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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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五十三話 あれ?どういうこと?

 サタルドスは風呂場にいるそのモンスターに眼を奪われていた。

 そのモンスターは、頭部から黒い髪を肩ぐらいまで綺麗にまっすぐ伸ばし、手に五つの指。

 そして、足に五つの指を生やしていた。

 それに、肌の色は人間や俺達魔人族と同じ肌色で、年が十歳前後の女の子。

 間違いなかった。

 このモンスターはただのモンスターではない。

 そう、このモンスターは人型モンスターだったのだ。

 その見解に至った時にはサタルドスは外にいるエルフミーラの元へと向かっていた。


 「大変だ!エルフミーラ!」

 「どうしたの?」

 「卵から、人の形をしたモンスターが!」

 「ふふふ、サタルドスも冗談を言うようになったのね」


 微笑みながらサタルドスの肩に手を乗せるエルフミーラ。


 ダメだ、完全に信じていない。

 冗談ではないのに。


 すると、後ろからサタルドスを呼ぶ声が掛けられた。

 誰かが俺のズボンを引っ張っている気がする。

 ゆっくり振り返ってみると、そこには浴槽にいるはずのモンスターが。


 「パパー?」

 「あら、あらあらあらまあ。可愛い女の子だこと。どこから紛れ込んじゃったのかな?」


 エルフミーラ、まだこの状況を理解できないのか。

 エルフミーラの能天気さには困ったものだ。

 マイペースが故に、状況の呑み込みが非常に遅いのだから。

 別にマイペースが悪いと言っているわけではない。

 ただ、もう少し早く状況を読んでほしいという俺の願望だ。

 

 「エルフミーラ、この子が卵からかえったモンスター・・・」

 「クスクス、もう!冗談はやめてよね?」


 いや、冗談じゃないんだが?


 クスクス音を立てて笑うエルフミーラに冷静な対応をするサタルドス。

 どうすれば信じてもらえるのだろうか?

 色々考えて案を練っているサタルドスの横でエルフミーラと女の子が二人で会話をしていた。


 「可愛いーね。どこからきたの?」

 「あっちからきたの」


 女の子は浴槽の方を指さした。

 いや、さすがにこれで分かるだろう。

 だが、いつも斜め上を行くのがエルフミーラというお姉さんだった。


 「んー、あっちの方向だとヘカベル?それともクリシタかな?よくわからないなー」


 そう言って女の子に微笑みかけるエルフミーラ。


 いや、お前に言ってることの方が分からないから。

 なんでそういう解釈になるの?

 なんかいい感じに言った感出てるけど、全然言ってないからね?


 にしても、エルフミーラでもわかるように説明できないだろうか。

 今までで一番頭を使っている気がする。

 その労力をまさかエルフミーラで使おうとは思ってもみなかった。

 だが、彼女の助言は何もわからない俺には必須だ。

 なんとしても理解してもらわなくては。

 唸るように考えるサタルドスに異変を察知した女の子がサタルドスに尋ねた。


 「パパー?何考えてるの?」

 「え!パパ!?」


 パパという単語に驚きを隠せていないエルフミーラ。

 というか、さっきもこの子はパパって言ったよな?

 聞いてなかったのかよ。

 だが、エルフミーラに分かってもらえるなら願ってもない話だ。

 このまま説得させるしかなかった。


 「だから、この子が卵から出てきたんだよ」

 「いや、卵から人は生まれないでしょ」

 「そんな常識を言われても・・・」


 生まれてきたものは生まれてきたんだから。

 この子が卵から生まれてきたという事実を未だ受け止められないでいると、浴室の方から誰かが苦しんでいるようなうめき声が聞こえた。

 その声に一番敏感に反応したのは女の子だった。

 女の子は声のする方へと駆け出していった。


 「お、おい!」


 サタルドスが呼び止めても、女の子は見向きもせずに走り去っていく。

 この後はどう行動をとるのが正解か。

 放っておくのが正解か、それとも追いかけるのか正解か。

 そんなこと考えるまでもなかった。

 あの女の子がやらかさないように見張ってなければいけない。

 どんなに可愛くてもあの子はモンスターなのだから。

 

 「エルフミーラ、ここに残っててくれ」

 「いや、私もついて行くよ」


 こうして二人は浴室へと向かって行った。


 

 二人は浴室の光景に言葉を失った。


 「ねえ、サタルドス・・・これってどういうこと?」

 「俺に聞かれてもな・・・」


 どうしてこうなったのかわからない。

 俺は卵から生まれたはずの女の子に驚愕してエルフミーラの助けを求めて浴室から飛び出した。

 それがいけなかったのか?

 一体何がいけなかったんだ?

 サタルドスがそう思うのも無理はない。

 なぜなら、ドラゴンのようなモンスターが浴槽に浸かっていたからだ。


 卵は孵っていなかったのか?


 確かにサタルドスは卵が孵った後に出る殻を見ていない。


 もし仮にこのモンスターが卵から孵ったとするならば、この女の子は一体どこから湧いて出てきたんだ?

 この女の子は一体何者なんだ?

 俺のことパパって言ってるし、やっぱり卵から孵ったのか?

 でもそしたらこのドラゴンがここにいるのはおかしいし・・・


 数多の謎がサタルドスの脳内を埋め尽くす。

 

 「エルフミーラ、なんでこうなったんだ?」

 「私に聞かれても・・・」


 なぜかドラゴンは女の子に懐いていた。

 顔に似合わず、その強面の顔を女の子の頬に擦り付けている。

 どうやら刷り込みは女の子になってしまったらしい。

 サタルドスがドラゴンに近づこうとすると、ドラゴンは全力の威嚇を繰り出す。


 いや、本当は俺が主になるはずだったんだけどな?


 近づくこともできないサタルドスは一体この後どうすればいいのか。

 エルフミーラに聞こうとも、異例のケースに戸惑いを隠せていない彼女に何も情報は得られないだろう。


 さて・・・どうしたものか・・・


 まずはこの浴槽に浸かるドラゴンをどうにかしないといけない。

 このドラゴンを操れる人間は女の子の他にいなかった。

 

 「おい、ちょっといいか?」


 呼びかけると女の子はサタルドスの元へと戻ってきた。


 「どうしたの?」

 「これからあのドラゴンを動かすから命令できるか?」

 「命令?」


 首をかしげる女の子。

 ちょっと単語が難しかっただろうか。

 俺がこのぐらいの年の頃は理解していたと思うが、分からないのなら仕方がない。


 「今から少しだけお散歩するから連れてこれるか?」

 「あー!わかったー」


 女の子はドラゴンに「散歩だよ!ついてきて!」と一声かけると、ドラゴンは大人しく浴槽から上がった。

 

 「この後、このドラゴンをどうすればいい?」

 「えっと・・・モンスターを飼う籠の中に入れるんだけど・・・」


 エルフミーラはどこか都合が悪そうに言う。

 何かあるのか?

 だが、モンスターを放しておくのはあまりにも危険だ。

 さっそく案内してもらおう。

 するとエルフミーラは、女の子に聞こえないようにサタルドスの耳元で呟いた。


 「何かあったら何とかしてよね?」

 「何のことだ?」


 本当に訳が分からない。

 だが、このままでは時間がかかって仕方がない。

 サタルドスは女の子について来いと一言だけ言った。

 すると女の子は「行こ?」とドラゴンに語り掛け、ドラゴンも大人しく付いてくる。

 こうして、モンスターを飼う籠の部屋へと向かって行った。

 もちろん、女の子は何も知らないで・・・

  

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