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『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
三章 ヘルバトス編
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百十八話 蘇生術

 「なあ?仲間になったのは良いんだけどさ。俺死んでるよね?生まれ変わりでもするのか?」

 

 ヘルバトスは魔界の一室で息を引き取ったことになっている。

 だとすれば、一度転生し、再びサタルドスたちに会うことが仲間になる条件になってくるのだが、彼らは再び手を差し伸べてくれるだろうか。

 不安に陥るヘルバトスにテレナシアは、とっておきの提案をした。

 その提案は、世の理から大きく外れているため、本来ならやってはいけないことだった。

 

 「話は簡単だよ。キミは一度死んだ、そうだよね?」

 「そうだが、一体どうする気だ?」

 「簡単だと言ったでしょう?死んだ君を蘇らせるんだよ」

 

 ヘルバトスは耳を疑った。

 死人を蘇らせるという行為は、人間の範疇を超えているからだ。

 驚くヘルバトスに対して、テレナシアは後に続くように綴った。

 

 「まあ、正確には融合させるんだけどね」

 「融合?誰かの体を乗っ取るってことか?」

 「ボクってそこまでクズな女だと思われてるのかな?」

 「俺はそうだと思うけど、違うのか?」

 「一人の女の子になんて言う!ボクは悪魔じゃないよ?正しい世界を求める清楚な女の子なのさ」

 「清楚って使い方、間違えてないか?」


 清楚という言葉は、書いて字の通り、清らかですっきりしていることを指す。 

 どう考えても、テレナシアの使い方は間違えてると言える。

 まあ、そんなことはどうでもいいのだが。


 「そんなことより、融合って一体誰と融合するんだ?」

 「君は勘が鋭いんだか、鈍いんだかよくわからないね」

 「いや、常識の範疇を超えたこと言われて、理解できる奴なんていないだろ」

 「まあ、それもそうか。なら、教えよう。ボクが君と融合させようとしているのは、『氷龍王』の体さ」

 「ーーは?『氷龍王』の体?」


 テレナシアは一体何を言っている?

 『氷龍王』の体は、遥か昔に消滅している。

 ヘルバトスの中に残っているのは、『氷龍王』としての記憶の欠片(かけら)だけだ。

 意思を融合ならともかく、体を融合?

 全くもって意味がわからなかった。

 ヘルバトスが理解していないことを悟ったテレナシアは、彼を馬鹿にするように言った。


 「体っていうのは、頭から足までの全体のことを指すんだよ。わかったかな?」

 「いや、馬鹿にしてるのか?俺がわからないのはそこじゃないんだよ」

 「いやー、ごめんね。本当はわかってたんだけど、ちょっとだけ君を小馬鹿にしたかったんだよ」

 

 笑顔で謝罪の文を述べるテレナシア。

 なんでも笑顔で謝れば済むと思っているのだろうか?

 だとしたら、一度懲らしめてやらないといけない。

 だが、それは今じゃない。

 テレナシアが機嫌を損ねて、口を割らなくなってしまったら、真相を知らないまま体を融合しないといけなくなってしまうからだ。

 ヘルバトスは必死に不満を抑え、


 「い、いや、別にいいんだけどさ。それより体を融合させるってどういうことなんだ?しかも、その融合相手が『氷龍王』って。『氷龍王』の肉体は、とうの昔に滅びているんじゃないか?」

 「そうだよ?確かに、彼の肉体は昔に消滅した。だけど、彼の肉体はそれだけじゃないんだよ?」

 「もうお手上げだ。さっぱりわからん」


 両手を軽く上げ、降参の意思表示をする。

 そんなヘルバトスを目にしたテレナシアは、右手を頬に当て、疑問の視線を彼に送った。


 「おかしいな。ここまで言わないとわからないのか。己の過去と向き合い、君は何をその目に焼き付けてきたんだい?」

 「己の過去・・・?だが、俺が追体験した過去と本当の過去は違うんだろ?結末が同じでも中身が違う。テレナシアもそう言ってたじゃないか」

 

 テレナシアは確かにそう言っていた。

 追体験した過去と本来の過去は、結末が同じでも過程は全く異なると。

 己の過去と向き合う?向き合ったところで龍王がいた時代に何が起こったかぐらいしか得るものはない。

 追体験はあくまで追体験。ヘルバトスにとっては、それは空想の物語でしかなかったのだ。

 一体これ以上の何を得るものがあるというのか。

 全く理解が及んでいない様子のヘルバトスに、テレナシアは溜め息を一つ吐いた。


 「はぁー、君の頭は実に固いね。物事を柔軟に考えることはできないのかい?」

 「ご存知の通り、ヘルバトスとして生まれてから頭を酷使したことがないんでね。頭の固さは人一倍なんだよ」

 「誇らしく言うことじゃないね?そんな哀れな少年に仕方なく教えてあげよう。体を融合させるというのはどういうことかを」


 ーーうっせぇ。と直接本人に言ってやりたかったが、話す権利はテレナシアにある。

 テレナシアの機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。

 ヘルバトスは心の中でそっと呟くことに。


 「ーーんで?どういうことなんだ?」

 「君は『氷龍王』の最期の結末を覚えているかい?」

 「もちろんだとも、俺とテレナシアが共倒れしたやつだろ?」

 「それだよそれ。そこまで分かれば自ずと答えは見えてくるでしょ!」


 期待の眼差しを向けられる中、ヘルバトスは必死に考えた。

 だがーー


 「悪い、やっぱりわからないわ」

 「もう!なんでわからないのかね!ボクが君の複製体を作ったってことだよ!どうしてここまで言わないとわからないんだい!?」

 「ーーは?」


 簡単に流してはならない言葉が耳についた気がした。


 ーー複製体?一体なんだそれは!どういうことか、ちゃんと説明してもらわねーと!


 「テレナシナ、複製体って一体どういうことだ?」

 「そんな怖い顔しないでよ、結果的には役立ったんだからさ」

 「茶化すな。それで?複製体ってどういうことだ?」

 

 誤魔化そうとするテレナシナだったが、ヘルバトスは話の脱線を決して許さない。

 ヘルバトスの鋭い眼光を前にして、テレナシナは複製体とは何かを語り出した。

 

 「複製体・・・すなわち、ボクが『氷龍王』の肉体から全てコピーを取って再現したわけさ」

 「一体どうやってコピーを取ったんだ?」

 「最期の結末を覚えているというのに、まだわからないのかい?」


 呆れ返るテレナシア。

 彼女がそう思ってしまうのも無理はない。

 だって、すでに答えは告げられているのだから。

 ヘルバトスは最期の結末とコピーがどう繋がるのかその固い頭で考えた。

 ヘルバトスが体験した過去と本来の過去。

 どちらも結末は同じで、体をテレナシナに乗っ取られたまま、ヘルバトスは自害した。

 そして答えを導き出すのに、長い時間はかからなかった。


 「まさか、俺の体を乗っ取っている、あの時か」

 「ピンポーン!ようやく答えに辿り着いたね。まあ、正確には他の龍王と戦っている時にはもう複製体は完成していたんだけどね?」

 「何のためにそんなことをしたんだ?それなりの理由があるんだろう?」


 ヘルバトスの質問に対し、テレナシナはまるで馬鹿にするかのような笑いを見せた。


 「君は本当にお馬鹿さんだね?何のためってそんなの決まってるでしょ?あとで自分の戦略兵器にしようと思ったからだよ。せっかく『氷龍王』の体の中に入れたのに何もしないのは、あまりに勿体無いだろ?」

 「お前・・・やっぱり悪魔だ」

 「えー、誰だって同じことすると思うよ?ボクだけ悪魔だって言われるのは納得いかないなー」


 不貞腐れるテレナシア。

 そんなテレナシアにヘルバトスは、


 「同じことはするだろうけど、兵器には使わないと思うけどな」

 「えー、普通に考えて、自強化するより戦力増やした方が良くない?」

 

 確かに、自身を強化するよりも、強い味方を増やした方が戦闘において、戦略的優位に立てると言えるだろう。

 だが、問題はそこではないのだ。

 問題なのは、その複製体をどう融合させるかだ。

 ヘルバトスはテレナシナにその問題を率直にぶつけた。


 「一体その複製体を、どう融合させる気だ?」

 「そんなの大賢者であるボクにかかれば、触れるだけで融合させることができるよ」

 「ーーなんでもありかよ」


 この大賢者に不可能の文字はないのだろうか。

 だが、蘇生が可能と分かれば、さっそくテレナシアにお願いする他ない。


 「テレナシア、頼む。俺とバルカンの複製体を融合させてくれ」

 「言われるまでもなく、わかっているよ。それからこれも肌に離さず持っていて?」


 そう言って渡されたのは、一つの指輪。

 輝く紺色の宝石が一つ埋め込まれた、黒リング。

 この指輪が、ヘルバトスに何をもたらすのかわからなかった。


 「ーーこの指輪は?」

 「この指輪に魔法を吸わせれば、ボクの魔法値が回復するというわけさ。ボクも彼の回復を少なからず祈っているからね」

 「なるほどな、六純天使を殺す前に『呪い』を解けるかもしれないというわけか。確かにテレナシアならできるかもしれないな」

 「そうだろ、そうだろ!ボクは多種多様の魔法を使いこなす大賢者だからね!」


 自慢気に言うテレナシアは、とても頼もしく見えた。

 現状、テレナシアほど頼りになるやつはいない。

 だからヘルバトスは、テレナシアに協力の要請をしたのだ。


 「わかった。それでこの指輪にはどうやって魔法を吸収させるんだ?」

 「何も深く考える必要ないよ。魔法値があるやつを殺せば自動的に吸収される仕組みになっているから」

 「ほう?それは便利だ」


 指輪の使い方も教わったことだし、もうここに留まる必要はない。

 ヘルバトスはテレナシアに頼んだ。

 

 「テレナシア、よろしく頼む」

 「任せておいてよ。失敗は絶対にしないから!」

 「え、これ失敗とかあるの?」

 「冗談だよ、失敗はしないから」


 ーー不安を煽るようなことを言うのはやめてほしい。

 

 ヘルバトスの額にテレナシアの手の平が添えられ、


 「それじゃあ、世界のことをよろしく頼んだよ?」

 「わかってるよ、全てが丸く収まるよう善処するつもりだ」

 「世界がどうなるかは君にかかっている。だからーー」


 突然、視界が白い光に包まれ、最期に放った彼女の言葉が、鼓膜を通して脳に伝達される。


 ーー気をつけて・・・


 その言葉を最期に、ヘルバトスは現世へと蘇ったのだった。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!

ブックマーク・評価をつけてくださった読者様方、本当にありがとうございます!

これからも執筆に励んでいきたいと思います!

ヘルバトス編はここで終わり、次から新編がスタートします!

今後ともよろしくお願いします!

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