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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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五十五話 会談に現れた暴風

 「さて、これから「災い」会談を始めるわけだが・・・」


 司会であろうゼランが何か言いたげな様子だった。

 一体ゼランは何を言いたいのだろうか?

 サタルドスは心を読めるわけでもなく、ただその後に続くゼランの言葉を待つしかなかった。

 ゼランはその後に続けてこう告げた。


 「俺達暗黒騎士が地上に赴くかどうかだ」

 「どういうことだ?」


 地上に赴くことに、相談なんて必要ないだろう。

 だから、ゼランのこの言葉に含まれた意味など理解できるはずもなかった。

 そんなサタルドスに答えたのは紛れもないゼランだった。


 「敵の勢力があまりにも大きすぎる。特に勇者の存在が厄介だ」

 「そうだね。六宝剣の能力は僕たちにとってアンチだからね」

 「六宝剣の勇者をどうにかできる力がつくまで「災い」に頼るしかないね」


 おいおい、ちょっと待てよ。

 それじゃあ、勇者をどうにかするまで大人しくしてるってか?

 俺にはそんなことしている時間がない。

 早くしないとシハルが・・・

 すると、サタルドスの意図を汲み取たエルフミーラが他の暗黒騎士に提案した。


 「六宝剣の勇者をどうにかしたいのなら「災い」に発生するモンスターじゃ彼らの経験値アップにしかなりません」

 「経験値って一体何のだ?」

 「戦闘技術ですよ」


 ゼランの問いにすぐさま答えるエルフミーラ。

 確かに「災い」のモンスターでは、良い特訓相手が限界だろう。

 勇者一向に特訓をさせているようなものだった。


 「だからと言って、今までの「災い」をやめるわけでもありません」

 「エルッチ?一体どういうこと?」

 「エルフミーラ、私も話の意図が読み取れないんだけど」


 サキュラバーニとジェールナは理解できていなかった。

 恐らく、ゼランもグウィルドも分かっていないだろう。

 エルフミーラの意図を読めるのはサタルドスのただ一人だった。

 全く、俺がこんなことを言う日が来るとはな。

 サタルドスは他の暗黒騎士の目の前でこう告げたのだ。


 「いいか?俺がここに来たのは「災い」に協力するためだと分かっているな?」

 「ああ、もちろん分かっているさ」

 「だったら話は早い。いいか?よく聞いとけよ?」


 サタルドスはエルフミーラが言うとしていた作戦の内容を洗いざらい全てぶちまけた。

 「俺が地上に降りて勇者一向を殺す。後はいつも通りの「災い」を執り行うだけだ。どうだ?「災い」で人間が死ぬどころか勇者も殺せて一石二鳥だろ?」

 「確かにそれは魅力的な提案だが・・・」

 「さっき僕が言ったこと覚えてる?」


 この作戦は都合が悪いと言わんばかりの目をこちらに向けてくるゼランとグウィルド。

 この問題に何か問題でもあるのか?

 するとグウィルドは先ほどの話をもう一度取り上げた。


 「僕たち魔人族は勇者の六宝剣と相性が悪いんだ。だから・・・」

 「いえ、そんなことはないですよ?」


 グウィルドが何かを言いかけている途中で割り込んで入ってきたエルフミーラ。

 いや、さすがに人の話は最後まで聞こうぜ?

 だが、そんなことは別に言う必要はない。

 彼らに俺とエルフミーラの考えている作戦を理解してもらわなければいけない。

 そのためには手段を選んでいられない。

 エルフミーラは暗黒騎士達に現実に起こった事例を持ち込んだ。


 「つい最近、サタルドスは六宝剣の勇者である人間と決闘をしました」

 「本当か!サタルドスがここにいるってことは打ち取ったのか?」

 「いえ、勝負は互角でした。相手は逃げ、サタルドスは致命傷を負いました」

 「それって負けてない?」


 ジェールナが何の悪びれもなく言う。

 いや、殺しもないし殺されてもないから普通に考えてドローだろ。

 だが、ここからエルフミーラはサタルドスも知らない未知の領域へと足を踏み込んだ。


 「サタルドスが真の魔人化を使っておらず、スキルもまともに使っていない状態で相手は「天元」の能力を使っていたとしたら、まだそんなことが言える?」

 「なんだと!?」


 ゼランがいきなり大声を出し、驚いた顔をしていた。

 それだけじゃない。他の暗黒騎士の驚いた顔をしている。

 ってか何だよ。真の魔人化とか「天元」とか。

 聞いたことのない単語に戸惑うサタルドスの腕の中でメイシアは突然目覚めた。

 恐らくゼランが急に叫びだしたのが原因だろう。

 当の本人も分かっていたのか、話の途中なのにも関わらずメイシアに謝罪を入れた。


 「ごめんね?起こしちゃった?」

 「おじちゃん誰?」

 「おじちゃんときたか・・・おじちゃんはゼラン。お父さんの友達だよ?」

 「お父さん?」

 「そう、お父さん」

 「???」


 どうやら、この子はお父さんという単語を理解していないらしい。

 この子の語学力は一体どうなってんだ?

 お父さんを知らない十代前後は初めて見た。

 そんなメイシアにエルフミーラは優しく教えてあげた。

 

 「メイシアちゃん?お父さんはパパのことを言うんだよ?」

 「パパ?じゃあママのことは?」

 「へ?」


 メイシアのその発言でその場が静まり返った。

 どうやら驚きのあまり声も出ないといったところだろう。

 それは仕方のないことだ。俺だって声が出ないのだから。

 メイシアと会話していたエルフミーラが誰よりも早く動いた。


 「えっと、メイシアちゃん?ママって?」 

 「ママはママだよ?」


 するとメイシアは、動かないサタルドスの腕の中から抜け出し、ママの元へと向かって行く。

 言うまでもなく、エルフミーラの元へと。

 メイシアはエルフミーラの元へ着くなり、彼女に抱きついた。

 甘い声を出して彼女の名前ではない別称を言いながら。


 「ママ~」


 誰もがその光景から目を離せなくなる。

 その可愛らしさから目を離せないのもあるだろうがそれだけではない。

 エルフミーラは無言で抱きつくメイシアを抱き上げながらこう言った。


 「そうだよー、ママだよーメイシアちゃん」

 「ママー!」

 「いや、ちげーだろ!」


 なんでエルフミーラはそんな笑顔で平然と嘘を吐けるのか。

 というかめんどくさいことになった。

 早く訂正をしないと後でややこしいことになる。

 

 「メイシア、その人はママじゃないぞ?」

 「違う!ママなの!」

 「メイシアのままになるであろう人は別に・・・」

 「ママはママなの!」

 「あらあらまあ」

 

 あらあらまあじゃないだろ!

 これじゃあ訂正しようにもできないじゃないか。

 何かもっともらしい理由はないものか・・・

 そうか!小さいから話が通じないだけだ。

 きっと大きくなれば分かってくれるはず。

 そう願い、話を本題に戻す。


 「それで、真の魔人化とか「天元」とかよくわからないのだが・・・」


 サタルドスが暗黒騎士達に尋ねるも、応答がない。


 おいおい、まさかまだフリーズしてんのか?


 そんな暗黒騎士達を差し置いてエルフミーラが答えた。


 「真の魔人化は後で教えるとして・・・まずは「天元」からだね」

 「「天元」って何なんだ?」

 「分かりやすく説明すると、サタルドスが勇者から受けた攻撃の系統のことを言うんだよ?」


 確かに、今に思えばあの攻撃だけは他の攻撃よりも桁違いに痛かった。

 グウィルドが相性が悪いと言っていたが、そう言うことなのか?

 まあ、どちらにせよ「天元」の攻撃には気を付ければ良い話か。


 「そうか、わかった」

 「え、もういいの?」

 「ああ、要するにその攻撃を受けなきゃいい話だろ?」

 「まあ、そうだけど」

 「それよりも真の魔人化って何なんだ?」

 「それは口で説明するのが難しいから後でね?」

 「わかった」


 さて、そろそろ他の四人が戻ってきてくれるとありがたいんだが。


 「おい、そろそろ今後の話をしたいんだが」

 「あ、ああ、そうだったな」

 

 サタルドスの問いかけに最初に反応したのがゼランだった。

 他の三人はまだ固まっているようだ。


 「おい、ゼラン。他の三人をこっちに戻す技とかないのか?」

 「こう見えて「嫉妬」だからな。ここで使ったらもっと面倒なことになるよ」

 「それはごめんだな」


 だが、この調子だと会議がいつ終わるのかもわからない。

 するとゼランは、仕方がなそうな雰囲気を醸し出してこう言った。


 「とりあえず、サタルドスが地上に赴き、人間を攻撃しながら、同時並行に「災い」を進めて行く形で良いだろう」

 「私もそれでいいと思う」

 「そうと決まれば、サタルドスには真の魔人化になる練習をしてもらう。このことは後でこの三人にも伝えておくから安心して練習に励んでくれ」

 「そうか、わかった」


 いち早くシハルの記憶は取り戻したいものの、冷静に考えれば、勇者と互角の勝負をしているようじゃ取り返せるものも取り返せない。

 今はサタルドス自身が強くなる以外の選択肢はなかった。

 そうと決まれば、


 「エルフミーラ、頼む」

 「はい、頼まれました」

 「メイシアも!」

 

 その小さな右手を天高く上げるメイシア。

 この子を置いて行くわけにもいかないだろう。

 それにエルフミーラに懐いてるなら話は早い。

 エルフミーラにメイシアを任せながら練習に付き合ってもらう。

 それが理想の形だった。


 「それじゃあ行こっか」

 「はーい!」

 「おう」


 真の魔人化の力を手に入れるため、サタルドスは練習に励むのだった。

 

  

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