九十八話 やけクソ
※かなりグロテスク成分が多めです・・・。
話の展開上、こうなってしまいました・・・気分を悪くされたらすみません・・・
テレナシアが登場してから、部屋は先ほどの騒がしい雰囲気を完全に失ってしまっていた。
そんな静寂仕切った空間にいるからだろうか。
心臓の鼓動が鼓膜を通して聞こえている気がした。
バルカンの心臓の鼓動はいつもよりも大きく、そして力強く脈を打っている。
それだけじゃない。
脈打つ間隔が一定ではなく、不規則になっていた。
無論、原因は把握している。
それは紛れもなく、テレナシアがバルカンの前に現れたことだ。
バルカンの中では、テレナシアが大賢者だと仮説を立てているわけで、その大賢者が龍王の前に姿を見せたということは、悲劇がこれから始まろうとしているということ。
それはいつしかの絵本の中で描かれていた内容だったためにバルカンだけがこの先の未来を知っている。
恐らく、他の龍王や老竜人はテレナシアの正体を知らないのだろう。
でなければ、大賢者からなどの依頼を受けるはずないのだから。
バルカンは必死になってテレナシアの正体をここにいる龍王、老竜人に明かそうとした。
「こ、こいつは・・・っ!!!」
だが、やはり「呪い」がそれを許さなかった。
全てを打ち明けようとしたバルカンに、心臓を握り潰すかのような激痛が体中を走った。
痛い・・・っ!!!!イタイイタイイタイイタイ・・・っ!!!
体全体に力が入らなくなるような痛みに耐えられることなく、膝をついていたバルカンはそのまま倒れ込んだ。
バルカンが何かを言いかけていたわけもあり、皆の意識はバルカンの方へと注がれていた。
そのおかげでバルカンの異変にいち早く気が付いたメネツェアが、
「おい!バルカン!どうしたんだ!!!おい!」
「バルカン!どうしたんですか!聞こえますか!」
ベクトがバルカンに意識確認をするも、激痛に耐えるバルカンはベクトに返答する余裕なんてなかった。
ちくしょう・・っ!!!なんでこんな思いしなきゃいけないんだ・・・っ!!!
涙目ながらもテレナシアの方を睨みつけると、彼女はバルカンの様子を窺い、口角を上げて笑っていた。
声に出すこともないせいで、誰もテレナシアの方を見向きもしない。
全ての意識が未だバルカンに向けられているのだから。
誰か・・・っ!!!誰でもいいから・・・っ!!!!奴の方を向けよ・・・っ!!!!!
そう口から言葉を出したいが、痛みに耐えるのに精一杯でなかなか言葉に出すことができない。
このままでは、何もかも後世にまで語り継がれてきた歴史通りになってしまう。
バルカンは痛みに耐えながらもそんなことを考えていた。
クソ・・・っ!こうなったらやけクソだ・・・っ!!!!
バルカンは痛みに耐えるように、自身の唇を思い切り噛みちぎった後に、自身の右腕を竜人自慢の爪で切り裂いた。
口からも腕からも流血がかなり酷い状態。
そんな姿を見た龍王や老竜人が止めに入ろうとするのは当たり前の話だった。
「おまえ!!!何やってんだ!!!いくら「根性」があるからってやり過ぎだ!!!」
「バルカン!一体どうしたんだ!!!一旦落ち着け!!!」
「バ、バルカンさん・・・っ!!!これ以上はダメです・・・っ!!!」
「バルカン。どうか落ち着きなさい!」
皆が必死に止めに入るも、バルカンは自分自身を傷つけることをやめない。
やめてしまえば、激痛に耐えることなどできないのだから。
そして、ようやく体中に走る激痛を凌ぐまでに達したところで、その光景を見て助けもしないテレナシアに、バルカンは血だらけの人差し指を彼女に指した。
「こいつはな・・・っ!!!こいつは・・・・っ!!!!!」
バルカンが彼女の正体を公にぶちまけようとした時だった。
体中に走る激痛の他に、さらなる痛みが体の底から沸騰するように上へ上へと舞い上がってくる。
それが顔に行き届いた時には、
ゴホ・・・っ!!!
口の中から何かが出てきそうになったバルカンは必死に手を口に抑えた。
その口から出てきたものは一体何なのか。
バルカンは口から何が出てきたのか理解できていなかった。
それもそのはず、口から手を離すとそこには嘔吐物でも内臓でもない、ただ血だらけの自分の手しかなかったからだ。
今の不快感の正体が知れずまま、第二波が容赦なくバルカンを襲う。
ゴホ・・・っ!!!!
前兆がなかったせいで手を抑えることができず、そのまま部屋の床へと吐き出してしまう。
その一瞬の気の緩みで、とうとう痛みに耐えることができなくなったバルカンは、四つん這いになったまま正体不明の内容物を吐き続けた。
ゴホ・・っ!!!ゴホゴホ・・・っ!!!!ゴホ・・・っ!!!
気道から呼吸をする生き物は気道に何かが詰まると呼吸ができなくなってしまう。
どうやら、竜人も気道から呼吸をする生き物のようだった。
謎の物体が気道を通じて外へ吐き出されるため、呼吸がなかなかできない。
バルカンは目を必死につむり、溢れ出る謎の物体を出なくなるまで吐き続けた。
ゴホ・・っ!!!ゴホゴホ・・・っ!!!!
そしてようやく全てを出し切り、体中の痛みだけが残ったバルカンは薄っすらと目を開いた。
すると目の前には血で埋め尽くされていた自分の両手があり、その血は外気に触れてる時間が短かったせいか、少し温もりを持っている。
まさか・・・これか・・・っ!!!
バルカンはようやく自分の吐き出していた物体の正体を認識した。
最初の激痛に耐えるために血を流し過ぎてしまったせいで、口から吐き出される物体を認識しづらかったのだ。
血を流し過ぎてしまったせいか、頭がクラクラする。
誰かが必死にバルカンのことを呼び掛けているも、何を言っているのかわからない。
早く・・・っ!!!早くしないと・・・っ!!!!みんな殺されてしまう・・・っ!!!!俺が・・・・・っ!!!!俺が何とかしないと・・・・・っ!!!!!!
痛みに耐えながらバルカンはその場から立とうとするが、視界が歪んでいてなかなか立つことができない。
情けねえ・・・っ!!!しっかりしろよ!俺・・・っ!!!
バルカンは頭の額を床に叩きつけ、クラクラする視界を正常に戻そうとする。
だが、頭から血が流れるだけであって、状況の改善にはならなかった。
バルカンは揺れる世界を目の前にしながらも、必死にその両足で立とうとし、ようやく立つことに成功した頃には第三波が容赦なく襲い掛かる。
その第三波はこれまでとは違い、口だけでなく目元からも血が噴き出てきた。
そして、
ブゴホ・・・・っ!!!!!!
血が噴水のように飛び出た瞬間に、バルカンの意識はどこか遠くの方へと消えていき、何にも支えられることなくバルカンはその場に倒れ込んだのだった。
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ここは・・・?どこだ・・・・?
ようやく目を覚ましたバルカンは見知らぬベッドの上にいた。
周りをよく見渡しても全く身の覚えのない場所。
シャンデリアが付いている天井に、カーテンのついたベッド。
どうやら誰かの部屋に運び込まれたのだろう。
そういえば・・・俺の体は・・・・?
あれほどの血を流していたのだ。
大量の包帯で巻かれているのは覚悟の上だった。
しかし、現実はそんな覚悟とはかなりかけ離れていた。
バルカンの体は、包帯一つ巻かれてはいなかったのだ。
それどころか、痛みすら感じない。
あれほどの激痛が走っておきながら、痛みを全く感じないのはかなりおかしかった。
だが、いくら自分の体を確認しようと傷跡などは一切ないし、痛みすら感じない。
一体・・・どうなってんだ・・・?
困惑するバルカンの部屋にノックが律義にされ、姿を現したのは一人の女の子だった。
この子は・・・あの時の・・・
その顔に見覚えがあった。
黒髪の伸ばしかけヘアに花飾りのついたカチューシャ。
どう見ても、先ほどまであの部屋にいた女の子だった。
女の子は気弱そうな声で、
「あ、あの・・・大丈夫ですか・・・?」
「あ、ああ。俺なら大丈夫だ。えーっと、ゼクスシードさん・・・だったっけ?君が俺を?」
するとゼクスシードは目を閉じて小さくコクリと頷いた。
「そうか・・・迷惑をかけちゃったな・・・・」
「いや・・・そんなこと・・・ない・・・・」
「いや、どう考えても迷惑でしょ・・・。こうやってわざわざ様子を見に来てもらっちゃったし・・・それとも何か俺に用事でもあった?」
ゼクスシードがここへ来たのは恐らくバルカンの様子を見に来ただけだと思うが、バルカンは念のため彼女に尋ねた。
するとゼクスシードはどこか居心地が悪そうな身振りで、
「そ、それも・・・あるんですけど・・・・」
「けど・・・・?」
「えっと・・・その・・・」
急に顔を赤らめ、引き続きモジモジするゼクスシードの考えを汲み取ることができない。
下手な事を言うわけにもいかないし、バルカンは自然と彼女の口から出るのを待つことに。
ゼクスシードの気弱さは相当なもので、話したいことを話すのに十分はかかった。
そして、ようやく話す気になったゼクスシードは思い詰めた表情でこう告げた。
「わ、私のパートナーになってください!!!!」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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これからも読者の皆様に楽しんでもらえるよう、執筆の方頑張っていきたいと思います!
今後とも「六宝剣の落ちこぼれ異端者」をよろしくお願いします!




