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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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五十四話 女の子の名前は・・・

 「いやだー、一緒にいるのー」


 モンスターを飼う籠に着いたサタルドスは少々面倒ごとに巻き込まれていた。

 女の子に散歩としか言ってなかったために起こった問題。

 そう、女の子はドラゴンを籠の中で飼育するのを嫌がったのだ。

 エルフミーラの言っていたことはこういうことだったのか。

 だが、気が付いた時にはすでに遅かった。

 今すべきことは過去を振り返り反省することではない。

 いかにこの状況を切り抜けるかだ。

 相手は十代前後の女の子。

 理屈を並べても恐らく分かち合うことは困難だろう。

 だとしたらどうするのが正解か。

 まずは女の子がなぜ離れたくないのかを聞き出してみよう。

 

 「なあ?どうして離れたくないんだ?」

 「だって、寂しんだもん・・・」


 涙目ながら下を俯く女の子。 

 寂しい・・・か。

 確かにサタルドスもシハルと話せなくて心のどこかで寂しさを覚えているのかもしれない。

 だが、女の子の場合はモンスターに情を注ぐのはよくない。

 このドラゴンのようなモンスターは「災い」のために使われるのだから。

 「災い」のために使われるということはつまり、このモンスターが死ぬことを意味する。

 長い時間、一緒に居る分だけ悲しさはそれに比例して膨れ挙げる。

 この名前を知らない女の子の今後のためにも、それだけは阻止しなければならない。


 「俺はやめた方が良いと思うぞ?」

 「いや!!!」

 「いや、お前のためにもな・・・」

 「いや!!!」


 ドラゴンと一緒に居ることを諦めない女の子は首を縦に振ることはなかった。

 年頃の子はここまで言うこと聞かないものなのか?

 サタルドスは一人っ子だったために年下の子の扱いが分からなかった。

 そのせいでこの状況を上手く切り抜けることができない。


 どうすれば・・・


 その状況を見かねたエルフミーラはサタルドスの肩に手を置いた。


 「本当のことは話さなきゃだめだよ?」


 分かっている。

 だが、いざ話そうとすると心がなぜか苦しむ。

 こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。

 ずっと遠くの昔な気がした。

 そのせいで、人の倍以上に胸が締め付けられたのだ。

 ここは、エルフミーラにまかせよう。

 自分が使い物にならないと悟ったサタルドスは黙ってみていることに。


 「ねえ?ちょっといいかな?」

 「なーに?」


 エルフミーラの問いかけに素直に答える女の子。

 女の子は涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだった。

 そんな女の子にエルフミーラは優しく頭を撫でて、こう告げた。


 「君はドラゴン君と離れたくないんだよね?」

 「うん・・・ごんちゃんとは離れたくないの」


 よりにもよって、このドラゴンに名前と付けていたとは。

 いささか、女の子を諦めさせるのは厄介だった。 

 そんな女の子を、まるで母のようにエルフミーラはなだめた。


 「ごんちゃんか・・・いい名前だね?」

 「いいでしょ!ずっと友達なの!」

 「そっか、でもお友達もずっと君と一緒だったら疲れちゃうよ?」

 「ちゃんと休ませるもん・・・」

 「ごんちゃんも一人の時間が欲しいんじゃないかな?ごんちゃんの気持ちを考えてみて?」


 女の子は無意識にごんちゃんの方を向いていた。

 ドラゴンは生まれて間もないために疲れてしまったのかもしれない。

 大人しく籠の中に入ると、すぐに就寝に入ってしまった。

 疲れてるから起こしてはいけない。

 どんなに小さな子でもそれは分かるみたいだ。

 

 「わかった・・・パパと一緒に居る」

 「うん、そうした方がパパも喜ぶよ?」

 「そうかなー?」


 腕を組み、悩み込む女の子。


 いや、なんか自然な流れで俺がパパになってるけど、パパじゃないからな?

 本当は、そのごんちゃんのパパになる予定だったんだからね?

 君のパパじゃないからね?


 だが、そんなことを言う勇気も度胸もなかった。

 ここで否定して泣かれでもしたらまた面倒なことになる。

 とりあえず話を合わせておくしかなかった。


 「パパは私と一緒じゃないと寂しい?」

 「寂しいよね?パパ?」

 

 いやその言い方だとこの子が俺とエルフミーラの子みたいじゃないか。

 まあ、恐らくそんなことを考えているのは俺だけだろうが。


 ここは寂しいと答えるのが妥当だろう。


 「ああ、寂しいぞ?」

 「そうなんだ、ごめんね?一人ぼっちにして・・・」

 「お、おう・・・」

 

 あれ・・・なんだこれ・・・

 なんかこの子に情けをかけられてる・・・?

 そう気が付いた時には女の子はサタルドスに抱きついていた。 

 なんかこうしているとこの子に愛着が湧くな。

 そんなことを考えていると、サタルドスは今更ながらあることに気が付いた。


 「そういえば、この子の名前は?」

 「んー、サタルドスが決めちゃえば?」

 「俺が決めてもいいのか?」


 まあこの子自身、俺のことをパパと呼んでいる時点で恐らく親はいないのだろう。

 どうしてこの子が現れたのは知らないが、この子に罪はない。

 さて、どんな名前がいいか・・・

 そしてサタルドスは思いついた。


 「メイシアって名前はどうだ?」

 「メイシア・・・うん!いいね!」

 

 メイシア、救世主という英語を少し変えただけなんだが、この子にピッタリ名前だと思う。

 さっそく女の子に名付けることに。


 「いいか?今日からお前はメイシアだ」

 「メイシア・・・うん!メイシアはメイシア!」


 メイシアに名づけを行った。

 だが、シハルのようにドラゴンの入れ墨が入ることはなかった。

 何かのバグか?まあそのうちに入るだろう。

 くっつき虫のメイシアを抱き上げる。

 とりあえずは卵の件やモンスターの件は解決した。

 さて、次にやることはと言うと・・・


 「今度は「災い」について会談があるから広間に向かうよ」

 「なあ、メイシアはどうすればいい?」

 

 会談となると、メイシアの存在は他の暗黒騎士の迷惑となろう。

 そうすればどこでメイシアを待たせるか。

 その場所も考えなければならなかった。

 顎に手を当てて考えるエルフミーラは難しいことを考えることをやめたようにあっさりとこう言った。


 「別に連れてきてもいいんじゃない?害はないだろうし・・・」

 「いや、でもな・・・」

 「だって、寝てるし」

 「え?」


 意識をメイシアの方へ向けてみると、耳元ですやすやと吐息をついている。

 本当に荒らすだけ荒らしていく台風みたいな子だな。

 このままの状態で一人にするのは危ないだろう。

 だったら連れて行くしかないか。


 「分かった。メイシアを連れて広間に向かおう」

 「うん、多分みんな集まってるから」


 さて、あいつらは俺をどんな目で見るのかな。

 エルフミーラ以外、サタルドスが暗黒騎士になった日以降、一度も顔を合わせたことがなかった。

 気が立っていたとはいえ、初日であそこまで暴れたんだ。

 少なくても良い印象は持っていないだろう。

 こうして二人は広間へと向かって行った。

 

 二人が広間に着くと、すでに他の暗黒騎士が揃っていた。

 「暴食」の暗黒騎士、ジェールナ。

 「怠惰」の暗黒騎士、グウィルド。

 「色欲」の暗黒騎士、サキュラバーニ。

 「嫉妬」の暗黒騎士、ゼラン。

 相変わらずのメンツだった。


 「遅くなってごめんね?」

 「大丈夫だよ?おや?そこにいるのはサタルドスじゃないか。どうしてここへ?」


 ゼランが不思議そうに聞くと、エルフミーラは自慢げにこう告げた。

 

 「私が呼んだの!どう?凄いでしょ?」

 「エルフミーラ凄い!あの暴走男を説得した何て・・・」

 「本当に凄いですよ。今日はごちそうですね」

 「エルッチすごーい!!!」


 順番にジェールナ、グウィルド、サキュラバーニがそれぞれコメントすると、ゼランは納得がいかないような顔でこちらを見ていた。

 俺がよく嫌われているのがよく伝わる。

 するとゼランは、躊躇うことなく真っ直ぐサタルドスの方へ向かって行く。

 

 「なんだ?」

 「俺は納得いかないんだが・・・」


 俺がこの場にいることがそんなに気に食わないか。

 いいぜ?決闘でも何でもしてやるよ。

 だが、ゼランの口からは予想外の言葉が返ってきた。


 「その子はどうしたんだ?」

 「・・・・は?」

 「まさか!誰かに産ませたのか!」

 「いや、メイシアはよくわかんないけど風呂場で湧いて出てきたんだ」

 

 信じてはもらえないだろうな・・・だが・・・


 「そうなのか。そんな不思議な現象が起こるものなんだな」

 「え?」

 「どうした?」

 「信じるのか?」

 「え?逆に嘘なの?」

 「嘘じゃないけど」

 

 ゼランは人の話を真に受けすぎじゃないか?

 いつか敵に騙されるんじゃないか心配になるぞ?

 だが、この場においてすぐに理解してもらえるのは助かる。

 さらに言えば、その息遣いをやめてもらえるともっと助かるのだが。


 「ハアハア。この子めっちゃ可愛いな・・・」

 「おい、俺の娘に近づくな」

 「あら、もうすっかりパパね?」

 「エルフミーラその言い方はやめろ」

 「サタッチはパパになったんだ!今日はお赤飯も用意しないと!」


 なんだ・・・?こいつら。

 俺を恨んでないのか?

 殺したいほど憎んでないのか?

 どうやら今までの連中とは違うらしい。

 全く、ようやく人に恵まれたということか。

 俺もこんなことを考えるようになったとは、随分丸くなったものだな。

 これも全てシハルのおかげだ。

 そのためにもシハルの記憶は人間から取り戻す。

 いきなり黙り込んだサタルドスの様子がおかしいと気が付いたゼランはサタルドスに声をかけた。


 「サタルドス?」

 「なんでもない。それよりゼラン。「災い」の話をするんだろ?」

 「あ、ああ、どうだったな」


 ゼランは元居た定位置に戻り、サタルドス達も各々自分の定位置に着く。

 こうして「災い」の会談が開かれたのだった。

 

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