百話 悲劇
※本日もグロテスク成分多めです・・・
日が西に沈みかかっている。
一体バルカンはどのくらいの時間気絶していたのだろうか。
リアラの試合を観戦していた時には、日は真上からじりじりと大地を照らしていた。
そこから逆計算すると、おおよそ二時間から三時間と言ったところだろう。
その気絶している数時間の間にリアラとドレイニ―の試合が行われていたわけだが、果たしてどちらが勝利を掴み取ったのだろうか。
リアラは他の竜人と比べて、実力が飛び抜けていたのは言うまでもない話なのだが、それはドレイニ―も同じことだった。
ドレイニ―は時間を巧みに操ることができる「古龍」。
それに加えて上級魔法が使えるとなると、まさにこの時代の選ばれし竜人と言える。
そんな彼女とリアラが対決したらどのような結果になるのだろうか。
考えるだけでも胸が躍るのだが、今更会場へ向かったところで観衆すらいない始末だろう。
リアラの試合を最後まで見届けられなかったことは非常に残念だったが、会議が入ってしまった以上、仕方のないことだった。
今の時間は午後六時くらいだろうか。
リアラの試合からかなりの時間が経過しているため、家にはエナかリアラのどちらかがいてもおかしくない時間帯であった。
バルカンは無事家の前までに到着するなり、ドアノブを力強く握って扉を開けようとしたが、なかなか扉を開けることができない。
リアラの試合結果がバルカンの精神状態に大きく影響をもたらしているのだろうか。
自身の精神の異常に気が付いた時には、手が音を立てるかのようにカタカタと鳴らしていた。
全く、だらしないな・・・
バルカンは両手でドアノブを持ちながら深呼吸を一回。
そして、覚悟を決めたバルカンは再び扉を勢いよく開いた。
だが、扉はピクリとも動かない。
なんでだ・・・っ!?
バルカンは扉を何回も引っ張るが、扉が開くことはなく、中からの応答もない。
普通、ここまで騒がしくしていたら住人の一人か二人は出てくるものなのだが、一向に出てくる気配がない。
時間は午後の六時。
この時間から外をほっつき歩いているとは考えにくい。
ここでバルカンの脳が正常に働きだした。
手が鳴らしていた「カタカタ」は決してリアラの試合結果にビビっていたわけではない。
何か恐ろしいことに巻き込まれたのではないかと恐怖していたのにも関わらず、意識していなかっただけだったのだ。
それに気が付いたバルカンの脳裏に一人の女性の姿が。
その女性は、サファイアの目に透き通る長い銀髪が特徴的で、顔立ちが良くスタイルも良い。
まさか!?
「おい!!!!エナ!!!リアラ!!!返事をしてくれ!!!!おい!!!!誰かいるんだろ!!!!」
バルカンは必死に扉を開けようとするが開くはずがない。
そうだ!俺は窓を閉め忘れたんだ!!!
本来戸締りはしっかりしなくてはいけないのだが、今回に限っては表目に出た。
バルカンの部屋は二階なので、うまいこと二階までよじ登り、そしてバルカンが自室の部屋の窓に辿り着いた時にそれは起こった。
おい、おいおいおいおいマジかよ!!!
自室の扉はしっかりと戸締りされており、扉と同様に何回も開けようとするも鍵までしっかりかけられていた。
こうなったら、仕方がない!!!
バルカンは自身の手に握り拳を作り、それを窓ガラス目掛けて打ち放った。
窓ガラスは見事な音を立てながら、バルカンの部屋に無残な姿で散らばっていた。
エナ・・・っ!!!リアラ・・・っ!!!
バルカンはその窓ガラスの破片に一切気にすることなく、部屋中をかけ回った。
家の中は僅かな夕日の光だけで照らされており、電気はつけられていない。
その雰囲気がバルカンにさらなる恐怖を植え付ける。
頼む・・・っ!!!二人には手を出さないでくれ・・・っ!!!頼む・・・っ!!!
二階をシラミ潰しに探すが二人の姿がどこにもない。
「痛った・・・っ!」
バルカンは足の裏に痛みを感じ、確認してみると、そこには窓ガラスの破片がいくつも刺さって大量の血が流れていた。
廊下を見てみると、大分前から出ていたようで廊下は血で塗りつぶされていた。
バルカンはその窓ガラスの破片を乱暴に取り除き、まだ見ていない二階の部屋を回った。
ここか・・・っ!!!ここか・・・っ!!!ここか・・・・っ!!!!
勢いよく扉を開くも、そこに二人の姿はない。
あとは一階だけか・・・っ!!!!
すぐさま一階へと向かうバルカンの足の裏は、恐らく傷口がパックリ割れているだろう。
いちいち確認しなくてもわかることだった。
先ほどにも増して出血の量が増しているのだから。
バルカンは、傷口を無視するように階段を駆け下り、
「痛って!!!!」
一瞬の激痛であったが、その痛みに耐えることができずにバルカンは階段の上から落ちてしまった。
床に頭を強くぶつけてしまったのだろうか。
頭が急に激しく痛みだした。
その激痛に加えて、汗まで頭から垂れてきた。
バルカンはそれを腕で擦るように拭うと、腕には血が付着している。
落っこちた時に足の血が付いちまったか・・・?
だが、この汗は明らかにおかしかった。
こんな一気に頭から照れてくるものだったか?
それに、心臓が頭にあるかのようにバクバクを脈を打っている気がする。
その不快な痛みにバルカンが下を向いた時だった。
ボタボタと垂れ堕ちる血の雨に冷静さを失っているバルカンでも容易に気が付いた。
ちくしょう・・・っ!頭からもかよ・・・っ!!!
せっかくゼクスシードに治してもらった体が台無しだ。
バルカンはゆっくり立ち上がろうとするも足が思うように動かない。
足の裏からのズキズキとした痛みに加えて、内側からくる強い痛み。
まさか・・っ骨折したのか・・・っ!?
両足動かないということは、恐らく両足やってしまったのだろう。
一体どういう落ち方をすれば両足骨折するというのか。
だが、今はそんなことはどうでも良い。
一刻も早くエナとリアラの姿を目にしなくてはならなかった。
エナ・・・リアラ・・・
バルカンは手を地面に押し付けながら立とうとするが、先ほどまでの俊敏な動きはできそうになかった。
壁に手を張りつけながら、ゆっくりとその足を動かす。
足の裏のズキズキとした痛みに感覚のない足。
感覚をなくすのなら足の裏もなくして欲しかった。
いや、足の感覚がなくなったら、足の裏の痛みもなくなるはずではないのか?
骨折というのは、骨の周りの膜が破れるために痛みを感じるわけで、その痛みを感じないということは神経まで傷つけてしまっているのではないか?
だとしたら、足の裏に痛みを感じるのは非常識なことだ。
この痛みはバルカンの心によるものなのか。
いくら頭を使っても、この痛みの原因を突き止めることができない。
エナ・・・リアラ・・・
引きずる足で一階の部屋を見回るが、エナとリアラらしき姿はどこにもなかった。
玄関先の扉を最後に残したところで、ついにバルカンの方が力尽き、
「クソ・・っ俺がもっと早く帰っとけば・・・っ」
二、三時間も眠りについていた自分への怒りが込み上げてくると同時に二人を守れなかった後悔で胸が引きちぎられそうになる。
「エナ・・・・っリアラ・・・っ、お前達はどこにいってしまったんだ・・・っ」
だんだんと意識が遠のいていくバルカンの頭上で、「ガチャリ」と扉の開く音が。
最後の気力を振り絞って、バルカンはその玄関先の方へ目を向けると、そこには荷物を沢山もったエナの姿があった。
「ふぅー、リアラの試合で遅くなっちゃった。早く晩御飯の支度しないと・・・」
そしてエナが部屋の電気をつけた時。
「え・・・・・・・・・・」
エナは、手に持っていた荷物を突如と離した。
彼女が驚くのも無理はないだろう。
電気をつけた部屋一体は血まみれになっていて、すぐそばにはバルカンが血を流して倒れているのだから。
普通はこんな状況に出くわした場合は、腰を抜かすところなのだが、エナはそれがなかった。
しばらく状況を呑み込めていなかったエナの思考がようやく追いついたところで、
「きゃああああああああああああああ!!!!!バルカン!?一体何があったの!!!!ねえ!!!ねえってば!!!誰か!!!!!誰か助けて!!!!!」
エナのこんなにも取り乱した姿は見たことがなかった。
彼女が必死にバルカンを呼び掛けているが、バルカンの意識は朦朧としているため、何を言っているのか全くわからない。
どうしたんですか!大丈夫ですか!?
うわ!これは酷いな・・・!おい!早く医療機関に連れて行くぞ!
エナの悲鳴で駆け付けた男二人と、その後ろに控えていた何人かの男に担がれながら、バルカンはついに意識を失ったのだった。
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