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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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六十七話 思わぬ事態

 全員の意見が一致し、それから数時間が過ぎた。

 暗黒騎士達が地上階へと赴くための準備をしていた頃に、地上階では大変なことになっていた。


 ヘカベル王城にて―――――


 「勇者様!よくぞ魔人族から国を救ってくれました」

 「いえ・・・当然のことをしたまでです・・・」


 王様から栄光と讃えられていたのは、紛れもない金崎だった。

 国から与えられる勲章を授与するも金崎の中では大きなしこりを残していた。

 そのしこりの正体も金崎自身がよくわかっている。

 そう、金崎が魔人族であるサタルドスを撃退した記憶がないのだ。

 寧ろ、サタルドスに負ける所だったのに。

 一体何が起こっているのかわからなかった。

 だって、気が付けば自身の召喚した王国に戻っていたし、サタルドスを倒した記憶もない。

 不可解な問題に金崎は頭を悩ませるも、一向に答えは見つからなかった。

 だが、金崎のような容姿を見間違える人間などそうそういない気がする。

 だとしたら、ここは話に合わせておくのがベストな選択だろう。

 金崎は記憶が曖昧なままヘカベルの国王と会談を始めた。


 「勇者様の活躍には感謝をしても仕切れません」

 「そんな大層なお言葉、私にはもったいないです」

 「そんなことはありません。被害を最小限に抑えられたのですから」

 「それって、ギルシュイン様が亡くなられたことですか?」

 「そうですとも」


 人を死なせてしまって被害を最小限に抑えられただと?

 全く最小限ではない。

 人を殺してしまったんだぞ?


 正義感の強い金崎にとってその言葉はとても汚らわしく、口にしたくないワードだった。

 そうだとしても、今は国王の眼前。

 下手な行動はできなかった。

 上司に尊敬の証である礼儀を忘れてはいけない。

 感情を必死に金崎は抑えていた。


 「まあ、そんな話はほんの建前にすぎない」

 「・・・どういうことですか?」


 国王が考えていることが分からなかった。

 すると、国王は意を決したように金崎に向けて、


 「ヘカベル直属の勇者になってくれないか?」

 

 国王は何を言っているのか?

 金崎は、ジェスト王国の勇者であるゆえにそんなことはできないことは分かっているはずなのに。

 そんな金崎を目の前に国王はさらなる提案を持ち掛けた。

 俗に言う裏取引である。

 国王の話は至ってシンプルな内容だった。

 王国直属の勇者になれば一定の報酬を与え、活躍によってはさらなる報酬を与えると言ったものだった。

 普通の一定報酬ならジェスト王国と変わらない。

 だが、国王が差し出した一定報酬というのは、一軒家を一括返済できるほどの金額だった。

 確かにそれだけのお金があれば優雅に暮らすこともできるだろう。

 しかし、金崎の心はそこまで腐り果てていなかった。

 寧ろ、そのお金でもう少しこの国の国民達の暮らしを豊かにしてあげてと言いたいところだ。

 まあ、そんな勇気も根性もないのだが。

 無駄に正義感は強い反面、自己主張性が乏しいのが金崎というロングソードの勇者である。

 丁重にお断りしようと深々と頭を下げたところ、国王が慌てた様子でさらなる提案を。

 恐らく、こちらが承諾拒否をすることを読んだのだろう。

 報酬の金額が変わろうと、私の意思は揺るがないというのに。

 こんなことをしていても時間の無駄だと思った金崎は国王に、

 

 「いくら報酬量を変えても、私はヘカベルの直属の勇者になることはありません」

 「そうか・・・実に残念だ・・・」


 わかりやすいように落ち込む国王に、金崎からある提案を持ち掛けた。

 金崎が持ち掛けた提案はヘカベル直属の勇者になると言ったものではないものの、今のヘカベルにはプラスになる提案だった。


 「この国がジェストの国家勢力圏内に入るのなら、少なからずこの国の防衛ぐらいはできると思います」

 「うーん・・・」


 悩み込む国王。

 この国王のことだ。

 どうせ、他の王国の権力に振り回されたくないと言ったところだろう。

 悩みに悩んだ末、国王から出た答えは、


 「わかった、できる限りジェスト王国を友好な関係を作ろう。ただし、そちらからの条件ばかりではこちらの利益が一つもない」

 

 確かに国王の言う通りだ。

 仮に国王の言う友好な関係を築くとするならば、こちらの条件だけでなく、相手の条件もしっかり聞き届けた上で契約をしなくてはならない。 

 

 「すると、国王は何をお望みですか?」

 「わしからは二つ条件を提示させてもらう」

 「それは・・・?」


 すると国王は人差し指を立てて、


 「一つは、ヘカベルの自由だ。名目上は国家勢力圏内に収まっていることで構わないが、わしらにジェストの権力に囚われない自由を確保して欲しい」

 「なるほど、それで二つ目というのは?」

 「無論、わしらの身の安全の保障だ」

 「なるほど・・・」


 国王はどうやらしっかり国民のことを考えている。

 その真意を受け取った金崎だったが、事が大ごと過ぎるゆえにジェストの国王に承諾許可を得ないといけなかった。

 ヘカベルの国王には申し訳ないが、まだ契約が成立したわけではないのだ。

 金崎はジェストの国王とこの契約について許可をもらうためにジェストへ帰還することをヘカベルの国王に告げて王城を後にした。



 一方、上空千五百メートル地点にて―――――――


 「ようやく、勇者が消え失せたね」

 「ええ、これで事をさっそく進められそう」

 「全く、エルフミーラが勇者がいないと言ったからすぐに作戦実行してみれば・・・」

 「危なかったね、僕の命も少しは伸びて良かったよ」

 「二人とも遠回しにエルっちの悪口を言わないの」


 簡単に説明すると、暗黒騎士達はヘカベル奪還の第一作戦である、「情報阻害」と「絶対防御壁」を王国全体に張る作業で地上階に降りてみれば、まさかの勇者の存在があったということだった。

 まあそんなことはさておき、勇者がいない今がスキルと魔法を使うチャンス。

 勇者が現れない内に作戦を実行に移すことに。


 「サキュラバーニ」

 「分かってるよゼラン。情報阻害」


 サキュラバーニが両手を前に差し出し、透明の幕を張った。

 すかさずエルフミーラもサキュラバーニと同じ動作で「絶対防御壁」を張る。

 そして辺り一面に彼女達のスキルと魔法が行き渡るのを確認。

 これで情報が洩れることもないし、この防御壁を破るにも時間が掛かる。


 「いくぞ」


 ゼランの掛け声とともに、四人は一斉にヘカベルの西門へと降り立った。

 相変わらずのライトグリーンの草原の中、黒い騎士が五人。

 その黒い物体がヘカベルへと近づいてくるとするならば、嫌でも警笛を鳴らさないといけない。


 「て、敵襲!敵襲ー!!!!!」


 一人の兵士が悲鳴のように声を上げて伝達を試みようとするも、誰一人その声に耳を傾ける者はいなかった。


 「あ・・・あれ!」


 その兵士もようやく事の重大さに気が付いたようだ。

 まあ、自分の叫び声に見向きもしない時点で誰でもおかしいと思う。

 だが、その兵士が異変に気が付いた時点では全てが遅かった。


 「君、しばらく眠っててね。まあ、ずっと眠っててもいいんだけど」


 「怠惰」の暗黒騎士であるグウィルドの言葉を最後に兵士の意識はプツリと切れた。


 「相変わらず、グウィルドのスキルは容赦ねーな」

 「そんなことないよ、ゼランのスキルに比べたら」

 

 そんなやり取りをしている最中にもヘカベル兵士は次々と異変に気が付く。

 それと同時にグウィルドが容赦なく眠りにつかせる。

 そして最後の一人になった兵士が逃げようとすると、そこでサキュラバーニが能力を使った。


 「サキュラバーニ・・・そのスキルは・・・?」


 ゼランが初めて見るスキルに動揺を隠せなくなっていると、サキュラバーニは得意げな顔をして、


 「ふふん!これが私のスキル「操り人形」使った相手を自由自在に操ることができるの」


 ゼランとグウィルドはもちろん、エルフミーラとジェールナも驚いた顔をしていた。 

 どうやらサキュラバーニの隠し玉のようだった。

 このスキルを目にしたサキュラバーニを除いた他の暗黒騎士達は皆同じ事を考えていた。

 これからサキュラバーニを怒らせるのはやめよう・・・・と。


 「ほら、早くいこう?」

 「ああ、その前に勇者は入るのに時間が掛かると言っていたが、そもそも俺達は入れるのか?」

 「大丈夫ですよ。私の仲間は入れるようになっていますから」

 「そうか」


 そして暗黒騎士達は、一人の兵士を利用して王国内への侵入に成功したのだった。



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