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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
都市同盟(アライアンス)
118/262

111話

「…どの様にして空を飛んでいるか気にはなるが、人間が一体何の用じゃ。何故ここにいる。」


声からしてメスと思われる先頭の黒いドラゴンが、凛達に問い掛ける。


『ドラゴンが喋った!?』


「2度は言わぬ。ここへ何しに来たのかを簡潔に述べよ。」


凛達は初めて見るタイプのドラゴンに目を白黒させ、彼女はそんな凛達を無視して再び問う。




凛達に話し掛けたドラゴンは全長60メートルを越す巨体。

他はほとんどが10〜40メートルで、50メートルクラスが3体。

100メートル近い個体も10体位おり、体の色は黒・灰・紫色のどれかで構成。


いずれも初めて見るドラゴンばかりだった。


凛は瞬時にとある魔物から得た『真実の()』を使い、ドラゴン達に視線を送る。

真実の瞳は所謂鑑定眼みたいな効果を持ち、本名・年齢・種族・対象が持つ才能や欠点、嘘かどうかが分かるスキル。

また変身の類いだったり、インビジブル等で姿を隠蔽しても看破する効果まで付いている。


鑑定の結果、1番小さい個体はダークドラゴン。

次いでダ()()スドラゴン、アビス(奈落)ドラゴン、ヴァイ()スドラゴンに、カオス(混沌)ドラゴン、シャドウドラゴン。


そしてズメイ、黒神龍ヴリトラ、ネザー(冥府)ドラゴン、滅神龍テュポーン。

冥神龍ハデスとヘル、ウシュムガル、悪神龍アジ・ダハーカの順で大きくなっていき、最も大きい個体がジャバウォックとなる。


どのドラゴンも数体から多いものは30近くいるものの、先頭で彼らを率いる邪神龍ティアマットは1体のみ。

それと彼女の親衛隊なのか、すぐ後ろの位置に悪神龍アジ・ダハーカ、冥神龍ハデスとヘルが1体ずつ。


その周りを、ウシュムガル達や滅神龍テュポーン達が付き従う。


因みに、カオスドラゴンと悪神龍アジ・ダハーカが2つ、ズメイは3つの頭を所持。

滅神龍テュポーンは体の上半身部分が人間の男女っぽい見た目となっている。




「…逆にお伺いします。この先へは何しに行かれるのでしょうか。」


「質問を質問で返すとはの…まぁ良い、答えてやるとしよう。昨日、神聖なる木が生えたじゃろ。」


「神聖なる木?」


「天高く(そび)え、神々しさを纏った木の事じゃ。お主からも同じ(オーラ)を感じる。身に覚えがないとは言わせぬぞ?」


「天高く聳える…?うちにそんな木なんて…あ!世界樹の事か!」


翠は進化したばかりであの高さだったが、今後も成長する可能性は大いにある。

実際、過去にあった世界樹達の中には、雲を突き抜ける程に高くなったものも存在。


凛と話す黒龍の口から出た木と言うのは、当時の世界樹の事を差すのだろう。


「左様。あれは妾達にとって害にしかならぬ。故に滅ぼしに来たのじゃ。」


「…その割には過剰戦力過ぎやしませんか?」


「本来ならば妾だけで十分なのじゃが…皆も付いて行きたいと五月蝿くての。ついでだから若い者達も見せる事にしたのじゃ。」


「成程。何故世界樹がないのかずっと疑問に思ってたのですが、貴方が原因でしたか。しかも今回が初めてじゃない。」


「ほう。人間にしては察しが良いの。主の言う通り、既に4回世界樹を焼いておる。これから向かうのが5回目になる訳じゃな。」


「そうでしたか。ともあれ、貴方達をこの先へは行かせられません。出来ればこのままお帰り頂けるとありがたいのですが…。」


「それは出来ぬ。あれは滅ぼすと決めておるのでな。そのままにするなぞ(もっ)ての(ほか)じゃ。」


「どうあっても戻る気はないと?」


「知れた事を。頭の良いお主の事じゃ、妾が何を言いたいか分かっておるのじゃろう?」


「ですね。なら、僕達はそれを止めるまでです。」


「よう言うた!ならば妾達を止めてみせい!」


そう言って、邪神龍ティアマットはバサッと翼を広げる。


「うわぁっ!!」


翼をはためかせ、引き起こした黒い竜巻で凛を彼方へと吹き飛ばし、彼の後を追う。


「マスター!!」

「凛っ!!」

「凛…!」

「凛くん!」

「凛君…!」


それに気付いた美羽達が続こうとするも、悪神龍アジ・ダハーカ達に遮られてしまう。


「どいて!今は貴方達の相手をしている場合じゃないの!」


「言っても無駄だ。それより早くこいつらを蹴散らすぞ!」


『分かった!』


美羽達は武器を構え、ドラゴンの群れへと向かって行く。




そこから2キロ程離れた場所にて。


「…はぁっ!」


凛は全身に力を込め、内側から黒い竜巻を霧散。

追い付いたティアマットと再び対峙する形となった。


「やるではないか。よもや力尽くてそれ(黒い竜巻)を突破するとはのぉ…。」


「結構苦労しましたけどね。まさか、1つの攻撃に色んな効果を乗せるなんて思わなかったからビックリしましたよ。」


ティアマットが放った黒い竜巻、ただの黒いだけの竜巻かと思いきや。

魔力阻害に魔力吸収、身体機能低下、腐蝕、麻痺、毒と言った、バッドステータスやデバフが詰め込まれていた。


しかも力強い漆黒ボディーに反して術者タイプらしく、凛ですら解除するのに手間取る程。

これが彼以外が相手だった場合、下手すると今のだけで戦闘不能になる可能性も。


「分かってはいましたがやはりお強いですねー。」


「…お主も大概じゃがの。」


今の攻撃はティアマットが長年の研鑽の果てに生み出し、また彼女にとってそれなりに自信を持っていたもの。

故に内心穏やかではいられず、凛に対する警戒心を1段階上げる。


しかしにこにこと屈託なく笑う彼を悪く思える訳もなく、呆れた顔を向けるだけに留まった。


「じゃがそうでなくてはの。折角の機会じゃ、存分に楽しませて貰うぞ!」


ティアマットは一吼(ひとほ)えし、黒いブレスを吐く。

そしてぐぐっと身を縮こませ、真っ直ぐ突っ込んだ。


対する凛はビットの3点結界を前面に展開し、身の丈以上のそれを無効化。

続けて、結界が体当たりで割れたのを確認。

後方へ跳躍し、勢いを()ぎつつティアマットの爪攻撃を防いでみせる。


「やるではないか!」


「そちらこそ!」


一旦距離を取り、何度か空中でぶつかった後つばぜり合いの状態に。


以降、凛は刀術や体術、ティアマットはブレスや魔法を主体に、時折爪や尻尾攻撃を交えた激しい空中戦を繰り広げる様になる。

それに見合った音や衝撃、同じだけの被害を周辺へ撒き散らし、森は悲惨な攻撃へと変わっていく。




その頃、美羽達はドラゴン達に苦戦していた。

ただ苦戦と言っても5人の誰かが重傷を負う等ではなく、むしろ無傷。

だがいくら彼女達でも、自分に近いか、少し下位の強さ…それも複数が同時に相手だと厳しい様だ。


「ちっ、幾ら削ろうがすぐに再生しやがる。埒が明かねぇ…!」


「ムカつく…。」


火燐が13体のウシュムガル。

雫が冥神龍ハデスとヘルに12体のネザードラゴン。


「あーん、もう!攻撃しようとする度に邪魔ばっかり!全然集中出来ないよーーー!」


「手強いです…!」


翡翠は黒神龍ヴリトラが18体。

楓はヴリトラ、ウシュムガル、ネザー、ズメイ、テュポーンがそれぞれ3〜4体ずつで混成された部隊。


「くっ、早くマスターの所へ行かなきゃなのに…!」


そして美羽が悪神龍アジ・ダハーカに、滅神龍テュポーンとズメイが7体ずつ。

更に、凛が吹き飛ばされた直後にナビが呼び寄せたアルファ達は、2人でジャバウォック1体と言う割合で戦っていた。


アルファ達はグランドモードで大きくなっているとは言え、美羽より弱い火燐達に劣る。

なので、実は2対1でも不利な状況だったりする。


また、100メートル級のジャバウォックとの体格差は5倍以上ある(美羽達に至っては更にその10倍程)

普段の彼女達なら全く問題ないが、強者が相手となれば話は別。

慎重にならざるを得なくなり、どうしても膠着状態に陥ってしまう。


そんな彼女達の周りをダーク、ダークネス、アビス、ヴァイス、シャドウドラゴン。

そして戦闘に参加していないヴリトラ、ウシュムガル、ネザードラゴン、テュポーン、ズメイ達が囲む。


彼らは現在傍観に徹しており、いつでも戦闘に参加出来る状態にある。

つまり美羽達は誰もが多対一のシチュエーションで、今以上に増える可能性が。

常に周りの様子に気を配り、中々攻撃の隙を与えて貰えないでいる。


それに加え、相手も修羅場を潜って来たのだろう。

巨体な見た目に反して素早く、しかも何故か攻撃を一切せず、防御や回避に専念している。


しかもダメージを受ける度にその場から引き、仲間のドラゴンに癒やして貰う等して体調を整える。

再び戦線に戻り、美羽達の攻撃を避ける防ぐを繰り返す為、(いたずら)に時間だけが過ぎていった。




30分後


(やべぇな…今のオレらじゃ削り切れそうにねぇ。頼みの綱の美羽もあんなんだしどうしたもんかね)


火燐が気まずそうに美羽を見る。


彼女の視線の先にいる美羽はシールドソードビットを総動員し、アジ・ダハーカへ攻撃している最中。

しかしアジ・ダハーカ自身が展開し、3体のテュポーンで強化された障壁により阻まれ、ムキになりながら挑んでいる最中でもある。


これが幾度となく繰り返された光景。

この場の最高戦力である美羽がアジ・ダハーカ達に完封され、それは火燐達も同じ。


火燐達は戦っている内にアジ・ダハーカ達が時間稼ぎをしている事に気付き、戦いをしに来たのではないと悟り、戦意を喪失。

しかし凛が心配で堪らない美羽はいても立ってもいられず、彼女だけがこうして今も戦っている。


「ただいまー。」


そこへ凛がティアマットを伴った状態で転移して来た。


「マスター!?」


美羽は驚きの後に凛へ飛び寄り、「大丈夫だった!?酷い事されてない!?」と叫びながら凛の体をベタベタと触る。


「見ての通り無事だよ。」


「良かったー…。」


美羽は安堵の表情を浮かべ、


「それで、何の為にこんな事をしたの!!」


ティアマットをキッと睨み、彼女へ食って掛かってみせた。


「済まぬ…もう凛の相手は()()りじゃ…。2度とこの様な真似はせぬと誓おうぞ…。」


ティアマットは先程と違い、見るからに覇気がなく、ショボショボとしていた。


これに、凛以外の全員が目をぱちくりし、ドラゴン達も顎が外れそうになる位に口をあんぐりとさせるのだった。

参考までに↓


ブラック→ダーク→ダークネス→黒神龍ヴリトラ(神輝金級中位)またはウシュムガル(神輝金級上位)


ダーク→アビス→ネザー(神輝金級中位)または冥神龍ハデスorヘル(神輝金級上位)


ダーク→ヴァイス→滅神龍テュポーン(神輝金級上位)または邪神龍ティアマット(神輝金級最上位)


ダーク→シャドウ→ジャバウォック(神輝金級上位)


ダーク→カオス→ズメイ(神輝金級中位)または悪神龍アジ・ダハーカ(神輝金級上位)


同じ上位でもアジ・ダハーカ、ハデスとヘル、ジャバウォック、テュポーン、ウシュムガルの順で強く、ジャバウォックは本能で暴れ回る様なイメージ。


進化当時は上記の強さで、現在は凛達みたく枠組みから外れた状態ですね。

それで過ごした年数が多かった為に美羽達と渡り合えると言った感じで。


ティアマットとテュポーンの何割かが術者で、後は斥候・戦士・魔法戦士・重戦士みたいな感じで思って頂ければ。

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