↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『六宝剣』に選ばれなかった異端者  作者: うちよう
三章 ヘルバトス編
116/139

百十五話 最期

※グロテスク成分あります・・・

 バルカンは、必死にテレナシアから奪われてしまった自身の体を取り戻す方法を考えていた。

 気を張ってみたり、何もない空間に魔法を放ったりしてみたものの、精神を乗っ取ったテレナシアには届いていなかった。


 どうすれば・・・っ!早くしないと・・・っ!早くしないと・・・っ!


 映像には、メネツェアの戦っている姿が映し出されている。

 テレナシアはメネツェア以外の他の龍王をすでに殺したと言っていた。

 耳にしなくても、彼女に見せられたその光景が未だ脳裏に焼き付いている。

 この状況を何とかしないと、ベクトやゼクスシードのようにメネツェアまで殺されてしまう。

 焦れば焦るほど、何も案が思い浮かばなくなってしまうのは言うまでもない話だ。

 バルカンもそれはよく理解している。

 だが、どうしても焦ってしまう。

 メネツェアが助かるかどうかは、バルカンがテレナシアに打ち勝つことができるかにかかっているのだから。

 

 やばい・・・っ!何か・・・っ!何かないのか・・・っ!

 

 メネツェアの戦っている姿を目にするだけで、焦りが増していく。

 

 なんで!なんで何も思いつかないんだよ!なんでこの頭はいつもポンコツなんだ!


 自分を責め立てるバルカンは、頭をこれでもかというぐらい殴り続けた。

 脳に刺激を与えることで、新しい発想を得られると無意識に考えていたのだろう。

 しかし、得られたのは名案ではなく痛みだけだった。

 

 くそっ!くそくそくそっ!


 早くしなければメネツェアがテレナシアにやられてしまう。

 バルカンの中で焦りという感情が膨れ上がる。

 そんな中、バルカンの目に一つの光景が焼きつく。

 それは、メネツェアが自身の体を焼き尽くしている光景だった。

 肌の色は炭色へと変色しており、呼吸も浅かった。


 なんで・・・っ!なんでなんでなんで・・・っ!なんでだよ・・・っ!


 急いで、テレナシアから体のコントロール権を取り返そうと、頭を床に強く叩き続けた。

 意識を強く持てば、テレナシアからコントロール権を奪えると思ったからだ。


 早く・・・っ!早くしねーと・・・っ!アイツまで死んじまう・・・っ!


 自分を傷つけることは頭だけに留まらず、ついには体も傷つけ始める。


 クソ!なんでなんだ!お前の体だろ!しっかりしろよ!おい!思い通りにさせていいのかよ!


 頭や体からは多量の血が噴き出ているが、それでもまだ痛め続ける。

 そして、映像に映し出されるメネツェアが灰のように消失した時、バルカンの頭の中は真っ白になった。


 どうして・・・どうして助けられなかったんだよ・・・お前は・・・


 完全に気が抜けているバルカンだったが、それは数分の間だけだった。

 我に返った時には、自身の頬を躊躇なく思い切り殴り続け、


 どうして!どうしてお前は役立たずなんだ!お前は!なんでそこまで役立たずなんだ!お前は!何にも変わっちゃいねーじゃねーか!クソが!クソがクソがクソが!


 自身の無能さが大嫌いだ。


 バルカンの歯が数本床に落ちており、次第にはその自身の歯を足で粉々にした。

 自分の存在が許せない。

 だが、それ以上に許せない存在が一人。

 バルカンの体を乗っ取り、龍王達を殺した極悪人。

 バルカンは全てが許せなかった。

 

 お前だけは・・・!お前らだけは絶対に許さない!俺はお前を許さない!


 バルカンは己の胸に竜人固有の硬い手を思い切り突き刺した。

 


ーーーーーーーーーーーーーーー


 

 頭の奥が焼けるように熱い・・・氷龍王である君が何かしたのか?


 激しい頭痛の正体は突き止められたが、肝心のその原因が分かっていなかった。

 バルカンは一体何をしたというのだろうか。

 テレナシアはバルカンを閉じ込めている、意識の中へと潜り込もうとしたが、


 どうしてだ!?どうして意識の扉が開かないんだ!?


 普段通りなら意識の中へ入るための扉を想像し、その扉を潜るだけなのだが、どうもそれが上手くいかない。

 バルカンは精神系魔法が使えないことは事前調査で把握済みだ。

 だからこそ、テレナシアには分からなかった。

 その得体の知れない恐怖に立ち向かいながら、テレナシアはメネツェアと約束を交わしていた二人の抹殺をさっさと終わらせようとしたその時、


 「それ以上近づくな」


 その言葉と共に強い衝撃がテレナシアの体を襲う。

 その衝撃で体の半分が麻痺したのだろうか。

 体の半分がまるでいうことを聞かない。

 不幸中の幸い、麻痺感覚がない方の手で刀を持っていたため、テレナシアは片足を引きずりながらでも、リアラ達を殺そうとした。

 だが、妙なことが起こった。

 体が全く前に進まない。

 まるで、麻痺した足が踏ん張っているようだった。


 まさか・・・


 テレナシアの思考がそこまで辿り着いたところで声が掛けられた。

 リアラでもドレイニ―でもない、ましてやテレナシアでもない、男の声だった。


 「随分とやってくれたな?このクソが」

 「なるほど、体の半分を乗っ取ることに成功したわけか。君は精神魔法を使えなかったはずだけど、どうやって表に出てこれたのかな?」

 「そんなの知るか、それよりお前はここで死ね」


 バルカンは自由に動かせる片手を、テレナシナがコントロールする顔へと持っていき、そのまま握り潰す。

 それを妨害するように、テレナシナはバルカンの手に刀を突き刺すが、バルカンは顔から手を離さない。


 「お前は生きてちゃいけない存在なんだ。罪深き極悪人だ。そんなお前はさっさと地獄に落ちろや」

 「・・・お父さん?」


 バルカンの存在に気がついたのか、怯えて声が出せなかったリアラが久しぶりに声を出した。


 「リアラ・・・」

 「お父さん!お父さん!」

 「うるさい!静かにしろ!」

 「!?、リアラ!よけろ!」


 完全に取り乱しているテレナシアはリアラに向けて刀を投げつけた。

 一瞬の出来事だった故に、バルカンも反応が遅れてしまった。

 無論、リアラも。

 刀はリアラの胸に一直線へと飛んでいき、そのまま突き刺さった。


 カハ・・・っ!


 リアラの口から血が飛び出す。

 その刀を抜いて、治癒魔法を使いたいところだが、テレナシアがかけた『ステイト』のせいで身動きが取れない。

 

 「リアラ!リアラ!!!」


 バルカンは必死に彼女に呼びかけたが、まるで反応がない。 

 次第に、刀の刺し込み口から血が滴れ、地にポタポタと落ちる。


 「お前!なんでそんなことをした!?」

 「なんでって、そんなのうるさかったからに決まってるでしょ?」

 「貴様ー!ぶっ殺してやる!」


 バルカンは捨て去られた『氷龍槍』をその手に呼び寄せ、それを心臓の方へと向けて、


 「貴様はここで俺と死んでもらう!」

 「無理でしょ?だって君には『根性』があるじゃないか」


 テレナシナは一つ大きな勘違いをしている。

 誰がいつ『根性』は不死身だと言ったか。

 だが、テレナシアに抵抗されないとなるとバルカンにとっては都合の良い話だった。

 バルカンは『氷龍槍』を自身の胸へ貫いた。

 バルカンの思った通りだ。

 予想外の出来事にテレナシナが動揺している。


 「なぜだ?『根性』は不死身のユニークスキルのはずじゃ?」

 「不死身のスキルだ?ハ、そんな無敵のスキルがあるはずねーだろ。『根性』はな、攻撃直前に『死』を意識しない限り発動しねーんだよ!」


 バルカンの言っていることは辻褄があっていた。

 戦闘において、『死』を意識しないで戦っている奴はまずいないだろう。

 テレナシナは『根性』など忘れて、無意識に『死』を認識していたのだ。

 これが長年の経験というものだろう。

 だが、テレナシアは戦闘以外での攻撃は今まで受けたことがなかった。

 その結果が、テレナシナの『死』へと結びついたのである。

 

 「まあ、いいさ。ボクの目的はこれで達成されるのだから」

 「それはよかったな?俺も目的が達成できて何よりだ」

 「ほう、それは一体?」

 「お前を殺すことだ」

 「なるほど、それはよかったね?」


 テレナシナは前触れもなく、いきなり微笑んだ。

 龍王三体と一体の竜人を殺したと思えないほどの輝かしい笑顔だった。

 その言葉を最後に、バルカンとテレナシナの意識は途絶えた。

 

本日も最後まで読んでいただきありがとうございます!

ブックマークをしてくださった読者様、本当にありがとうございます!

更新の励みになっております!

今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。