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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
二章 暗黒騎士編
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五十一話 「災い」のモンスター

 「なんで俺が「災い」に出なきゃいけないんだ?」

 

 エルフミーラの意図を正確に読み取ることができない。

 彼女は一体何を考え、サタルドスにそのような案を持ち掛けたのか。

 こっちは一刻も早く、シハルを助けたいと思っているのに。


 「あら?ダメ?」

 「俺は早くシハルを助けないと」

 「でも一人で?」


 ああ、一人に決まっているだろう。

 シハルはいないし他にパートナーはいない。

 そんな哀れなサタルドスにエルフミーラは事の作戦を大まかに伝えた。


 「私が考えたのは、「災い」を引き起こしている時にあなたがシハルの記憶を取り戻しに行くの。「災い」の最中だと戦力は分散するから戦いやすくなると思う。あとはサタルドスの力量で何とかなるでしょ」


 確かにその作戦は名案だった。

 敵の戦力が分散すれば少しは戦いやすくなる。

 今の俺に適した戦略だった。

 エルフミーラはいつもほんわかしていて何を考えているかわからなかったが、意外とまともなことを言うじゃないか。

 サタルドスには、エルフミーラの作戦を断る要素はどこにもなかった。


 「いいだろう。協力してやる」

 「いや、当たり前でしょ?約束なんだから」

 「約束・・・?」


 サタルドスは忘れていた。

 この部屋に来る前にエルフミーラと交わした約束を。

 そして、その交わした約款も相手に言われる間もなく、自らの頭で思い出すことに。


 あー、そう言えばそうだった。


 暴れたらずっと言うことを聞く。それがエルフミーラと交わした約束だった。

 いやどう考えても、わかっててその約束を取り決めたのだ。

 サタルドスが暴れるはずだと。

 大切なパートナーをこんな目に合ってて暴れない奴の方が少ないと思うのだが?

 それに、エルフミーラは無意識に記憶を消去しているという部分を俺が暴走するまで明かさなかった。

 どう考えたって完全に狙った犯行としか思えない。

 まあ、約束を破ったことは揺るがない事実なんだが。


 仕方がないか・・・

 

 「それで、この後俺はどうすればいいんだ?」

 「そうですね、まずは私と一緒にお風呂に来てください」

 「・・・は?」


 こいつ、まじで何言ってんだ?

 お風呂?エルフミーラと?一緒に?

 なんで俺がエルフミーラと一緒にお風呂に行かなければいけないんだ?


 確かに、エルフミーラは美人で可愛いお姉さんだが、サタルドスにはシハルという心に決めた女性が。

 だから、なんとしても断らなくてはならなかった。

 

 「俺はエルフミーラと一緒にお風呂に入ることはできない」

 「あれ?約束は?」

 「・・・・・」


 クソ!何も言えねえ!

 その権利、今思ったがマジでずるくないか?

 これから俺はエルフミーラに逆らえないってことじゃないか。

 こんなことになるなら一回とか期限付きにしておくべきだった。

 さすがにずっとは最強すぎる!


 だが、これも全てサタルドスがやらかした失態が原因だ。

 どうにかして受け入れるしかなかった。

 だが、

 

 「あのサタルドスは何か勘違いしてるけど、私は一緒に来てって言っただけで、一緒に入るって言ってないよ?」


 ・・・・確かに思い返してみるとそうだ。


 エルフミーラは来いと言ってだけで入るとは言っていない。


 おいおい、まさか恥をばら撒いただけなのか!


 何か弁論を言うにしても、すでに遅かった。

 エルフミーラはニヤニヤした顔で、


 「あれれ?もしかして一緒に入りたかった?」

 「別に入りたくなんか・・・」

 「いつものサタルドスはどこに行っちゃったのかなー?」


 この野郎。人の弱みを道具にして遊ぶのがそんなに楽しいか。

 やめろ!つんつんするのはマジでやめろ!

 だが、落ち着け俺。

 ここで暴走なんかすればエルフミーラの思うツボだ!


 ここは無理やりにでも話題を変えなければ。


 「そんなことより、なんで風呂に一緒に行かなきゃいけないんだ?」

 「あれれ?都合が悪くなると逃げるのかな?」

 

 おいおいお、いい加減しつこいぞ!


 と、言い出したいところだが、我慢するしかない。

 言ってしまえば、エルフミーラのいじりに終止符のピリオドを打つことはできない。

 冷静沈着、クールに。

 そうだ、これからはそのキャラ設定で行こう。

 

 「はあ、それより訳を聞いていいか?」

 「はあー、反応がなくてつまんないなー」


 エルフミーラは諦めたようにサタルドスのいじりをやめた。

 そしてエルフミーラは、なぜ風呂場に向かうのか理由を語った。


 「そろそろモンスターを孵化させないとと思って」

 

 モンスターを孵化?

 あいにく、俺はモンスターの卵は持っていな・・・


 サタルドスは自分が卵を持っていたことをすっかり忘れていた。

 これもシハルの記憶消去が伝播したものなのだろうか?

 いや、これは単にサタルドスが忘れていただけだな。

 だが、この卵だけは絶対に孵化させたくない。

 孵化させれば、あのやかましく、可愛らしさの欠片もない声を発する猿が生まれてくるのだから。


 「一応卵は持っているんだが、この卵は孵化させたくない」

 「どうして?」

 「やかましい猿が生まれてくるからだ」

 「猿?」


 不思議そうにサタルドスを見つめるエルフミーラだったが、ふとした瞬間いきなり口を大きく開けて笑い出したのだ。


 「ハハハ!!!何言ってるの?その卵は暗黒騎士が従えるモンスターが入っているんだよ!そもそも猿って卵から生まれないでしょ!」


 猿は哺乳類だ。

 決して卵から生まれてくることはない。

 そんな簡単なこと、今までなんで気が付かなかったのだろう。

 気が付いていればこんな辱めを受けずに済んだのに。


 「それでどんなモンスターが生まれてくるんだ?」

 「さっきから話の切り替えが早いね?どうかした?」


 どうもこうもあるか!お前がいちいちつっこんでくるからだろうが!


 このままでは話が進まない。

 だから、サタルドスが切り替えているというのに。

 まあ、馬鹿にされているのを避けたくて切り替えてるというのもあるのだが。


 「とにかく、何のモンスターが生まれてくるんだ?」

 「人それぞれだよ?私はキツネちゃんだったけど」

 「そのキツネちゃんはどこにいるんだ?」


 見た限り、どこにもキツネらしき動物は見当たらない。

 従えるということは離れず付きそうということじゃないのか?

 そうか、モンスターはあくまでモンスター。

 断じてペットのようには使わないようだ。

 そしてサタルドスは一つの答えに辿り着いた。

 

 「まさか、そのモンスターを「災い」に使っているのか?」

 「ピンポーン。「災い」が起こる前に放つモンスターは今から孵化させるモンスターってことだよー」

 「そういうことだったのか」

 

 自らが孵化させたモンスターが殺されるのに何も感じないのか?

 まあ、俺自身も孵化させたモンスターが死んでも何も感じないから、そういうものなのだろう。


 でも、シンズベアーのようにタダで死ぬのは全く面白くない。

 そこでサタルドスはあることを思いついた。


 「そのモンスターは育てられないのか?」

 「まあ、育てられるけど、無理だと思うよ?」

 「どういことだ?」

 

 育てればタダ死ぬことはない。

 寧ろ、勇者サイドにとっては厄介な存在になる。

 それが叶わない理由って一体何なんだ? 

 理由を示さないと分からないサタルドスにエルフミーラはきちんとその訳を示した。


 「知性が低い魔物をモンスターと呼ぶの。だから何を指示してもわからないし、鍛え上げることもできないんだよ」 

 「そういうことか」


 ようやく理解した。

 モンスターは知能が低い分、指示しても思い通り動かないし、訳の分からない行動を起こすということか。

 そうだとしたら、やはりタダ死にするのがモンスターの役目なのだろう。


 「とりあえず、一通り分かった。さっそく風呂場へ行こう」

 「それじゃあ、案内しますね」


 こうして二人は、卵を孵化させるために風呂場へと向かって行った。

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