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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
都市同盟(アライアンス)
128/262

120話

「お前ら、自分で何言ってるのか分かってんのか!?」


「な、何怒ってるのよ…。」


「全くですわ。何か私達に至らない点がおありだとでも?」


アレックスの剣幕にパトリシアが引き、反対にアイシャはさも当然とばかりにふんぞり返る。


「大ありどころの騒ぎじゃねぇ!!お前らだって青い血(貴族である事)を語るしか能がないだとか、偉ぶってるだけで会話も碌に出来ない知能の低い野蛮人なんて言われたら怒るだろうが!!違うか!?」


「それは…。」


「ですがそれとこれとは…。」


「馬鹿にしてるって点では変わんねぇよ。…!…レオパルド殿下、ゾーラパルフェ殿。あいつらに代わり、アレックス・ヴァン・アウグストゥス・ダライド個人として謝罪させて頂きます。誠に申し訳ない。」


騒ぎを聞き付けた人々により、周りが賑やかとなった。

それでも尚アレックスはレオパルド達の方を向き、深く頭を下げる。


「アレックス殿下。頭をお上げ下さい。」


「左様。貴殿は本気で我々の事を考えてくれている。帝国にもその様な御仁がいると分かっただけで十分満足と言うものだ。」


「…ありがとうございます。」


場所が場所なだけに、レオパルド達を厳しい目で見る者が多い。

また貴族そのものを否定する様な物言いをし、獣人・亜人に対して謝罪するアレックスにも注目が集まる。


そんな状況下の中、アレックスは2人に宥められて頭を上げるも、その顔は到底納得いかないものだった。




パトリシアの言う獣とは、獣人全般。

混ざりものは一見すると人だが、体のどこかしらで違う部分がある者の事を差す。


耳が尖ったエルフやずんぐりとした体型で(エルフ程ではないが)人と比べて少し耳が長いドワーフ。

背丈が人の半分位しかない小人(パルゥム)、下半身が魚の人魚等。

人と少し違うからとの理由で、それら全ての種族を下に見ている。


ただし何事にも例外はあり、とある2つの種族だけは敬う対象となっている。


「ねぇアレク。茶番はまだ続きそう?早く終わらせて欲しいのだけど。」


「私、お腹が空きましたわ。」


「お前ら、いい加減に…。」


2人の変わらない態度にアレックスはぐぐぐっと体に力が入り、やがて気が抜けた様にしてだらんと脱力する。


「…もう良い。」


「「え?」」


「もう良いと言ったんだ。アイシャ、お前との婚約は破棄。パティも今後一切俺に関わるな。」


「「ええっ!?」」


アレックスはもう話す事はないとばかりに翻る。

2人は驚きの後に慌てて追い掛け、彼の両腕を掴む形で待ったを掛ける。


「…聞こえなかったか?その手を離せ。」


「その様な事を仰らないで下さいまし。」


「そうよ。それにアイシャがダメなら、わ、私が一緒になってあげるから!」


「却下だ。だがどうしても誰かをってなったら…俺はステラを選ぶ。」


「「はぁっ!?」」


「ぼ、僕ぅ!?」


2人は驚きのあまり手を離し、然程遠くない位置にいたステラが目を丸くする。


(ばっか、フリだよフリ。諦めさせさえすればそれで良いんだよ)


(あ、成程。そう言う事ね)


アレックスはステラに近寄ってひそひそと話し、ステラは彼の説明に納得。


「冗談ではありませんわ!!」


「そうよ!しかもよりによって獣人とだなんて…それに髪も瞳も真っ黒じゃない!不吉極まりないわ!!」


「全くですわ、汚らしい!!絶対に後ろ暗い事をやっているに違いありません!!」


「…後ろ暗い?それは貴方の方でしょ、()()()()()()()()()()()()()。」


「なっ!?」


ボロクソに貶され、イラッとしたステラの口撃にアイシャがカッとなった。




アイシャの実家ことヴァレリー家は情報に特化した家系。

帝国中の様々な情報を握り、時には役立て、時には圧力を掛けて相手を屈服させる事もあった。


アイシャはそこの次女で、一昨年姉との継承権争いに負けて家督を継げない立場に。

ただ、継承権争いに関する情報は伏せられ、アレックスと婚約するのは変わらなかった為、家族からの扱いも変わらずそのままとなった。


だがそれはアレックスと結婚すると言う前提があっての話。

婚約を破棄されたとなれば状況が変わり、周りから冷たくなるのも想像に難くないだろう。


(はっ!私とした事が、危うく相手の口車に乗る所でしたわ。ですが、私が継承権争いに負けたのは秘中の秘。外部に漏れるはずがないのですが…)


「あまり舐めないで貰える?これでも僕は諜報部のトップ。僕達ねこ忍隊に掛かれば、帝国なんて丸裸も同然だよ。勿論王国もね。」


「「…!」」


半目で睨みつつ、ふふんとドヤるステラに気圧され、アイシャとパトリシアがたじろぐ。


帝都や王都を中心に、聖国以外の4カ国にディシーバーズの配下の影の魔物達や、ねこ忍隊を配置。

元盗賊であるジェシカを含めた諜報員達もこちらに統合され、任務中は全員が変化スキルにより猫耳と尻尾を生やした猫獣人と化している。(一部、猫耳と尻尾が恥ずかしいのを理由に警備に転属した者も)


常に最初の情報がステラの元に届けられ、彼女はそれを精査し、凛へ届ける役を担っている。


「ほう、俺も知らねぇ情報を…やるじゃねぇか。益々お前が欲しくなったぜ。」


「に"ゃっ!?」


そんなステラの頭に、アレックスがにやりと笑いながらポンッと手をやる。

ステラは驚きのあまり総毛立ち、やった側であるアレックスも驚いた。


「ど、どうしたよ…?」


「い、いや…案外こう言うのも悪くないかもって…はっ!」


ステラは自分が何を言ってるのかを理解して恥ずかしくなり、頭を抱えながらその場に(うずくま)る。


「………。」


「うわっ!雫、いつの間に。」


「ん。私の(面白)センサーに反応があった。」


「おうおう。雫よ、よう来たのぅ。」


「ん。さっきぶり。」


「うむ。面白くなるのはこれからじゃぞ。」


「ん。刮目する。」


(仲良いなぁ)


凛は凛で、自身の隣にしれっと混ざった雫に合流した朔夜を横目にそんな事を思っていた。




「お、おいステラ。大丈夫か…?」


「にゃあ〜、違うのぉ〜。今の仕草でドキッとしちゃったなんて何かの間違いだよ〜。いや、アレクが格好良いのは事実だけどさぁ〜。」


頭ポンポンは向こうで何度も行っており、初めてのリアクションに戸惑うアレックス。

ステラは何故かお尻を小さくふりふりして説明を行い、アレックスが「え"」と固まる横でパトリシアとアイシャが同意とばかりに何度も頷く。


「アイシャさんって、いかにも悪役令嬢みたいな感じだし〜。マウント取れてちょっとだけスッキリしたのも間違…あ、これは合ってた。」


悪役令嬢の所でアイシャがピキッとなり、スッキリの辺りで文句を言う為に歩き出そうしてパトリシアから羽交い締めにされる。


「うわーーーん!僕はこれからアレクにどう接したら━━━」


「馬鹿だなぁ。こんな事くれぇで俺達の仲が壊れる訳ねぇだろ?」


「アレク…。」


アレックスがステラの背中にそっと手を当て、ステラは瞳を潤ませながら見上げる。


「俺はただ昔みたく、一緒に馬鹿をやりてぇだけだ。ステラ、お前とな。」


「でも、アレクは帝国の皇子で僕は獣人。きっと周りが黙って━━━」


「なら黙らせれば良い。」


「え?」


「帝国も王国も丸裸、さっきお前が言ったセリフだぜ?なら何か文句を垂れようが、叩き潰せば済むだけの話だ。情報でも物理でもな。」


「何だよそれ…。」


「俺なら…いや俺達ならそれが出来る。だからヒナ、これから先もずっと俺の傍にいろ。」


「トモ…。」


そんな感じで2人は良い雰囲気となるも、凛の咳払いで我に返り、視線をそちらに向ける。


「いやー、飯が美味いのーーー!」


「ん。メシウマ。」


朔夜と雫はアレックス達のやり取りをおかずにご飯を食べ、これにアレックスが「暢気に飯なんて食ってんじゃねぇよ!」と憤慨。

するとアケミが「ステラー、例え離れ離れになってもウチらズッ友だかんね!」と言い、それに感化されたステラが「アケミちゃん!」と答え、互いに名前を呼び合いながらひしっと抱き合う。


「…何やってんだか。」


そして2人に手招きされたユカも恐る恐る輪に加わり、それを見たアレックスが呆れた様子でぼやいた。




「恐らく、2人が人前でラブコメを披露したのが原因だろうね。」


凛の尤もな意見に、流石のアレックスも「ぐっ」と唸るだけで二の句が継げなかった。


「…つか雫に朔夜。お前ら、どこから湧いて出やがった。」


「失礼な。」


「全くじゃ。と言うか、妾は口を開かなかっただけで最初からおったぞ。」


「マジか、気付かなかったぜ…。」


「そもそも、貴方方はどなたなんですの!?」


「なに、ただのしがないドラゴンじゃ。妾の事は気にするでない。」


「なんと…『竜人族』の方であらせられましたか。これは平にご容赦を…。」


竜人族は亜人の1つ。

大半が知恵を持ち、喋れる様になった(人とトカゲを足して2で割った感じの)ド()ゴニュ()ト。

または上半身が女性で下半身が蛇のデルピュネーだったり、半人半蛇の女性の背中にドラゴンの翼が生えたメリュジーヌの事を差す。

そして朔夜みたく、長生き(最終進化)して得たスキルでまんま人の姿を取る者も。


いずれにしても強者である事に変わりはなく、過去に手を出した結果滅びた家や国家もあるとかで今は手出し無用に。

この竜人族が先程例外とされた2つの内の種族で、残るもう1つは神の使いである(と言われている)天使族となっている。


「良い良い。妾は気にしておらぬ。」


「失礼ですが…もしや『龍の谷』ご出身では?」


アイシャの言う龍の谷とは、帝国の丁度中心付近にある魔素点の事だ。

帝都より少し東側に位置し、広大な山々の中に火口だったり、他にも名前の由来である谷となる部分や滝、洞窟や氷点下になる場所まで。


一部を除き、ありとあらゆるドラゴンが生息するとあって、別名『ドラゴンの楽園』とも呼ばれる。


「? なんじゃそれは?」


「し、失礼致しましたわ!」


「妾が来たのは死滅の森からじゃ。」


「「死滅の森!?」」


「左様…む、もしやその龍の谷とやらはとても広い山の事ではないかの?」


「は、はぁ。仰る通りでございますが…。」


「その中に長い長い滝はなかったかの?」


「はい。ございます。」


「懐かしいのぅ…。まだ残っておったとは思わなんだ。」


「あ、あのー、『嘆きの滝』について何かご存知なのですか?」


「ぶはっ!妾のブレスで出来ただけの滝なのに、大層な名が出来ておる!」


「え…ブレスで?」


「うむ。昔、妾に挑んで来た坊やがおっての。滝周辺が抉れておるのはその時の名残と言った所じゃ。」


「まさかの御本人様!?私、伝説を目の当たりにしている様で目眩がして来ましたわ…。」


アイシャは額に手を当ててふらふらとし始め、隣にいるパトリシアが慌てた様子で受け止める。


「ま、そんな妾でも凛には全く敵わなかったのじゃがの。」


『え?』


「たまたまだよ。僕なんて少し幸運に恵まれただけの一般人に過ぎないんだから。」


『それはない。』

「凛よ、それは幾らなんでも嘘が過ぎると言うものじゃぞ。」


「ホントなのにー…。」


凛の一言に美羽段蔵以外の全員が否定し、朔夜からは苦言を呈される始末。

しかし凛本人は本気のつもりだった為、皆からの意見を受けて不満そうにするのだった。

来年は元旦も投稿予定です…が、時間が足りずに来週分が遅れる可能性がががが。

その時はごめんなさい(´・ω・`) 


後参考までに↓


リザードマン→ドラゴニュート


ラミア→デルピュネー(翼なし)

ラミア→メリュジーヌ(翼あり)

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