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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
都市同盟(アライアンス)
122/262

115話

「おい、こいつ本当にベヒーモスか!?にしちゃあ随分つえーー気がするんだけど!…っと。」


戦闘が開始されてから少し経った頃。

ベヒーモスの尻尾振り回し攻撃を避けた火燐が、納得いかなさそうに叫ぶ。




彼女達は今この瞬間に備え、シミュレーションルームで何度も何度もベヒーモスに挑み、倒して来た。

だが今目の前にいるベヒーモスはデータ上のものより明らかに強く、予想を大きく裏切られる結果に。


火燐に至っては楽勝だろうと思い込み、舐めプまでするつもりでいた。

なので相当な衝撃となったらしく、人一倍驚いてみせる。(かなり勝手ではあるが)


「ん。思ったよりも強いとは言え、今の私達なら余裕で対処可能。」


雫達は先程遅延効果のある訓練部屋にて、凛の分身体と5時間にも及ぶ手合わせを行った。

おかげで自分の強さに満足し、最近はやや鈍り気味だった感覚もすっかり研ぎ澄まされ、向上心まで取り戻した。


美羽は凛みたいになりたいとの憧れから元々研鑽を怠らなかったが、手合わせ中に凛から得たアドバイスの効果で戦闘のバリエーションが増加。

そのおかげもあり、今の彼女達なら例えあの時と同じ条件下でアジ・ダハーカ達と対峙したとしても十分に渡り合え、それどころか勝利を飾る事すら可能な程に成長している。


「そーそー。てか火燐ちゃん、いくらなんでも相手に失礼だよ?」


「火燐ちゃん。メッ、です…。」


ベヒーモスはここが死地だと悟り、死にもの狂いでこの戦闘に臨んでいる。


攻撃、防御、回避のどれを1つ取っても吼えながらの全力。

例え攻撃を防がれようが、直後に左右どちらかの前足や尻尾を振るう。


更に、火燐が上へ避ければ同じ方向へ跳躍。

それを避け、空中では身動きが出来ないだろうと近寄ればその場で高速回転し、防御や牽制を図る。


それ以外の行動として、その場で器用にバク宙。

反動を付けての尻尾によるサマーソルトだったり、反対に前宙を披露して尻尾の叩き付け等。

データにはない行動が多数見受けられる場面も。


それらは今までに見た事がない程に猛々しく、まるで命そのものを燃やしているかの様にも見えた。


雫、翡翠、楓の3人はそんなベヒーモスを高く評価。

反対に高を括り、単身で突っ込んだ挙げ句見事に翻弄され、無様な姿を晒した火燐に対して苦言を呈する結果に。


「…あー、ちとばかり悪ふざけが過ぎたか。そんじゃ、いっちょ本気でいくとしますかね。」


火燐は雫達に叱咤されてようやくやる気になり、そんな彼女の後を雫達が追う。




10分後


火燐達の前には、横倒しになったベヒーモスがいた。


無傷の火燐達とは対照的に、ベヒーモスは体のあちこちに抉られた跡があり、深い傷も多数。

至る所に岩や氷の棘が刺さり、四肢全てが根元から凍るか炭化する形で失われている。


「ぐぶっ。ふ、ふふ…やはりこうなってしまったか。だが思ったよりは長生き出来た…これも星の巡り合せ、運命なのだろう。」


ベヒーモスは盛大に吐血。

その後に出た半ば自嘲気味な呟きに、凛はやはりかと言った表情を浮かべる。


「貴方も転生者、それも地球から来た方だったのですね。」


「…どうしてそう思った。」


「決め手は今仰った星の巡り合せに、運命ですね。魔物は基本的に簡単な言葉しか話せませんし、星の巡り合せと言う単語自体、この世界に来てから初めて耳にしました。」


「そうか。と言う事はお前も…。」


「あ、いえ。僕の場合、寝ていた所を連れて来られまして…。」


「寝ていた所を?それは…ゴフッ!はぁ、はぁ…詳しく聞きたいのは山々だが、どうやらそれは叶わないらしい。もう何も見えなくなってしまった。」


「そうだった!皆、ベヒーモスさんの治療をお願い!僕は体力回復に専念するから!」


『分かった!』

「分かりました…!」


「私も手伝うわ。」


凛はバイタライズで活力付与(体力回復)を行い、翠はその補助。

美羽達は傷の修復を受け持つとなった。


しかしベヒーモスはその巨体故、治るまでに時間が掛かるだろうとの意見に。

なので美羽はパーフェクションヒールで傷の深い場所を真っ先に治し、終わり次第両手両足の復元を。


火燐、翡翠、楓はそこそこ大きいまでの箇所。

雫は凍結や火傷等、状態異常の回復を行った。


2分程で完治し、凛がベヒーモスを保護したいとの一言に全員が承諾。

散策はここで終了となり、気を失ったベヒーモスに人化スキルを施し、全員で屋敷へ帰る事に。




帰宅後、凛達はダイニング横(階段下とも言う)に設けた休憩室へ向かい、ここまで火燐が抱き抱えて来たベヒーモスをベッドで休ませる。

ベヒーモスは30歳前後のがっしりとした体型となり、濃い灰色の髪を短く刈り上げた褐色肌の男性へと変化。

今は静かに寝息を立てている。


そこで解散となり、凛と美羽はホズミ商会へ。


到着した小部屋で待機していたダニエルとシルヴィアから、ポール達商国一行は案内と一緒にサルーンを回っているらしく、不在だと告げられた。

そして商業ギルドは今後ホズミ商会の傘下に入り、ホズミ商会から出された指示に従うと言った内容が記載された誓約書を差し出す。


誓約書は凛が用意したもので、内容に問題がなければ1番下の所にサインと判子を押すというもの。

誓約書には商国代表であるポールのサインと、国璽(こくじ)が押されてあった。


凛は早速チェックを行い、OKの意味を込め、笑顔で頷く。

先程からずっと緊張しっぱなしだったダニエルとシルヴィアは安堵の溜め息を吐き、ようやく肩の荷が下りたと漏らしつつ、(小部屋にあるソファーへ座り)軽い話から談笑へと移行。


そうこうしている内に商国の面々が戻ったとの連絡が入り、凛達はポール達がいる応接室へ向かう。

彼らは午前11時30分過ぎに一旦ホズミ商会を後にし、昼食以外の3時間近くを見て回った。


そんな短時間だけでも初めて見るものが多く、非常に感動したらしい。

目を輝かせ、興奮しながら話す姿はまるで童心に帰った様だった。


実はポール、サルーンから来た商人に今日は何を仕入れたのかと問い質す位、ホズミ商会へ興味を持ち、入れ込んでもいた。

ポッと出の新参商会に良いようにされたくなかったからだ。


購入した商品をバラし、或いはギルド員やその家族にテストさせる等して調べさせ、こちらでも作れないかと模索。

しかし碌な機材もないのに詳細が分かる訳もなく、幾ら試そうが毎回出るのは再現不可との答えのみ。


到底納得出来ず、実際に赴けば把握出来るものもあるのではと、こうして来た次第だ。(来るのが今頃になったのはこれが理由)


そしていざ来てみれば新しい商品だけでなく、形良し、大きさ良しと。

見るからに高品質な果物やお菓子まで置いてあった。(魔道具関連にのみ意識を向け、食品の類いは単純に見落としていただけなのだが)


従業員が持っていた皿の上にある試食品を口にし、その美味しさに目玉が飛び出そうになった程だ。

客が従業員へ群がり、次々に買っていくのも納得の結果だと言える。


しかし当然ながら、商国にこのレベルのものは存在しない。

確実に目玉と成り得る商品で、どうすればここまで美味しくなれるかを是非とも知りたいものの、こちらから尋ねたら負けを認めるのと同義。

それだと商業ギルドと言うブランドやプライドに傷を付け、国全体に迷惑を掛けてしまうとの理由から聞けずにいたのだと恥ずかしそうにする。


最後に、サルーンを全て回るには微妙な時間なので、今日は軽めに(ホズミ商会近辺だけ)

本格的に拝覧するのは明日の朝からだと凛達に話していた。




午後5時半頃


「あ"る"じざま"〜。」


屋敷に戻った凛を含め、皆で夕食の準備をしていると、藍火が泣きながら飛び着いて来た。


どうやらあれからずっと訓練と言う名の扱きを受けたらしく、全体的に汚れだったりぼろぼろなのが目立った。

ナビがそろそろ夕食の時間なので終える様にと報告を入れたのだが、それがなかった場合、このまま夜まで。


下手すると日を跨いだ後もぶっ続けで行っていた可能性すらある。


「妾としてはまだまだ続けてても良かった位じゃがの。美味い馳走の為、やむなく終えた次第じゃ。」


「絶対嫌っす!!もう懲り懲りっす!!」


「ほう?まだそれだけの口が叩けるだけの余力が残っておったか。」


「ひっ!?あああ主様助けてっす!!」


「まぁまぁ2人共落ち着いて。もう少しで準備が━━━」


凛は作業の手を止め、後ろに回り込んだ藍火の頭を撫でつつ、やんわりと説得に入る。

しかし途中で爆音が鳴り響き、その場にいた全員がビックリして辺りを見回す。


「すみません…今のは自分っす。」


音の発信源は藍火のお腹からだった。

顔を赤くし、可愛らしく手を挙げながら申し訳なさそうに名乗りを上げる。


そこで笑いが起き、ティアマットもすっかり毒気を抜かれたのか、釣られる様にしてからからと笑う。




午後6時


屋敷のダイニングにて、ティアマット等の今日新たに配下となった者達の歓迎。

それとサルーン独立記念感謝セールお疲れ様との労いを込め、宴が開かれた。


野菜や果物に関しては現在品種改良を重ねている最中。

牛乳も似た様な感じで、未だ魔銀級位の品質でしかない。


しかし肉に関しては死滅の森中層がメイン。

魚も漁業都市アゼルから遠く離れた場所にいた強力な魔物…つまりどちらも神輝金級の素材を。

卵は最近イーリス(虹の女神)に進化したトルテが産んだものを採用。


それらを最高の環境や技術で調理したのだから不味い訳がない。


『………。』


むしろ、あまりにも美味過ぎた様だ。


挨拶や会話もそこそこに、ほとんどの者がひたすら料理を掻き込む。

それこそ、火燐とティアマットを筆頭に、種族、年齢、性別問わずにと言った感じで。


例外は凛、美羽、翡翠、楓、紅葉、月夜、リーリア、翠、金花、銀花、シルヴィア、ダニエル。

トレントの男性2人に、調和スキルのおかげで発せられる香りが(ほの)かなフローラルになり、すっかりご機嫌となったラフレシアの女性。

サキュバスのプレシアにディシーバーズの闢と静、ティアマットの片腕であるアジ・ダハーカ位。


この19人はゆっくり、優雅に、しっかり味わい、幸せそうにと言った風にそれぞれ楽しんでいる。


それとニーナの娘であるナナやドワーフのルルの妹ロロナ。

梓と名付けられた、黄緑色の髪をゆるふわツインテールに纏めた8歳前後に見える、元ランドドラゴンの少女もだろうか。

ナナ達は美味しーね!なんて言い合いながら微笑ましく食べ、それを見た凛達はほっこり。


途中からルルが自信作!とアルコール類を出し、これに大人達が食い付いた事で騒がしさが一気に加速。

宴は深夜近くまで続けられた。


結局ベヒーモスは隣の休憩室でずっと眠ったまま。

最後まで顔を見せる事は一切なかったものの、皆笑顔でこの日を終えるのだった。

参考までに↓


ハーピークイーン(金級)→セイレーンクイーン(黒鉄級)→イーリス(神輝金級)


ベヒーモスの男性は旧ゆるじあと同じくハ○レンのス○ーみたいな見た目に。


それと前話のレッドマンドラゴラをヴァーミリオンマンドラゴラに変更します。

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