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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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六十一話 光の化身と闇の化身

 「こっちが聞いてるのに名乗らないとか、飛んだ無礼者だな?常識を知らないのか?」


 六宝剣の勇者クラスの装備を持つ人間は異世界召喚された人間だと言っていたな。

 金崎も異世界人なら礼儀という常識は知っているはずなのに。

 すると金崎は綺麗なその口をゆっくり開いて、


 「なぜ魔人族に名乗らなければならない?」

 「だが、俺が魔人族だと知っていることは、誰かから俺の情報を得たってことだよな?それって全然フェアじゃないと思うんだが?」


 金崎とは初対面だ。

 それなのに金崎がサタルドスを魔人族だと決めつけるのは何かしらの情報があったからに他ならない。

 恐らくは、先ほどの門前での戦いだろう。

 あの時、サタルドスは自らの口で自身の正体を明かしたのだ。

 どうやら、残党が残っていたらしく、この女騎士様にチクったのだろう。

 まあ、大した問題じゃないがな。

 フェアじゃないという主張をしたサタルドスの前で、金崎は溜息を一つ。

 

 「仕方がないですね。一度しか言わないのでよく聞いてください」


 すると金崎は右手に構えていた剣を瓦礫の頂上に剣を突き刺してこう告げた。


 「私は六宝剣に選ばれし勇者。金崎・アルフェルト・美穂花と言います」


 やはり六宝剣の勇者だったか・・・

 というか、カナサキ?ミホカ?こいつは日本人なのか?


 だが、アルフェルトはどう考えても漢字では変換できない。

 つまり、金崎はハーフの日本人ということになる。

 それもそうだろう。

 その美しい髪の色はどう考えても日本人のみの遺伝子では作ることはできない。

 すると、そんな二人に近づく足跡が一つ。

 そしてそれは言うまでもなく奴だった。


 「いやー、お見事お見事。私の仲間を連れ去るとは・・・」


 手を叩きながらサタルドス達がいる牢屋に近づいてくるギルシュイン。

 それより、仲間ってなんだ?奴隷じゃなくて?

 

 「おい、ギルシュイン。仲間ってなんだ?奴隷じゃなくてか?」

 「おや、私をご存じなのですか?私もいつの間にか有名人になったようで」

 「聞かれた質問だけに答えろ」


 サタルドスは取り出した刀をギルシュインの鼻先に向けた。

 それがいけなかったのだろう。

 その行為を目にした金崎が剣を引き抜き、サタルドスに向かって剣を構える。

 そのシンプルな剣の形に、神の彫刻が施されている。

 これは間違いなく、ロングソードだ。

 今度は、そんな金崎を目にしたギルシュインが口を開いた。


 「勇者様、勇者様。ここで暴れられては困りますので、どうか外の方で」

 「わかりました」


 すると金崎は他の勇者、クツェルを凌駕するそのスピードでサタルドスに接近し、外に放り出す様にロングソードを振り上げた。

 危なかった。防御に転じるのが少しでも遅れていたら大ダメージものだった。

 だが、金崎の攻撃の手は止まない。

 振り上げて宙を舞うサタルドスに追い打ちをかけるように、金崎はさらなる一撃を加えた。

 そして、防御をしていたのにも関わらず、サタルドスは遠く彼方へ吹き飛ばされ、ようやく地に足をつけた時には王国の外だった。

 金崎の攻撃力は遥かに人間の領域を超えている。

 金崎は本当に人間なのか?

 サタルドスを追尾するように地に足をつけた金崎はどう見ても普通の人間だった。

 「天元」が身体に影響を与えるのか?

 だが、せっかくシハルの記憶の手掛かりを得られそうだったと言うのにこの女騎士が邪魔したせいで。


 俺の邪魔をする奴は容赦なく殺す。


 サタルドスは刀に青い炎を纏い、構えを取る。

 そして魔人化六十パーセント。

 五十パーセントにしなかったのは、こいつ相手では勝ち目がないと思ったからだ。

 

 「魔人族が私に勝てるとでも?」

 「逆に聞くが、人間が俺に勝てるとでも?」


 二人は「ふふふ」と笑い合い、その数秒後に金崎がサタルドスに斬りかかってきた。

 だが、サタルドスはシンプルに殺り合う気はない。

 声に出すことなく、憤怒の吸収のスキルを使用した。

 金崎の怒りがサタルドスの体に流れ込んでくる。

 他の兵士とは比べ物にならないくらいの憤怒。

 そして、力が抜けて行くのが分かったのか、浅くサタルドスに斬りかかった。

 全力で斬りかかって、隙でも作ったら殺られると思ったのだろう。

 サタルドスは、金崎の斬りかかるロングソードを振り払って金崎を五十メートル先まで吹き飛ばす。

 本当は一キロメートル吹っ飛ばしたつもりだったんだが、力の加減と逃がし方をどうやらマスターしているらしい。

 恐らく、勇者の中ではトップクラス。

 侮れない敵であることは間違いなかった。


 「今、何をした?」

 「手の内をばらすわけがないでしょう?それは金崎も同じだろ?」

 「貴様にその名を呼ばれたくない!」


 相当魔人族を嫌っているのだろう。

 その剣幕を見ている限り魔人族と何かあったらしい。


 だが、手を抜けば負ける。

 全力で殺しに行かなければならない。

 あいつは勇者で俺は落ちこぼれ。

 そもそも魔人族じゃなくても、俺のことを理解できない人種だったのだから。


 同情の余地などなかった。

 サタルドスは憤怒の蒼炎刀のスキルを使用し、刀に蒼い炎を纏った。


 「さて、そろそろ真剣に殺しあおうか」

 「その意見だけには賛成」


 サタルドスの蒼炎刀に対して、金崎の使用したスキルは神のように神々しく光り輝く光をロングソードに纏うものだった。

 まさかここで切り札を出してくるとはな。

 いきなり切り札を切ってくる彼女の思考が全く読み取れないが、愚鈍な行為であることには間違いなかった。


 「おいおい、まさか「天元」をもう使うとか、切り札切るの早くないか?」


 嘲笑うようにサタルドスは金崎に言うと、金崎もサタルドスの無知ぶりには笑いを堪えられなかった。


 「あなたは愚かで馬鹿な魔人族ね。見ていてとても痛々しい」

 「まあ「天元」を使用してもしなくても貴様の負けはすでに決まっている」

 「あら、敗北の二文字を掲げているのはあなたでしょ?」


 どうやら二人の中に敗北の二文字はないらしい。

 そんな二人がぶつかれば、間違いなく戦闘が行われる。

 そして、言うまでもなくサタルドスと金崎は、火花を散らしながら刀とロングソードを幾度もなく交える。


 こいつ、あのクツェルなんかよりも実力が圧倒的に上だ。

 まあ、俺には関係ないんだがな。


 その素早い剣技に押され気味だったサタルドスがその上を行くスピードで金崎を襲った。

 金崎はその剣裁きから逃げるように後ろへ大きく後退した。


 おいおい、まさか逃げたんじゃないだろうな?


 サタルドスは一度そう思ったが、考えを改めた。

 どう考えても押されて逃げた面じゃない。

 一度距離を置いたとするならば、攻撃の予兆以外考えられなかった。

 そのサタルドスの推測も見事的中し、金崎は、ロングソードで自分の真正面に大きく円を描き、そこから光のレーザーみたいなのが飛び出してきた。

 構えをしていなかったら間違いなく食らっていただろう。

 サタルドスは金崎が何かしらの攻撃をしてくると睨んでいたので、スキルで難なく回避。

 サタルドスは憤怒の絶壁でその光のレーザが尽きるまで防御壁を張り続けた。

 そして攻撃の手が止み、憤怒の絶壁を解除すると、円から出ていた光のレーザから金崎が何の前触れもなく斬りかかってきた。

 正直油断していたが、サタルドスの許容範囲内のスピードだ。

 サタルドスは刀でその攻撃を防ぎ切った。


 「へえ、なかなかやるじゃない。「閃光滅砲」を防ぎ切るとは」

 「あの程度の攻撃、造作もない」

 

 均衡状態が続く中、金崎があることを聞いてきた。

 その内容はこの戦闘の始まりを意味するものだった。


 「お前、何しにここへ来た」


 確かに、勇者の言う通りだ。

 用がなければこんな場所には来ないのだから。

 もしかしたら、シハルについて何か聞き出せるかもしれない。

 戦闘において、負ける未来など見えないのだから、金崎に聞く余裕はある。

 もし仮に知らないと言われればそれまで。

 金崎を殺すだけなのだから。


 「そうだな、聞きたいことがあるんだが、もちろん聞いてくれるよな?」

 「こっちから聞いたんだ。聞くに決まっているだろ」

 「鬼人族についての情報が欲しいんだ。何か・・・」


 すると、均衡状態は急に解除された。

 金崎は先ほどと同じようにサタルドスと距離を取り、そして強面の表情でこう言った。


 「貴様ら、何を考えている」


 

 

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