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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
辺境都市サルーンとそれを取り巻く者達

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97話 30日目

30日目


午前9時半頃


凛は連絡を受け、サルーンにあるホズミ商会本部(仮)へと向かう。


そのまま応接室に入ると、仕事着の紅葉と暁がライアンと何やら言い争っている様だった。

紅葉と暁は眉間に(しわ)を寄せる等、不機嫌さを露にする。

それに対し、ライアンは軽薄そうな笑みを浮かべ、柳に風とばかりに受け流すだけ。


間違っても友好的とは言えない雰囲気だった。


「凛様、お手を(わずら)わせてしまい申し訳ありません。」


すると、ダニエルがやや申し訳なさそうにしながら凛を出迎えた。




ダニエルは凛の協力もあり、昨日で商業ギルドの引き継ぎ作業を無事に終え、本日付けで正式に凛の配下へ。

(かね)てより決まっていたホズミ商会代表に就き、先程営業開始前に挨拶を済ませ、新たな気持ちで仕事に臨んだ。


しかし営業を開始して1時間が経った頃、ライアンが登場。

彼は飄々(ひょうひょう)とした態度で受付の女性に声を掛け、代表を出すよう指示。


ライアンはダニエルが来るまでの間、ひたすら女性を口説き続けた。

そしてダニエルが来たら来たで(男性との意味で)露骨にがっかりし、今度は紅葉か凛か暁がこの街にいるはずだから連れて来る様にと表情を変えずに告げる。


ダニエルはこれを断るも、ライアンは自分が王国で唯一の黒鉄級である事を強調。

ダニエルに圧力を掛けた。


ダニエルにとって、ライアンは取るに足らない相手ではあるのだが、周り()から()の目がある。

なので強く言えず、応接室へ案内し、紅葉達が来るまでライアンを(もてな)す羽目に。


ライアンはダニエルに目もくれず、受付時に応対し、案内役として一緒に来た女性にばかり声を掛ける。

女性は元奴隷で、教育係(丞達)から合格を得て配属されたエリート。

静かに、かつ最低限だけを答えて時間を過ごした。


そうこうしている内に、やや焦った様子の紅葉と暁がやって来た。

紅葉はダニエルにペコペコと頭を下げ、暁も軽く困った様子で謝るのだが、ライアンはお構いなしとばかりに紅葉へ声を掛ける。


これに頭に来た紅葉達はライアンへ追及し始め、今に至るとの事。




「ダニエルさん、災難でしたね。」


凛は苦笑いで応える。

ここへ来るまでにナビから事情を聞き、少ない言葉ながら同情の意を示しているのだろう。


「まさか、出勤初日。しかも営業が始まってすぐこの様な結果になるとは…出来れば明日以降にして欲しかったと言うのが本音ですね。」


ダニエルは嘆息し、困った表情をライアン達に向ける。


「…!おや、そこにいるのは凛君じゃないか!」


「「…!」」


ライアンは凛の存在に気付いた様だ。

(覗き込む体勢での)彼の言葉に紅葉と暁が反応し、紅葉だけがこちらを向く。


続けて、凛の隣へ視線を移した。


「な…なんて美少女だ!」


そして美羽のあまりの可愛さに、ライアンは目を見開いて驚いた。


美羽は凛に次いで見た目が良く、それに付随して人気も2番目に高い。

なので、ライアンが目を奪われるのもある意味で仕方ないと言える。


「凛君が実は男と聞いて落ち込んだけど…ここへ来た甲斐はあった!」


そして、ライアンの好み的にドストライクだったらしい。

感極まった様子となり、最後に目を赤く光らせた状態で再び美羽を見る。


そう、彼は喜んだ弾み…つまり本人も無意識にでとは言え、魅了の魔眼を発動させてしまった。


「な、何…?急にどうしたんだい?」


直後、暁の手により、顔面を鷲掴(わしづか)みにされる。

これにライアンは何事かと体を強張らせ、訳が分からないまま声を震わせて尋ねる。


「急にどうした?それはこちらのセリフだ。お前今…美羽様を魅了しようとしたな?」


「い、いや。それは違━━━」


「…暁、それは真ですか?」


「はい。(ライアンが)美羽様に向けた目は紛れもなく赤いものでした。」


「だから違う━━━」


「成程。これは…キツいお灸を()える必要がありそうですね。凛様、申し訳ございません。少しだけ席を外させて頂きますね。」


「あ、うん。分かった。」


あまりやり過ぎないでね、との凛の言葉に紅葉は頷き、その場でポータルを設置。

泣き喚くライアンを他所に、応接室を後にした。


それから5分後に3人が戻り、ライアン1人だけがボロボロに。

特に何度も殴られたのか顔面が酷い事になっており、イケメンだったのが今では見る影もない。




その後、凛はライアンの傷を治し、ここへ来た理由を尋ねた。


ライアンによると、王都は現在、凛や紅葉達が齎した食料品や素材でごった返してる状態なのだそうだ。

そして、()()()命令を受け、ライアンは王都を出発。


そこから急いでサルーンへ向かい、今から1時間程前に到着したとか。

逆に、最近変わった人が来なかったかと尋ね返され、凛が首を左右に振ってがっかりした程だ。


また、ライアンは口にこそしなかったが、紅葉達が王都へ来た次の日に発つ形となった。

命令を授かった場所は王城で、彼と入れ替わる様にしてゴーガンとオズワルドが招集。


そこで王達やそれを取り巻く貴族達。

更に、王国のグランド(冒険者)ギルドマスター(組合総長)であり、昔馴染みでもあるハンナを始めとする冒険者ギルド本部。

それと商業ギルド本部から、ベヒーモスやフォレストドラゴンに、先日届けられた食料品や日用雑貨や魔道具。

そしてライアン程の手練れを一蹴する者達についての追及を受ける羽目に。


「ライアンさん…転生者だったんですね。」


ライアンは転生者だったらしい。


「僕は凛君が日本人じゃないかって、初めて会った時から何となく分かってたよ。」


リルアースでの日本人に近い顔立ち…それは紅葉達鬼人族だけを差す。

他はアジアやヨーロッパだったりで全て異なり、だからこそ余計に凛は目立つ。


「とは言え、流石にレストランがサルーンにあるとは思わなかったけどね。」


ライアンは生前がイタリア人。

彼の陽気さ、初対面だろうが全く人怖じせず、つい先程ぼっこぼこにされたばかりなのにめげない性格はここから来ているのかも知れない。


サルーンへ到着後、ライアンは中の様子を見て周り、大衆()向け()の安()いレ()スト()ラン()を発見。

中へ入り、メニューの豊富さと懐かしさを感じる雰囲気や味に感動を覚え、上機嫌のままホズミ商会を訪ねたとか。


「聞くところによると、高級なレストラン(リストランテ)もあるんだって?」


「ですね。そことはちょっと違いますが、紅葉達は高級和食店で働いてます。」


「和食…紅葉ちゃんが前と違う服装なのはそれが理由か…。」


本来、紅葉は今の時間仕事中だ。

なので和服の上半身を(たすき)で縛り、白い三角巾を(かぶ)っている状態。


ライアンは現在までそれを心のどこかで不思議に思い、しかし凛の言葉で納得したのか改めて紅葉に視線を向ける。




そこから話が弾み、一行は商店へ向かう事となった。

凛達は慣れた様子で店内へ入るのだが、今回でサルーンが初体験となるライアンは商店も勿論初めて。


加えて、店内に並ぶのは地球にいた時に見掛けた事があるものばかり。

感動も一入らしく、入ってすぐの所で立ち尽くしてしまった。


「ちょっとそこのあんた!いい加減そこをどきな!邪魔だよ!!」


それがいけなかったのだろう。

後から入店し、しばらくたっても動かない事に焦れた恰幅(かっぷく)の良いおばちゃんが、そう叫びながら腰で思いっきりライアンを弾き飛ばした。


ライアンは冗談(アニメ)みたいな速度で飛んで行き、壁に激突。

商店は防犯の意味も込め、かなり頑丈な造りに。

しかも頭から突っ込む形となり、あわや大惨事に…かと思いきや。


直撃の時にんぎっ!と漏らし、そこからぐえっ!と言いながら床に叩き付けられ、気絶するだけで終わった。

通常なら頭か首をやってしまいそうな所なのだが、今回は彼が持つスキルに助けられる形となる。


彼はインキュバスとして新たに生を受けた際、『九死に一生』と言うユニークスキルを得ている。

これは10日に1回に限り、死にそうになるダメージをなかった事にすると言うもので、ライアンはこれで1回目の衝突を凌いだ様だ。


しかし続けざまに受けた2回目も打ち所が悪く、そのまま気絶するに至るのがなんともライアンらしい。




当のおばちゃんは何食わぬ顔でババババッと商品を掻き集め、すぐに買い物カゴ2つ…それも満杯状態のものをレジに持って来た。


まるで大阪のおばちゃんを見てるみたいだ。

凛はそんな事を思いながらおばちゃんを眺め、向こうも気付いたのか手を振る等のリアクションを取る。


そのおばちゃんは、凛によって最初にリニューアルされた宿の女将。

そして凛が商会を立ち上げた際、真っ先に名乗りを上げた人物でもある。


今ではそれなりに仲良くなり、凛自ら料理の手解(てほど)きをした事も何度か。

おかげでサルーンで最も有名な宿となり、今回はその買い出しに来たと思われる。


調味料だったり、アップルやオレンジと言った1リットル紙パック飲料等が買い物カゴの中に入ってるのが窺えた。




《マスターにお客様です。何でも、同じ故郷かも知れない方と仰る方がお目見えになられました。》


すると、今度はベータ(2番機)からその様な報告が届いた。


彼女はこれまで、ホズミ商会代表(仮)の座に就いて貰っていた。


しかしダニエルが正式に代表へ就任し、彼のサポートへ変更。

それに伴い、服装もメイド服からスーツ姿へチェンジ。


その影響からか、既に凄腕美人秘書として有名になり始めている。


「『!! 分かった、すぐ行く。ベータはそのままその人の相手をお願い。』」


《畏まりました。》


凛は美羽を連れ、再び応接室に向かう。


「お待たせ致しました。」


「いえ、全然待ってないので大丈夫です。」


首を左右に振った後ににこりと笑って答えるのは、1人の少女だった。


その少女は年の頃が16歳位。

黒いショートヘアーで同じ色の耳と尻尾を生やし、汚れた白いワンピースを着用する少し小柄な猫獣人。


それと、何故か不思議と日本人の顔立ちの様にも見える。


「僕はステラって言います…成程、思った以上に…いえ、凄くお若いんですね。それと、()()()()日本人だった。」


「え…?」


ステラの頭を上げた後に出た言葉に、凛は目を丸くするのだった。

ライアンが実は転生者だった点も驚きは驚きですが、今回の場合は猫耳少女が凛の運命の人扱いになります。

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