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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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五十九話 新たな進歩

 この宣戦布告が吉と出るか凶と出るか。

 人間の心理状態などサタルドスには理解できなかった。

 理解ができるのは恐らく、エルフミーラぐらいだ。

 だが、指揮官と思われるこの兵士を殺したのが相当効いたのだろう。

 慌てふためいる残された兵士達。

 このまま聞き出せればいいんだが・・・

 人間というのはいつも思う通りには行動してくれないものだ。

 何やら団子のような集団陣形を取り、弓部隊がこちらに向かって矢を構え始める。

 答えは明白だった。


 「どうやら聞き出せそうにはなさそうだな」

 

 そうと決まれば、奴らに恐怖を刻み込んで情報を得るしかない。

 それでも聞き出せかった場合は、致し方がないが殺す。

 しかし、こんなパーフェクトプランに一見見えるこの作戦にも大きな問題が。

 それは情報提供者をどう見極めるかだ。

 戦闘中に一人一人尋ねるわけにはいかないだろう。

 できないことはないと思うがそれじゃあ時間が掛かり過ぎる。

 時間は「災い」が終わるまで。

 その間に全てを終わらせるとなると、時間は無駄にできない。

 だとしたら、どうするのがベストなのか。

 そんなことは考えるまでもない。

 さっきも言った恐怖を刻むことを上手く利用するのだ。

 命が惜しくなった人間は何でも間でもペラペラ喋る性質を持っている。

 それがない奴は生かして置いても仕方がないだろ。


 「とりあえずは、スキルを色々使ってみながら試してみるか・・・そんなことよりも」


 サタルドスは辺りを見渡すと、屍がこちらに向かってきている。

 正直うざいな。

 暗黒騎士が仕組んだことだと分かっていても、鬱陶しかった。

 俺とやり合ってる時に屍に殺されては困る。

 情報提供者が殺されないためにも・・・

 悪いな、屍は殺させてもらうぞ。

 サタルドスは取り出し済みの刀で大きく刀を振るった。

 刀からは、人間業とは思えない強力な風圧が発生し、辺り一面に広がっていた屍の大衆を薙ぎ払った。

 これでしばらくは大丈夫だろう。

 さて・・・

 サタルドスはスキルを使った。

 

 「憤怒の吸収」


 今まで口に出して使ったことがなかったが、このスキルは無意識にでも使えるのか?

 だが、怒りの力が俺に流れ込んでくるのが伝わってくる。

 これは今まで使ってたやつだな。

 無意識に使っていたとはいえ、感覚が身についていたのだ。

 そんなサタルドスの視界内に怒りの力を吸われて倒れ込む兵士と倒れ込まない兵士に分かれた。

 恐らくは怒りの力で何とかなっていた奴と、普通に体力に余裕があった奴で分かれたのだろう。

 全く、根性がない奴らだな。

 だが、それなら都合がいい。

 倒れ込んでいる奴を後回しにして、残念にも立っている奴から殺せばいいのだから。

 そろそろ、戦を始めるとするか。

 

 「憤怒の蒼炎刀」


 サタルドスがスキルを使うと、手に握る刀の先から鍔にかけて青々しく、そして闇を吹くんだ炎が刀を包み込んだ。

 炎は刀の刃の部分を溶かしてしまうのではないかという程に燃え滾っていた。

 こっちの準備は整った。

 だが、おかしいな?

 こんなことをしている間にも全く兵士が攻めてこない。

 まさかこの団子の陣形って・・・

 サタルドスが彼らにゆっくり近づき、あと百メートルというところで戦況は動いた。

 タイミングを見計らっていた兵士達が一斉にサタルドスの元へ駆けて行く。

 何も考えずにつっこんでいたら、この奇襲攻撃に驚いていたことだろう。

 ここで間違えてはいけないのは、ただ驚くだけであって、その不意打ちを突かれた攻撃でやられるということではないからな?

 つまり、驚いてもいないこの状況。

 圧倒的にサタルドスが優位に立っていた。

 サタルドスは青々と滾るその刀を迷うことなく兵士に振り続けた。

 一人、二人、三人。

 兵士たちは次々と悲鳴を上げながら攻撃を繰り出してくる。

 怖いのなら、降参すればいいのに・・・

 そんな負け組のようなことを吐かないのがヘカベルの兵士としての鏡なんだろうが、そんな無謀なことをして誰の利益になる?

 自分か?それとも王様か?

 自分は死に、王様は王国のピンチに成す術もなく敗れる。

 何にも利益にならないじゃないか。

 そんな無謀なことをする意味がない。

 全く、こいつらも揃いも揃って馬鹿だな。

 まあ、あんな国王に逆らえる力もないから仕方がないか。

 サタルドスは、少しは同情したものの、その刃を振るうことはやめなかった。

 次々にやられていく仲間を見て、貴様らは何を思うのか。

 すると、ようやく弓部隊が動き始めた。

 魔法も含まれていない、シンプルな矢がサタルドスに向かって一斉に放たれる。

 今度はあれを使ってみるか。


 「憤怒の絶壁」


 サタルドスのスキル詠唱と同時に、サタルドスの目の前に黒いワープゲートのようなものが。

 いや、ブラックホールと言った方が適切だろうか。

 放たれた弓矢はサタルドスに届くことなく、そのブラックホールの前で姿を消した。

 呆然とする弓部隊。

 まあこれで分かっただろう。

 近距離攻撃にしても遠距離攻撃にしても俺には勝てないということを。

 というか、スキルは言葉に出さないと発動しない物なのか?

 まだ使用していないスキルがあったので、そのスキルを意識するように心がける。

 すると、サタルドスの横に黒い人型物体が現れて、いきなり兵士達に向かって駆けて行った。

 え、ちょ、おい!

 言葉を発しなくてもスキルの発動ができたのは確認できたのだが、厄介なことになった。

 俺の化身が兵士達を殺しに掛かっているのだ。

 このままでは全員を殺しかねない!

 収まれー、収まれー

 サタルドスが必死に祈り続けるも、化身は殺すことをやめない。

 サタルドスが残しておいた、立てもしない兵士も容赦なく・・・


 「オウ、ノー・・・・・」


 自分の犯した過ちとなった化身をただ、立ち尽くしながら見ていた。

 そして、一通り片付いたのを確認した化身はその姿を空気中に消していった。

 その場に残ったのは化身が殺した兵士の亡骸のみ。

 これほどに虚しいものはあるだろうか。

 せっかく情報収集のために残しておいた兵士を自らのスキルで殺してしまうなんて・・・

 生き残りがいないか辺りを見渡すも、そんな奴はどこにもいなかった。

 今後、化身は大事な場面以外は封印しよう・・・

 こうして、情報網を失ったサタルドスは自分がやった行いを悔いながら王国へと足を踏み入れた。



 一方、王城内ではーーーーーーーーー


 「屍の方はかたずいておるのか?」

 「はい、最前線で王が見込んだ兵士が奮闘しております」

 「それならいい」


 最前線で兵士が戦っているというのに呑気に酒を飲む国王。

 この国王は自ら行動することはなく部下を上手く使い、事を済ませて行く典型的な王様だった。

 そんな優雅なひと時を迎えている中、王座の扉が勢いよく開かれた。


 「大変です!」

 「どうした?何事だ?」

 「敵襲です!」


 国王はその王座に上がり込んできた兵士を見下すように、


 「敵ならこの周辺にうじゃうじゃ湧いてるだろうが、今更何を言っておる」


 国王どころか護衛の兵士達も小馬鹿にするように入ってきた兵士を嘲笑う。

 だが、そんな余裕をかました態度を取っていられたのはここまでだった。

 兵士のある情報によって。


 「最前線で屍と奮闘していた我らの軍が壊滅。敵がこちらに押し寄せてきます!」

 「何!?わしの兵士が屍ごときにやられただと?信じられん・・・」

 「いえ、屍ではありません!」


 だとしたら何にやられたというのか。

 国王は理解できなかった。

 今まで育て上げてきた兵士は簡単に死ぬはずがないと思っていたからだ。


 「だったら、原因はなんだ!」

 「それが・・・」

 「早く申さないか!」


 兵士はその重い口から事の始まりを語った。


 「サタルドスという、ま、魔人族が現れて兵士は全滅いたしました・・・」

 「魔人族だと!?」


 魔人族という単語に大きく反応を見せる国王。

 何か奴らの逆鱗に触れることをしたのか?と一人でブツブツ喋る中、一人の人物が扉の向こうから姿を現した。


 「魔人族が現れたのですか?」

 

 その姿に、国王どころか兵士達も眼を離せなかった。

 そのスタイルの良い体型に腰にまで達する金髪の髪。

 宝石のように輝く碧眼。

 装備も白色がメインに金のラインが入っていた。

 まるで、光の化身のような存在だった。

 ただの兵士ではなかった。

 だとしたら、他には答えがなかった。


 「そなたは勇者様ですか!?」

 「自分で勇者と名乗るのもおこがましいのですが・・・」

 

 そして彼女は言い放った。


 「私が六宝剣に選ばれし勇者です。その魔人族の排除、どうかこの私に任せてください」

 

 

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