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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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七十話 再会と決意

 ヘカベルの強奪に成功した暗黒騎士達は、次のステップへと移行を開始していた。

 まず初めに暗黒騎士達が始めたことは引っ越し作業だった。

 引っ越しと言ってもそこまで大掛かりなものではなく、持ってくるべきものとそうではないものを分別して、必要最小限のものを魔界からヘカベルに持ってくるといったものだった。

 さすがに全員で魔界に戻って、引っ越し作業をするわけにはいかなかった。

 ヘカベルの元国王を含めた国民と兵士が暗黒騎士から背く可能性があったからだ。

 暗黒騎士達は話し合った結果、魔界に戻るのは二人だけと取り決めた。

 さて、そしたら誰が魔界に戻るのか。

 壮大な話し合いになるかと思いきや、帰還する暗黒騎士はすぐに決まった。

 一人目はゼランだった。

 個人の評価ではないが、暗黒騎士の中で二番目の実力とされている。

 それに、もし魔界で何かしらのアクシデントがあったら、彼の頭脳明晰は必要となる。

 そして二人目はエルフミーラだった。

 暗黒騎士の中でも力は劣る方だが、メイシアやヘルバトスと面識がある。

 もし仮にエルフミーラ以外の暗黒騎士が赴いたら、怖がって引っ越し作業ではなくなるだろう。

 サタルドスの代わりと言っては何だが、二人は恐らくエルフミーラの指示に従ってくれる。

 そう信じた二人の暗黒騎士を除いた三人が二人を推薦した。

 さて、引っ越し作業のメンバーはこれで良いとして、次に問題なのは・・・


 「俺がいない間に誰が指揮をとるかだ」


 残る暗黒騎士はジェールナ、サキュラバーニ、グウィルドの三人だった。

 グウィルドは暗黒騎士の中でもビビりで、決して弱くはないのだが、指示を出せる立場ではなかった。

 もし戦闘中に腰でも抜かされたらたまったものじゃない。

 そしてサキュラバーニも指揮官には向いていない。

 さっきだって元国王に「操り人形」のスキルを使用した時にも情をかけようとしていた。

 戦闘中に情なんてかけられたら全滅は免れない。

 消去法だが、彼女に頼るしかなかった。


 「ジェールナ、頼めるか?」

 「任せておいて」


 自身の胸に拳を打ち付けるジェールナ。

 ジェールナは見た目が子供っぽいが、グウィルドやサキュラバーニとは違い、冷静な状況判断ができる。

 この三人の中だったら、ジェールナが一番の適任者だろう。


 まあ、いざとなったら助け合って何とかするだろう・・・・


 ゼランとエルフミーラは三人をヘカベルに残して魔界へと戻っていった。


 

 魔界――――――――


 ヘカベルを移動し、魔界に辿り着いたゼランとエルフミーラはさっそく客室にいるヘルバトスとごんちゃんと一緒に居るメイシアの元へと急いで向かった。

 まず最初に向かったのはヘルバトスの元だった。

 ゼランが客室の扉を開けると、ヘルバトスが姿勢を正して大人しく座っていた。


 「ヘルバトス?そんなに姿勢を正さなくてもいいんだよ?」

 

 エルフミーラが優しく話しかけると、ヘルバトスは緊張した様子で、


 「だ、大丈夫です・・・」


 それだけ言い、まただんまりしてしまう。

 まだ関係が浅いせいで警戒心が解けていないのがわかった。

 そんな浅い関係を無視するかのようにゼランは、


 「ヘルバトスっと言ったな?今からお兄さんたちとヘカベルに戻ろう?」

 「ヘカベル・・・?」


 ヘカベルというその単語を聞いた途端にヘルバトスは震えだした。

 無理もないだろう。

 ヘカベルにはろくな思い出がないのだから。

 そんな彼の病んだ心を癒す様にエルフミーラは暖かい笑顔で、


 「もう大丈夫だよ?ヘカベルは私達の物になったんだよ?」

 「え・・・」

 「そうだぞ。ヘルバトスに何かあれば俺達が必ず守ってやるから」


 ゼランのその言葉に何か違和感を感じ取ったのか、ヘルバトスは不思議そうな顔をしていた。

 恐らくヘルバトスが言いたいことはサタルドスのことだろうと二人は直感した。

 意思を読み取らなくても誰でもわかる簡単なことだった。

 ヘルバトスの拠り所はサタルドスただ一人なのだから。

 そして、その勘も見事に的中してしまうのが世の掟だった。


 「お兄ちゃんは・・・?」


 その寂しげな表情に二人は黙り込んでしまう。

 誰だってそんな表情をされたら言いたいことも素直に言えなくなってしまう。

 だが、いつかは本当のことを言はなければならない。

 ゼランもエルフミーラもそのことは分かっていた。

 だが・・・


 「お兄ちゃんはどこ・・・?」


 黙秘し続けることに罪悪感を覚えたゼランが、


 「もう一人の子と合流したら全てのことを話す。だから俺達についてきてくれないか?」


 ゼランがそう言うと、ヘルバトスはコクンと頷き、席から離れた。

 そして案内がされるままゼランとエルフミーラについて行き、それから数分後にもう一人のサタルドスの仲間の元へとたどり着いた。

 エルフミーラが扉を開けようとするが、扉が重たくてなかなか開かなかった。

 故障を最初は疑ったが、そうではないとエルフミーラ自身気が付いていた。

 エルフミーラは恐れていたのだ。

 パパと慕っていたメイシアの笑顔が崩れるのが。

 震える手を必死に抑えようとするが、なかなか止まない。


 どうして・・・・・!どうして!


 そんなエルフミーラを見ていたゼランが、エルフミーラが何を考えているのかを全て悟った。

 ゼランはエルフミーラに身を引くように命じ、そして扉を開いた。

 その日は珍しくモンスターが大人しくしていた。

 そんな静寂の中、一人の可愛げの少女の声だけが響き渡った。


 「あ!ママ!」


 こちらに気が付いたメイシアが籠越しに手を伸ばしてくる。

 そんな可愛らしいメイシアに真実を告げるとなると心が痛む。

 ゼランが籠の扉を開けると、メイシアがエルフミーラの元に一直線に向かって抱きついてくる。

 

 こんな無垢なメイシアにサタルドスのことを言えるわけがない・・・


 エルフミーラは悟られぬようにとメイシアの頭を優しく撫で続ける。

 メイシアは気持ちよさそうな顔をしていた。


 「あ・・・あの・・・」

 「ん?なんだ?ヘルバトス?」

 「この子は・・・?」


 不思議そうな顔をして聞くヘルバトス。

 そんなヘルバトスにゼランは、


 「サタルドスの仲間であり娘という設定のメイシアだ」

 「サタルドスの娘で、エルフミーラさんのことをママって呼ぶってことは・・・」


 ヘルバトスのその先の言葉は誰にでも容易に思いつく内容だった。

 だからこそ、エルフミーラは誰よりも先にヘルバトスに伝えた。


 「ちがうの。この子は私に懐いててそう呼んでるだけ」

 「そうなんですか?」

 「ママはね!ママなの!」

 「えっと・・・・」


 ヘルバトスの方を向いて主張するメイシア。

 ヘルバトスの頭の中は複雑に情報が絡まっていた。

 そんなヘルバトスとメイシアの様子を見ていたゼランがエルフミーラに、


 「俺が全て話すから大丈夫だ」

 「ありがとう」

 「大したことないさ、それよりここにいるモンスターは置いていくか?」

 「魔界に戻れないわけじゃないし、ヘカベルで飼うスペースがあるかどうかもわからないから置いておきましょう」

 「そうだな」


 モンスターを置いていくことに決めたゼランは、


 「さあ二人とも。今からサタルドスの元に行くぞ」

 「パパー!」

 「あ、はい!」

 「ママー!抱っこー」

 「はいはい」


 エルフミーラがメイシアを抱っこするとメイシアはごんちゃんの方に振り返り、


 「ごんちゃん。また遊ぼうねー」

 

 ゴアアアア!


 まるで意思疎通ができているように二人はお互いに別れを告げた。

 そして四人はサタルドスの元へと向かって行った。



 サタルドスの部屋の前に着くと、ヘルバトスが豹変したように独り言をつぶやいていた。


 「愛そうつかされてないかな・・・嫌われてないかな・・・大丈夫かな・・・見捨てられてないかな・・・幻滅してないかな・・・・忘れられてないかな・・・」


 そんなヘルバトスとは対照的にメイシアは「パパ!パパ!」とエルフミーラの腕の中から抜け出そうと暴れていた。

 そんな二人を前に、ゼランはサタルドスのいるその扉を開いた。


 「パパ―!」


 腕の中から脱したメイシアはすかさずサタルドスの元へと向かって行った。

 やはりメイシアとヘルバトスは対極の存在なのだろう。

 その光景を見てヘルバトスは冷静な判断をしていた。


 「ゼランさん・・・これって・・・」

 「・・・見たまんまさ」

 「パパー?」


 寝ているサタルドスに容赦なく頬をペしぺしと音を立てて叩く。


 「メイシアちゃん!?」


 エルフミーラは、気が付けばメイシアの元へ駆けつけてその悪い手を封じた。


 「メイシアちゃんダメだよ?」

 「ダメなの?」


 小さい子は何をしでかすかわかったものじゃない。

 だが、そんな二人の目の前に奇跡が起こった。

 なんとサタルドスが細目だが、目を開いたのだ。


 「ゼラン!サタルドスが起きた!」

 「なんだって!?」


 急いで駆けつけるゼランの後を追うようにヘルバトスもサタルドスの元へ。


 「サタルドス!サタルドス!」


 ゼランが必死に呼びかけるも、サタルドスの目は完全に開かない。

 それどころかどこか気怠そうな感じだった。


 「ゼラン、これって・・・」

 「ああ、「相殺」で完全にステータスを奪われてる。恐らく力が入らないのだろう」


 そんな気怠そうなサタルドスに、エルフミーラは手を差し出して、


 「サタルドス、目を閉じてて」

 「エルフミーラ、一体何をするんだ?」

 「意識はある。だから心の中で会話するの」

 「そんなことができるのか?」 

 「ええ」

 「ママー、メイシアもパパとお話ししたいー」

 「あとでね」


 不貞腐れるメイシアを見向きもせずに、エルフミーラはサタルドスの額に手を添える。

 エルフミーラの能力を理解しているからか、サタルドスは素直に眼を閉じた。

 そして、意識の中でエルフミーラはサタルドスとの会話に成功した。


 エルフミーラか?

 そうだよ、私だよ?

 俺はどうなったんだ?

 

 自分の身に何が起こったか理解していないサタルドスにエルフミーラは、


 六純天使の「相殺」でステータスを全て失ったの。

 なるほどな、道理で力が入らないわけだ。それより助けてくれたゼランとジェールナは無事か?

 ええ、二人とも無傷だよ。

 そうか・・・よかった。


 エルフミーラはサタルドスのその言葉に少しばかり怒りを覚えた。


 全然良くなんかない。サタルドスがこんな調子で今後この二人をどうするつもりなの?


 心の中で言っていたつもりがどうやら口に出していたらしい。

 サタルドスは驚いた様子で、


 エルフミーラも怒る時はあるんだな?

 もちろんあるよ。君は本当に馬鹿だね。


 プイっとそっぽを向くエルフミーラに対してサタルドスは、


 メイシアとヘルバトスと話せるようにできるか?

 

 人が怒っているのにその話はいかがなものかと思うが、何もできないサタルドスの意思は少しでも尊重しなければならなかった。

 エルフミーラは怒りを忘れサタルドスに、


 できるよ、それにメイシアがサタルドスと話したがってたしね。

 そうか、それじゃあ頼む。

 任せて。


 その言葉を最後にエルフミーラの意識は現実世界へと引き戻された。


 「ママー!次メイシア!メイシア!」

 「分かってるよ、あと・・・」


 エルフミーラがヘルバトスの方を向いた。

 ヘルバトスはびっくりしたように身を上下に動かしたものの、エルフミーラが言いたいことを理解したのか、ゆっくりとエルフミーラの元へと近づいた。


 「二人とも、片手はサタルドスのおでこに、もう片方の手は私と繋いでね」

 「はーい!」

 「分かりました」


 二人はエルフミーラの指示通りに、サタルドスのおでことエルフミーラに手を差し出した。

 そして、二人の意識はサタルドスの意思の中へ。


 おう、来たか。

 パパー!

 

 メイシアは、すかさずサタルドスの元へと駆けていく。


 メイシア、元気だったか?

 元気だったよ!パパは?

 パパは疲れちゃったけど、メイシアに会えたから元気出てきたよ?

 ほんと!?


 メイシアは今までに叩き出したことのない満点の笑顔でサタルドスに抱きついた。

 そんな二人に少しづつ近づいていくヘルバトス。


 お、お兄ちゃん?

 よお、ヘルバトス。元気だったか?

 あ、うん。俺は・・・それより・・・


 ヘルバトスはメイシアとは違い、心配な様子だった。

 心配をかけさせないようにとサタルドスは、


 なーに陰気くせー面してんだよ。俺は死んじゃいねーぞ?

 で、でも・・・

 全く、そんな顔するなって。


 励まそうとサタルドスはヘルバトスに語り掛けるも、ヘルバトスのから暗雲が消え去らない。

 だからこそ、このタイミングでサタルドスはヘルバトスに謝罪と同時にお願いをした。


 悪いな、ヘルバトス。

 え・・・?

 お前が復讐しようとしてたギルシュインって言う貴族、殺しちまった・・・悪い。


 深々と頭を下げるサタルドスにヘルバトスは、


 そんなことどうでも良いよ。それより・・・

 そうだな・・・俺はもしかしたらこのままかもしれねーな。


 青空は見えないのの、天を見上げてそう語るサタルドス。

 その言葉の意味をヘルバトスは理解できなかった。


 一体どういう・・・・

 そのまんまの意味さ。俺はこの状態で生き続ければいけないかもな

 そんな!どうしたら治るの?

 治す方法か・・・まずそこから探さないといけないのかもな


 サタルドスはわかっていた。

 自分の身に纏う呪いを解く方法が未だわかっていないことに。

 もしわかっていたとするならば、エルフミーラ達がとっくに治しているからだ。

 そんな全てを諦めたようなサタルドスに対してヘルバトスは、


 俺に・・・俺に出来ることはないの・・・?

 そうだな・・・今のお前にできることはないかもな・・・・・

 そんな・・・・


 落ち込むヘルバトスにサタルドスは、


 だが、それは今のお前に対してだ。

 え・・・?


 サタルドスの真意を読み解くことができないヘルバトス。

 そんなヘルバトスに対してサタルドスは、


 ヘルバトス、これはお願いだ。どうか俺にかかってる呪いを解いてくれ。

 そ、そんなこと・・・俺には・・・

 

 戸惑いを隠しきれていないヘルバトスにサタルドスは、


 ヘルバトスが俺の最後の希望なんだ。他の誰でもないお前が。

 俺が・・・・お兄ちゃんの・・・

 そうだ。だからお願いだ。こんなこと言うのは恩着せがましいと思うが、今度はお前が俺を救ってくれ。

 俺が・・・・お兄ちゃんを・・・・

 そうだ、そしてヘルバトスがこの世界を正してくれ。間違ったこの世界を。

 

 サタルドスのその言葉によって悲惨だった奴隷時代が蘇ってくる。

 物のように扱われ続けた暗黒時代。


 あんな時代には戻りたくない。

 あんな時代をこれ以上続けてはならない。

  

 そしてヘルバトスは決意する。


 わかった、俺がサタルドスを助ける!そしてこんな腐った世界をぶっ壊してやる!

 その意気だ。そんなヘルバトスに俺からのプレゼントだ。

 プレゼント?


 サタルドスがプレゼントと言った途端、ヘルバトスとメイシアの周りを白い光が覆った。


 お兄ちゃん!お兄ちゃん!

 パパ!パパ!


 二人がサタルドスのことを呼ぶと、光の向こうからサタルドスの声が、


 俺は二人が俺を助けてくれると信じてる・・・・

 お兄ちゃん!

 パパ!

 それから・・・・


 現実世界へ引き戻されると同時にサタルドスが最後に放った言葉。

 それは・・・


 エルフミーラにシハルのことよろしく頼むと伝えてくれ・・・


 その言葉と同時に二人の意識は現実世界へと引き戻されたのだった。

 


 

最後まで読んでくださってありがとうございます。

この後から第三章「ヘルバトス編」になります。

それから、一話から改稿作業をしていくので、よろしければそちらの方もよろしくお願いします。

次の投稿は23時になります。

今後とも「六宝剣の落ちこぼれ異端者」をよろしくお願いします。

ブックマークありがとうございます。

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