元旦特別番外編 118.5話
明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
これはアレックス達やアケミ達を凛の屋敷に招き入れた時のお話。
朝食の次に行われた訓練を終え、興奮冷めやらぬまま屋敷の中を見て回った。
午前9時過ぎ
「…と言う事があったんだよ。」
一通り屋敷を見終わった一行は、訓練部屋とは異なる亜空間━━━スキー場付きの雪原部屋へと移動。
そこでステラがつい数日前に起きた出来事…クリスマスに関するイベントを体験した事をアレックス達に伝える。
彼女がいる雪原部屋には、凛、美羽とは別に、アレックス、ユリウス、アリス。
アケミ、ユカ(本名ユカサッリナオネ)、リアムやヤイナ含むエルフ達。
それとリアム達から何かを感じたとかで、朔夜(+段蔵)の姿もある。
凛、美羽、ステラ、アレックス、アリスがダウンジャケット。
他はコート類を着用している。
先程皆でこの部屋へ訪れ、アケミが「スキー場じゃん!」と叫び、アレックスも驚いたのを機に関心が寄せられ、経緯を説明したのが始まり。
ガイウス達やランドルフは公務。
リーリアも仕事を理由にダイニングから離れて今のメンバーとなり、ステラとアレックスが実は自分達も元日本人だと告白。
アケミは目を丸くしたものの、凛はまんま日本人の見た目なので当然だとして。
2人も見ててなんとなくそうなんじゃないかと思っていたらしく、そこまで驚きはしなかった。
それでも嬉しい事に変わりはなく、2人を抱き寄せてはしゃいでいた。
「成程なー。にしてもスキー場か、こっちでも作ろうと思えば作れるもんなのか?」
「んー…そもそもこの世界は雪の降る場所自体が少ないからねぇ。そしてその場所も魔素点だったり、周りが山に囲まれた村とかだし。どちらにしても近くに魔物がいるって時点で難しいかも。」
「あー、そうか。向こうと違って、こっちには魔物がいるんだった。すっかり忘れてたぜ。」
「勿体ないよねー。」
アレックスはアケミにだけ自分が元日本人であると告げ、彼女もそれを把握。
しかしそれ以外の面々は、イマイチ話の内容が掴めないと言う顔をしている。
「…にしてもあの斜面を滑るすきー、だっけ?僕、ちょっと興味あるかも。」
リアムがそう言って話を切り出し、興味のある者は体験してみたいとなった。
そこからスキー板を片手にしたステラが手本を見せ、歓声の後に皆で滑り始めた。
アレックスとアケミは経験者だったらしく、スイスイと滑らかに。
初めてであるリアムもそれになんとか付いて行き、他のエルフ達から称賛の声を浴びていた。
意外なのがヤイナで、かなりのへっぴり腰だった。
それが元で何度も転び、その度に不屈の意志を見せては挑むを繰り返す。
そして案の定と言うか、引き籠もっているばかりのユカは全然滑れず、すぐに心が折れてもう嫌だー、帰りたいーと駄々を捏ねていた。
そんなこんなで2時間程をスキー場で過ごし、一行は麓にあるコテージへ。
「これが紋付き袴かー。お、アレク、似合ってるじゃん!ユリウスさんも様になってるよ。」
振袖…ではなく、紋付き袴に身を包んだステラがくるくる〜と回り、満足した様子で同じ紋付き袴姿のアレックスとユリウスを褒める。
話に出たアレックスやユリウスとは別に、彼らに着方を教えた凛。
それと、ステラ達と同じタイミングで凛から教わった段蔵やエルフの男性達も近くに控えている。
彼女は数日前の教訓(?)を生かし、美羽達が是非にと振袖を見せるも断固として拒否。
サラシ等を巻いていないのでそこそこ胸が膨らんでいる状態なのだが、本人は全く気にしていなかったりする。
「初めて着てみたが、案外悪くねぇもんだな。」
「俺までお褒めの言葉ありがとさん。」
「ねーねー!あたしはあたしはーーー!?」
ステラに褒められ、アレックス達が満更でもない様子を見せる中。
サイズは小さいながらも振袖姿となったナルがダッシュで駆けて来た。
「うん、うんうん。ナルちゃん、バッチリだよ。」
「やったーーー!!」
ステラに褒められたナルは全力で喜びを表現。
続けて来たアリスもアレックスに伺いを立て、頭を撫でられながら似合うと褒められ、目を細くする。
それからすぐに着飾った女性陣が顔を見せ、凛達やリアムに感想を聞いては嬉しそうだったり、ドヤ顔をキメていた。
30分後
「あっはっはっは!!アレクー、顔真っ黒じゃん!」
右手に羽子板を持ち、左手でアレクを指差して笑うステラ。
「情けないのぅ。自分から挑んでおいてその様とは。」
「ぐぬぬぬぬ…。」
朔夜が呆れ、アレックスは右手で羽子板を握り締めて悔しがる。
正月っぽい遊びをと言う話になり、凛が羽付き、凧揚げ、かるた、双六、福笑い、コマ回し、だるま落とし。
それと関連付けて百人一首、めんこ、けん玉を用意。
全員が群がり、どれがどう言う遊び方かを凛に尋ねては楽しそうにする。(特に朔夜の食い付きっぷりが凄かった)
そしてアレックスは羽付きの道具を見て幼少期を思い出し、懐かしさも相まってステラに対戦を申し込む。
しかしアレックスは上位とは言え魔銀級。
ステラは神輝金級で、しかも凛の全配下の中でも上位に入る程の強さだ。
あまりにも戦力差があり過ぎてとても勝負どころではなく、アレックスが一方的に『○』や『✕』…と書かれていき、終いには顔中が真っ黒に。
ステラだけでなくユリウス、ナル、アケミもアレックスを見て爆笑。
ユカは笑いを堪え、凛と美羽は苦笑いを浮かべる。
別な遊びに夢中になっていたリアム達も笑い声に反応し、アレックスの変わりっぷりにギョッとなる。
その後、アレックスとユリウスが取っ組み合いを始めるのだが、その間もリアム達は呆然としたままだった。
「…全く。散々だったぜ。」
「いや殿下、それ俺のセリフだから。」
アレックスとユリウスは喧嘩の影響で全身墨塗れに。
2人は歩きながらその様な事を話しつつ、汚れと着替えを済ませにその場を離れた。
20分後、アレックス達がコテージ内に設けられたシャワー室から戻る。
凛と美羽と朔夜はコマ回しで競い合い、リアムはヤイナを含めた3人のエルフと双六をプレイ中。
朔夜がやや劣勢なのか顔を顰め、双六組はリアムがどうやらビリらしく、ヤイナの腰に縋り付いていた。
残りのメンバーはかるたを行い、アケミが他の追随を許さず圧倒。
心做しか、読み手であるユカが怯えて見える程だった。
後でアケミに聞いた所、「ちは○ふるを見て覚えた!」とかでかるたはマスターした…らしい。
しかし神がかった反射神経の持ち主である凛には手も足も出ず、完膚なきまでに叩きのめされていた。
「僕達はこれをやろっか。」
そう言ってステラが持って来たのは人○ゲーム。
それも異世界風にアレンジされたものだ。
「お、○生ゲームじゃねぇか!久しぶりだしやろうぜやろうぜ!」
アレックスも乗り気となり、ユリウスとナルを交えた4人でやる事に。
「…3、4、5っと。わりぃな殿下、俺も上がりだ。」
「だあああぁぁぁぁ!!くっそぉぉ、なんっで俺がビリなんだぁ!?」
ユリウスが3位でフィニッシュし、アレックスがビリと言う結果に終わった。
因みに、ナルが強運に強運を重ねて(所謂ビギナーズラック)1位。
アレックスは自身の運がナルに吸い取られでもしたのか、悉く悪いマスに止まっていた。
「このままで引き下がれるか!もう1回!もう1回やろうぜ!」
「「「えー。」」」
アレックスは渋る3人を他所に、2回目を行う為の準備に入る。
「よっしゃ6キターーー!…へっへー、やぁっっっと1位になれたぜ。」
しかし2回目、3回目を終えても不満が残り、4回目にしてようやく満足したらしい。
3人の「大人気ない」と言いたげな視線を物ともせず、1人ではしゃいでいた。
「よし。それじゃアレックス殿下も満足した事だし、そろそろここから出よっか。」
気付けばコテージに来てから3時間近くが経っていた。
その頃になれば、他の者達も粗方遊び終えると言うもの。
凛の言葉に皆が同意し、雪原部屋を後にする。
それから、アレックス、アリス、ユリウス、ナルは凛の分身体と共にナルがいた孤児院へ。
リアム達エルフは報告の為に里へ一旦戻るとなった。
ただ、アレックス達やアケミ達エルフは普段着に戻ったのに対し、リアムだけは紋付き袴が良いと言って譲らなかった。
仕方なく彼だけがそのままの装いでエルフの里へ向かい、(隠れリアム大好き)ゾーラパルフェが彼を発見と同時に肩をガッと掴んで事情を尋ねる。
凛に貰ったのだと伝えられ、目を見開いたまま視点をズラし、凛に固定。
誰だ、とかどこから来た等はそっちのけで、他にどんな服があるか。
リアムには何が似合いそうかと質問攻めにし、凛を困らせるのだった。
冒頭らへんにあった朔夜の違和感ですが、もうちょいしたら出る(旧ゆるじあにもいる)とあるドラゴンの残滓の事を指してます。




