は良く、色んな事に感心を持ち、(火が扱えるものの適性があまりない)魔法以外は割と何でも卒なく熟す事に尊敬の念を抱いている。
しかしそれらを鑑みても、ここまで落ち着いた様子の彼女は初めて。
フェリスは戸惑い、先程の疑心暗鬼からの過激な発言へと繋がったのだろう。
また、何を以てそうなったのかは未だに不明だが、特にご執心なのが王国に諜報員を送る原因ともなった王国第1王女の存在。
彼女が理由で帝位継承権争いに一切の興味を示さず、次男のニール以下の者達も継承権を放棄している。
2つ下で自身を「ちぃ姉様」と慕うクーネリアは様々な面でサポートをしてくれ、6つ離れた4女エメラルダと7つ離れた4男のランバートはそれぞれ片手で数える位しか支援者がいない。
その為エメラルダとランバートは敵だと見なしてはおらず、帝都から出ずに偉ぶり、皇帝のご機嫌取りばかりする長男のウェルズとほぼ一騎打ちの状態だった。
「簡単よ。私とアンジェは嫁いだの、同じ人にね。」
「は?…その、適齢期を過ぎた私が言うのもなんですが、散々見合い話を断った姉様が、ですか?」
「悪かったわね。と言うか、私だって結婚しても良いと思える男性の1人や2人位います。」
「ももも申し訳ありませんっ!」
フェリスはペコペコと頭を下げ、リーゼロッテが「分かれば良いのよ」とふんぞり返る。
そんな彼女にアンジェリーナが「結婚しても良い男性がいるとか…どの口が言うのでしょう」とジト目を向け、しかしリーゼロッテはそれに全く気付いていない。
それから、フェリスとクーネリアからここに至るまでの経緯を聞く事に。
フェリスは『戦姫将軍』、クーネリアは『魔導姫』の2つ名で呼ばれ、これまで何度も王国との小競り合いに参加。
今から1週間前、とある戦場で王国のバーヴェットを手に入れる様にとの命令書が届けられる。
バーヴェットは真北に近い北西に位置する港町で、手紙の差出人は皇帝。
帝国にも港はあるが、広大な面積を賄うにはとてもではないが足りなていない状態だ。
故に王国からの輸入に頼る部分が大きいのだが、相手も必要だと分かっているからか高値で販売。
それに業を煮やしたクーネリアを含めた帝国が、王国との国境付近にあるカラミナ砦に対して攻撃を仕掛けたのが4日前。
昨晩夜襲を掛け、攻略を終えたのが朝方なのだそうだ。
軽く休憩を取り、目的地であるバーヴェット港に向かいつつ、そう遠くない村へ立ち寄るとなる。
そこで補給と言う名の略奪や暴力行為を行おうと近付いたところ、どこからともなく赤・緑・黄色のドラゴンが襲来。
幸い当たりこそしなかったものの炎・風・雷属性を帯びたブレスが何度も放たれ、全員の意識が自然と上方向に向く。
「…!ん、んんんっ!」
「ちぃ姉…んーー!」
すると突如、地面から伸びた黒い影が2人の口元を覆った。
そのまま地面に引っ張られ、気が付いた時には先程の牢屋にいたとの事。
因みに、2人が戦場からいきなり姿を消した後、現場はてんやわんやに。
「貴様ら、揃いも揃って何たる様だ!」
「貴方達、結果も出せずに帝都に戻ろうものなら…分かっていますね?」
強面で体格の良い武人と氷の様に冷たい笑顔の女性からその様に言われ、慌てて村へ聞き込みに行こうとする。
ところが行動を開始してすぐ、先程上空にいたドラゴン達が入口の前に降り立ってしまった。
3体の龍はいずれも全長15メートルを越すインフェルノドラゴン、ストームドラゴン、サンダーボルトドラゴン。
全員が黒鉄級以上の強さを持つ。
対する兵達は6千と数はそこそこだが、連日の戦いの疲れに加え、最主力であるフェリス達を除くと黒鉄級に満たない者ばかり。
とても太刀打ち出来ず、司令官代わりとなった武人と女性が叫ぶのを他所に、カラミナ砦へと駆け戻る形となった。
「成程ねぇ。」
フェリス達の説明に、リーゼロッテは腕組みしながら答える。
「それで、私達が何故いるかとの話だけど…そもそも、今いるここがどこだか分かってるのかしら?」
「え?大陸最北端の国境付近ではないのですか?」
「全然違うわよ。ここはクリアフォレスト。帝国の最も南にあるスクルドから、更に南南西方面に進んだ森の中…つまり死滅の森にあるの。」
「「死滅の森!?」」
「と言っても、出来てまだ1週間も経たない様な真新しい都市だけどね。」
「それは…。」
「全く存じ上げませんでした。」
「あんた達は戦場にいる事が多いし、仕方ないわよ。それで、少し前に変わった食べ物が届けられたりしなかった?」
「「変わった食べ物?(ですか?)」」
「ええ、お湯を掛けてだったりとか、温めて食べる様な感じの。」
「あー!来ました来ました!」
「ですね。簡単でありながら、ここまで美味しいものがあるのかと驚いた覚えがあります。」
「そう。それを齎したのが『ホズミ商会』って言うんだけど━━━」
「リーゼロッテ殿下。続きは僕から話します。」
そう言って、凛と美羽が中に入る。
フェリスは「誰!?」、クーネリアは「え…どっちも凄く可愛い」と表現した顔を浮かべ、リーゼロッテは「あら、もう終わりなの?」と残念そうにする。
「初めまして、凛 八月朔日と申します。只今リーゼロッテ殿下よりご紹介に与りました、ホズミ商会を立ち上げた者です。」
凛は笑顔で話し、それに対しフェリスは訝しんだ目を向け、クーネリアは「はわわわわ…可愛いだけじゃなかった」と呟きながら小刻みに震えている。
「単刀直入に申しますと、実はドラゴン3体を貴方方にけしかけたのは僕になります。」
「!?」
「嘘…。」
「本当です。ついでに言わせて頂きますと、カラミナ砦を攻める前からの貴方方の行動も知ってます。不思議に思いませんでした?敵味方問わず、戦闘不能になった人達がいつの間にか戦場からいなくなった事に。」
凛はディシーバーズやねこ忍隊に対し、亡くなったり気を失った者を順次戦場から回収するよう依頼を出していた。
双方共凛の命に従い、戦闘不能かつ意識が向いていないタイミングを見計らって回収作業を行う。
最終的に、王国側は血等の戦闘が起こった痕跡だけを残し、最終的に誰もいなくなった。
帝国側も、後方だったりやや外れた場所に兵が置かれ、しかも治療まで施されるとの結果に終わる。
それに全員が不審がり、誰の仕業かと追求して回ったのは記憶に新しい。
「その指示を出したのも僕です。国と国との諍いに口を出す気はありませんが、何の罪もない一般人に手を出すのは違うと思います。それに、皆さんが向かった村は僕達にも関係がある場所でして。そこで現在行われているプロジェクトの邪魔をされる訳にはいかなかったんですよ。なのですみませんが介入させて頂きました。」
「プロ…ジェクト?」
凛の言うプロジェクトとは、貧しい村々を中心に、何かしらで新しい特産品を作って貰う事を指す。
今回の場合、フェリス達が向かったイリュージュ村は温暖な気候なのを利用し、とうもろこしや茄子、それとマンゴーやパイナップルを栽培。
それらはイリュージュに設けたホズミ商店が仕事として住民に割り振り、夕方に日当と称した賃金を渡す。
本来であれば数ヶ月は掛かる収穫も、事前に調整した土だったり魔力を多めに含ませた水で2〜3日もあれば立派な実が付く程に成長。
収穫後、世界中にあるホズミ商会関連施設に回される仕組みとなる。
このシステムは凛がポールと共に回った貴族達への商談の後に行われ、まずは国の中で最も貧困の差が激しい王国で取り入れられている。
イリュージュ村の場合は上記の作物だが、別な所ではワインに合った品種の葡萄。
また別な所では、砂糖の原料となる甜菜、米を含めた穀物とかだったり。
いずれ各村を治める貴族から追求を受けるだろうが、仕事の依頼主はホズミ商会。
つまり言い換えれば商業ギルドや商国にもなる訳で。
その事を踏まえた上で話を聞き、それでも相手が高圧的な態度で来るのであれば、こちらも見合った対応を取るつもりでいる。
ついでに、村に設置したのは商会だけでなく、商店や酒場、食事処や公衆浴場が一纏めになった複合施設。
住民達は商会内で朝風呂だったり朝食を摂り、日中は畑で働いて汗水を流す。
そして夕方から夜に掛け、風呂や食事、買い物や酒を楽しむのが最近のルーティーンになりつつある。(商会が収穫物を回収する意味も兼ね、賃金を多めに渡している)
「そんな…そんなもののせいでドラゴンをけしかけられ、私達は捕らわれたのか。」
「お黙りなさい。これは今後の発展の為に━━━」
「姉様こそお黙り下さい!そのプロジェクトなるせいで我々の崇高なる使命が━━━」
「黙るのはあんたの方よ。国を支えるのは皇族でも貴族でも騎士でもない、一般人。その人達を無理矢理働かせるなんて時代から変わろうとしているの。」
「何を馬鹿げた事を!」
「馬鹿?どこが馬鹿なのかしら。民なくして国は成り立たない。ならばより良い方向へ導くのが皇族や貴族の務めではなくて?」
「それは…ですが…。」
「あんた頭が悪いのに難しく考えようとし過ぎ。得意なのはこっち、でしょ?文句があるのなら掛かってらっしゃい。」
リーゼロッテは左手を腰にやり、ベルトに差した剣を少し前にずらした。
これにフェリスの眉がピクリと動き、軽い瞑目の後にスッと目を開ける。
「…宜しいのですか?私は剣に関しては一方ならぬものだと自負しております。そもそも、幼少期を最後に負け越してる姉様が━━━。」
「御託は良いのよ。来るの?来ないの?」
「…行かせて頂きます。」
「そ。クーネ、あんたもいらっしゃいな。」
「わ、私もですか!?」
「…姉様、私達2人掛かり等と。少々舐め過ぎではありませんか?」
フェリスは剣呑な様子になり、クーネリアが同意とばかりに両手を前にやりながら「ふんっ、ふんっ」と力強く頷く。
「大丈夫よ。何も問題ないわ…っと言う事で凛。場所を移したいのだけれど。」
「分かりました。」
凛は頷いた後にポータルを置き、フェリス達は何事!?と目を丸くする。
「戦いの場を用意したのよ。さ、2人共。私に付いてらっしゃい。」
「は、はい!」
「分かりました!」
リーゼロッテは余裕の、フェリスとクーネリアは緊張した面持ちでポータルを潜って行く。
「あれ、アンジェさんは一緒に行かないんですね?」
ガイウスとの気安い間柄から、プライベートの時はさん付けする程にはなった2人。(勿論リーゼロッテもで、向こうは様付けか呼び捨て)
そんな凛が意外そうに尋ね、アンジェリーナは一瞬きょとんとするも、すぐに笑顔を浮かべる。
「ええ、結果は見えておりますので。」
「が…ぐ…何故だ。何故姉様に勝てない。」
剣を杖代わりに辛うじて立つフェリスがぼやいた。
既に満身創痍となり、彼女から少し離れた場所でクーネリアが目を回しながら倒れている。
フェリスは黒鉄級、クーネリアもそれに準じた強さを持つ。
華麗な剣技、炎・水・土属性を巧みに使った魔法をリーゼロッテに向けるも、彼女はそれらを難なく捌き、逆に力尽くて捻じ伏せてみせた。
「いつまでもやられっぱなしじゃないって事よ。」
「おかしい…どう考えてもおかし過ぎる。」
「そうね。私でもそう思うわ。けどごめんなさい、悪いけど教えられないの。」
リーゼロッテは昨日の日中、ずっとディレイルームで自身の強化に費やした。
その甲斐あって聖人へ成長し、新たに目覚めた光属性もそれなりに使い熟せるまでに。
「さ、続きといきましょうか。」
「え?」
「え?じゃないわよ。貴方この部屋に来てすぐ、『格の違いと言うものを教えて差し上げましょう』とか言ってたじゃない。」
「う…確かに、先程はそう申しましたが、今は全く…。」
「ま、それは単なる口実に過ぎないんだけど。」
「…申し訳ありません。仰る内容の意味が今一つ…。」
「そりゃそうよ。要は、これからあんた達を再起不能になるまで叩きのめそうって事だもの。」
「は、はは…ご冗談を。」
「冗談なものですか。私こう見えて物凄く忙しいの。」
本日より午前中はリーゼロッテが、午後はアンジェリーナがガイウスの補佐に回る。
空いた時間は自由時間となり、アンジェリーナは先程の格好の通り料理の勉強を。
リーゼロッテは今の強さでも弟の方が上なのが癪とかで更なる強化に努めている。
「また帝国絡みで手を止められたらウンザリするの。だから悪いけど、あんた達は人柱になって貰うわ。それに、私を偽物扱いした恨みもまだ残ってるし…ね。」
その言葉に、フェリスは顔が真っ青に。
棒立ちしている内にリーゼロッテが横を通り過ぎ、クーネリアが叩き起こされる。
以後躾と称し、2人は更に苛烈となった扱きをリーゼロッテから受ける羽目に。
そしてここに至るまで、訓練を始めてから1時間余り…実際時間で言うところの30分しか経っていない。
フェリス達は勘弁して欲しいと思いつつ、リーゼロッテの機嫌が早く良くなる事を切に願うのだった。
クーネリアはア○マスの○梅ちゃんみたいな感じだと思って頂ければ。
フェリスは基本敬語、身内だと素の男勝り口調になります。
フェリス達とのやり取りが長くなり過ぎて分けようかとも思いましたが、引っ張るのもあれなので止めましたw




