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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
一章 「災い」編
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十八話 育成途中に見つけた発見

 モンスター討伐へ向かう途中にあることに気が付いた。


 「そういえば、朝ご飯食べてないですね」

 「そうだな。俺は大丈夫だが、ヒトリアはどうだ?」

 「私も大丈夫です」


 その受け答えとは裏腹に彼女のお腹がグーっと深くなった。


 「我慢しなくてもいいんだぞ?」

 「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・ちょっと待っててください!」


 すると、ヒトリアは近くに開店していた一つの屋台へと走っていった。

 その場で待たされる剣二。

 ヒトリアはいつから剣二に遠慮しなくなったのだろうか?

 まあそれはそれで良いことなのだが。


 「お待たせしました!」


 剣二の元へ帰ってきたヒトリアの手には見たことのある食べ物があった。


 「ヒトリア。それは?」

 「あ、クラープという食べ物らしいです!」


 クレープじゃなくて?

 そうつっこみそうになったが、読み間違えることなんてまずないだろう。

 ヒトリアの食料が買えたところで準備は整った。


 「それじゃあ、行くぞ」

 「はい!」


 剣二の傍らでクラープを少しずつ食べている。

 彼女の顔を見る限りとてもおいしいのだろう。

 良い笑顔で食べていた。

 そして、丁度食べ終わった頃に外の世界へと繋がる門に着いた。


 「いくぞ」

 「はい」


 「災い」に対抗するには力をつけなくてはならない。

 雑魚相手にやられるのは剣二のプライドが許さない。

 それを胸に、剣二達は門の外に一歩を踏み出した。

 ヘカベルの時は辺り一面草原だったが、今回はかなり違う。

 広がっていたのは、広大な砂漠。

 草原とは違った意味で辺りは何もなかった。


 「どんなモンスターがいるかわからない。気を引き締めていくぞ」

 「はい、剣二様」


 砂漠に足を踏み入れると、思った通りに動きづらかった。


 「やはり動きづらいな。まあ良い練習になるか」

 「剣二様!あそこに何かいます!」


 ヒトリアが指をさす方をなぞるように見てみるが、何もない。


 「ヒトリア。本当にいたのか?」

 「確かにいました!」


 次の瞬間、足が思うように動かなくなった。

 間違いなく、これは・・・


 「蟻地獄だ。ヒトリア気をつけろ」

 「は、はい」


 吸い込まれるように下へ下へと落ちていく。

 このままでは生き埋め状態になる。

 かといって、敵がどこにいるのかわからない。

 蟻地獄は渦を巻いている。

 もしかしたら・・・


 「敵はこの砂の中か?」


 渦を巻く蟻地獄に刃を入れるも、何かに当たった感触がない。

 何か方法はないか。

 敵をあぶり出せれば。


 「一か八かだ」


 剣二は思いついた作戦を実行に移す。


 「ヒトリア。この一帯の砂を持ち上げることはできるか?」

 「あ、はい。この辺りだけなら・・・」

 「頼む。俺ごと上に持ち上げてくれ」

 「分かりました」


 ヒトリアは魔法を唱えた。


 「テンペストウィンドウ!」


 名の通りに嵐のように砂は風に乗って天高くへと舞い上がっていく。


 「あいつ、ここまでの能力が使えるのか!」


 ヒトリアの戦闘は今まで剣技しか見たことがなかった。

 この技を目の当たりにした剣二はというと、


 「やっぱり遠距離攻撃に限るよな」


 元々、中距離・遠距離を専門とする剣二にとって魔法は素晴らしいものだった。


 「それはさておき・・・敵は?」


 剣二が辺りを見渡すと、何やら甲殻が太陽に反射して何かが輝いている。


 「見えた!おおおおおおおおおらぁ!」


 刀を嵐の風向きに合わせて切り刻んでいく。


 ぎえええええええ


 奇妙な声が砂嵐の中で響き渡る。

 手ごたえあり。

 砂嵐が収まると、そこには大量の蟻が空を舞っていた。


 「ヒトリア!奴らが砂に潜る前に片付けろ!」

 「はい!」


 空中を舞う蟻を片っ端から切り刻む。

 逃した獲物を下にいるヒトリアが仕留めていく。

 こうして、蟻地獄を引き起こしていた蟻を大量に撃退することに成功した。


 「剣二様!やりましたね!」

 「ああ、大量収穫でアイテムもたんまりだ」


 この大量の蟻が一丸になって渦を作っていた。

 それが蟻地獄の正体だった。

 というか、文字通りだな。


 「剣二様。もう少し先に進んでみましょう」

 「そうだな、行くぞ」

 「はい」


 さらに先へ進むとサソリのようなスコルピオ・ナイトという人型サソリに遭遇した。

 人のような体系からサソリのような尾を兼ね備えている。


 「あの尻尾には気をつけろよ」

 「はい」

 「それじゃあ、行くぞ!」

 「はい!」

 シエエエエエエエ!


 人型なのだからもう少しマシな発言を願いたいものだ。

 スコルピオ・ナイトは両手のハサミを攻撃の軸にしながら、油断ができた隙に尾の針で一撃で殺すと言った戦法のモンスターなんだろう。

 だが、手の内が分かればこっちのものだ。


 「ヒトリア、援護魔法を」

 「はい!パワーテンション!」


 正直、できないものだと思って無茶ぶりを言ったのだが、どうやらこのエルフは何でもできるらしい。

 この能力さえ使えれば鬼畜貴族なんて始末できただろうに。

 だが、ヒトリアのおかげで攻撃力が大幅上昇した。

 これなら、


 「うおおおおおおお!」

 グィエエエエエエ!


 剣二の神速剣で両手を切り落とされ気持ち悪い言葉を発するスコルピオ・ナイト。

 攻撃手段が失われたのを理解したのか、尻尾で攻撃してくる。

 だが、そんなことは予想内の範疇だ。

 尾を切り落とし、とどめを刺す。


 ギュエエエエエエエエ!


 気色悪い声と共に消失する。

 そして、アイテムを獲得した。


 「よし、この調子でどんどん倒すぞ」

 「はい!」


 二人はスコルピオ・ナイトを時間の限り倒し続けた。


ーーーーーーーーーーーー


 「こんなものか」


 日が暮れ始め、装備ステータスから「道具」を見てみるとアイテムが格納されていた。


 「「アイアント・ゴーレムの甲殻」と「スコルピオ・ナイトの甲殻」。それに・・・」


 何やらまた変わったものが格納されていた。


 「「スコルピオの紫電玉」?」

 「何でしょうかね?」

 「分からないが、一個しかないということはサファイア・ミネラルの時と同じレア素材何だろう」

 「そうなんですか!やりましたね」

 「これで、ヒトリアの武器が作れるな」

 「え?」

 「何か変なこと言ったか?」


 剣二は至って普通のことを言ったはずだ。

 だが、ヒトリアには普通ではなかったらしい。


 「その素材、今度は剣二様が使ってください!」

 「いや、俺が使ってもどうせ刀以外装備できないし」

 「それじゃあ、刀を作ってもらいましょう」

 「簡単に言うけどな、刀という概念がこの世界にないんだ。作る前に「災い」がきたら何も意味ないだろう」

 「そうですけど・・・」


 何かが納得いかない様子。

 恐らく、サファイア・ミネラルの件もあり負い目を感じているのだろう。

 感じる必要なんてないのに。


 「だから、ヒトリアの武器を作った方が戦力が上がる」

 「そうですが・・・」

 「それに、その武器。子供用で作ったからもう小さいだろう?」


 彼女自身大人の姿になったから余計に武器が小さく見えてしまう。


 「だから、ヒトリアが使ってくれ」

 「・・・わかりました」


 分かったと言ってもまだ納得していない様子だった。

 全く、ヒトリアは頑固な子だったっけか?

 

 「刀を作れるようになったら、俺も武器作るから。それまでは生き残るためにヒトリアの戦力を上げよう」

 「約束ですよ?」

 「ああ、約束だ」

 「そうと決まればさっそくアイテムの換金と武器屋に行きましょう」

 「そうだな」


 新しいおもちゃを買ってもらったような子供の顔をするヒトリア。


 最初から素直になっとけば話は早かったのに。


 そんなことを思いながらも、剣二とヒトリアはペランへと帰還するのだった。


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