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古書店街の魔女  作者: 田丸 彬禰


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100/104

松が枝

 新潟県某所の夏。

 三メートルほどのコンクリート製の周壁に囲まれた広大な敷地に建つその無機質な建物は、どこまでも水田が広がるその光景にはまったくそぐわない、異物と表現できそうなものだった。

 そして、その建物を中心とした周辺一帯を高台から冷ややかに眺める五人の男たちがいた。

 二十代から三十代のその男たちは、遠くから眺めればサボリ中の営業マンのようにも見えるが、聞こえてくる軽い言葉とは裏腹に全く隙の様子はまったく違う世界の住人にも思える。

「何度見ても良い眺めですね」

 男たちのなかでひときわ若い男が口にしたその言葉を聞いた右隣の男が口を開く。

「山越君に訊ねる。君の言う良い眺めというのは一体どの部分について言っているのかな」

「もちろんこの風景のすべてですよ」

「なるほど」

 その男が答えた言葉に先ほどの男がニヤリと笑う。

「つまり、君の言うその素晴らしい風景には当然あれも含まれているわけだな」

 その男が指さすあれが、あの異物を指すのはあきらかだった。

「それは……」

 言葉に詰まる本人を置き去りにして、ここから残る三人も加わった彼のセンス談義が始まる。

 盛大に。

「それにしても、水田が広がるこの自然豊かな光景の唯一の汚点であるあれを素晴らしいと絶賛できる山越君のセンスには感服するよ」

「汚物に美しさを見出すその美的感覚は常人にはとても理解できないな」

「もしかしたら、水田が広がるこの素晴らしい光景は山越君にとってはあれの引き立て役程度なのかもしれませんね」

「まったくだ」

 本人にひとことも口を挟む暇も与えずひとしきり最年少の男を弄りまわしたところで、表情をすっかりと変えた最初の男がもう一度口を開く。

「……では、そろそろ待ち合わせ場所に向かおうか。朝霧さんも待っているだろうから。蒐書官たるもの遅刻など許されない」

 そう。

 彼らは全員蒐書官だった。


 彼らがその地に現れた理由は、いつもどおりその建物の主が持つ貴重な書を手に入れるためなのだが、その経緯は通常のものとはやや異なっていた。

 多くの場合、蒐書官はこの世界の表裏両面には張り巡らされたネットワークから得られた情報を頼りにその場所に辿り着くのだが、今回の情報は驚くべき偶然から彼らのもとに転がり込んできたものだった。

 さらにいつもなら様々な名目で盛大に支払われる情報提供料だが、今回にかぎりそれが情報提供者に渡ることがなかった。

 もっとも、それは結果の話であり、正しくは、彼らはそれを払おうとしたものの、相手がそれを辞退したのである。

 ただし、その金の受け取りを拒否した風変わりな相手は、高額の情報料の代わりとして別のものを要求していた。


 その書の所有者の殺害。


 それがその者からの要求だった。


 その二週間前。

 今回の情報提供者である二宮賢人は、兄盛裕、それから兄の友人である甲斐悠馬とともにある建物に押し入る計画を立てた。

 彼らが狙いをつけたその建物は防犯装置が設置されているものの、付近には水田以外に何もないという、このような仕事をやる者にとっては実に好ましい立地条件を有していた。

 さらに、兄盛裕が手に入れた情報では、この建物の所有者は貴重な品を抱えるこの周辺の裏世界では有名なコレクターであり、その建物もそのコレクションを収めるためにつくられたものらしかった。


 入念な下見をおこなって決めた犯行日。

 兄は彼にこう言った。

「今回のおまえの仕事は自動車の運転係だ」

 あきらかに不満顔をした彼に盛裕はさらに言葉を続ける。

 敷地脇には駐車する場所がないため、仕事を完了し速やかに逃走するためにはタイミングを合わせて入り口近くに逃走車両を乗りつけなければならないのだと。


「心配するな。分け前はいつも通り三等分だ。今回は簡単な仕事だからすぐに戻るから連絡があるまで離れた場所で待機していろ。居眠りなどするなよ」


 少し離れた場所で車を降りた兄は軽口を叩きながら建物に向かって歩き出した。

 それが彼の見た兄の最後の姿だった。


 現場を離れて僅か五分後、彼の携帯電話が鳴る。

 兄からだった。

「賢人、今すぐそこから逃げろ。全力で。そして、戻ってくるな」

 その言葉で彼は兄たちが仕事を失敗したことを悟る。

 彼らのような仕事を生業としている者にとって、仕事の失敗は即刑務所暮らしに直結する。

 だから、自分たちが逃げ切れないとなれば、兄が弟に逃走を指示するのは当然のことである。

 ただし、それで彼がその言葉どおりに動くかどうかはまた別の話である。


「兄貴。そういうわけにはいかない。今すぐ迎えにいく」


 堅い絆に結ばれた仕事仲間、そして弟として窮地にある兄を助けにいくというこの言葉は当然のものである。

「来るな」

 だが、すぐに返ってきた彼を突き放すような兄のその声は仕事を失敗した焦りとはまったく別のものに支配されていた。

「ここはバケモノの巣窟だ。ここを選んだのが失敗だった。だから、何があってもここに近づくな。それからもう奴らの手が回っているから自宅にも戻るな……賢人、今まで……」

 とぎれとぎれに流れ出すその言葉はそこで終わり、友人の悲鳴に続き、迫ってくる獣のような咆哮と兄の死に直面した叫び声が混ざり合った後に電話も切れた。


 ……まずはこの場を離れよう。

 恐怖に駆られた彼は必死に逃げた。

 逃げながらも、兄に連絡を取ろうとしたのだが、もちろん電話は繋がらない。

 それどころか、それが相手に自分の居場所を知らせることになったのだろう。

 すぐさまやってきた追手を何度か振り切ったものの、その度に再び迫ってくる。

 車を捨て必死で身を隠していたものの、遂に見つかり、六人の男たちに囲まれた彼が万事休すと諦めかけたところに偶然通りかかったのはふたりの蒐書官だった。


 そして、ここで彼にとって思わぬ幸運がやってくる。

 蒐書官はその立場上、余程の事情がないかぎり、このような場に出くわしても関わり合いを避ける。

 今回も彼らはそのつもりでチラリと様子を眺めただけで現場を立ち去ろうとしたのだが、その彼らを事件に巻き込んだのは彼を取り囲んでいた男たちだった。

 これから彼を人知れず亡き者にしようとする男たちにとって、いわゆる目撃者である彼らを抹殺するというその判断は間違っていなかったのだが、色々な面で運が悪かった。

 まず、相手がただの素人ではなかったこと。

 そして、このふたりが数々の武勇伝を誇る蒐書官のなかでも近接戦ではトップレベルの実力を有していたことがそれに続く。

 結果はすぐに出る。

 腕には自信があったものの、逃走されるのを恐れてふたりを四人がかりで襲った男たちだったが、相手のうちの若い方の男によって何が起こったのかわからぬまま全員が倒される。

 一方、男の相方であるもうひとりはといえば、こちらも彼を抑え込んでいた残るふたりに声を上げさせることなく致命傷の三歩ほど手前の深手の傷を負わせる。

 一瞬のうちに。


「それ以上声を上げたらすぐに殺しますよ」


 もうすぐ虫の息の領域に到達しそうなふたりにそう声をかけて黙らせた男が若い相方に話しかける。

「山越君。殺してはいないだろうね」

「もちろんです。志摩さんこそ殺せずに物足りなそうな顔をしていますよ」

「失礼な。私は君と違って人を甚振って喜ぶおかしな趣味はないよ。話ができる程度には生かしてある。だが、目が合ったとたんに殺しに来るとは何だろうね。彼らは」

「そうですね。それにこいつらはまったくの素人ではないですよ。それなりに強いかったですし」

「そうだな。格闘技の心得があったようだから、たちの悪い警備会社の社員かもしれない。まあ、本人たちに聞けばその辺の事情はすべてわかるというものだ。もちろん君も来てもらうよ」

 疲労と助かった安堵が混ざり合ったものによってすでに意識がない彼に男はそう言葉をかけた。


「……つまり、君はその屋敷に泥棒に入った生き残りということか」

 三人の男が立つ見たことがない部屋で目を覚ました彼は訊ねられるままに自分が襲われていた経緯を話すと、あの場にはいなかった三人目の男が渋い表情とともに彼をこの部屋に連れてきたふたりの同僚に目をやり、苦り切った表情で言葉をかける。

「せっかく新潟に来たのだからうまい酒が飲みたいと出かけたはずなのに、泥棒の片割れを拾ってシラフで帰ってくる。どうやったらそういうことになるのか教えてもらいたいものだ」

 これ以上ないというくらいのその嫌味に、男の昔からのパートナーが答える。

「言っておきますが、好き好んで拾ってきたわけではないですよ。美しく魅力的な体形の女性ならともかく男など誰が拾ってくるものですか」

 それに続くのがもうひとりのパートナーである。

「そうそう。これは売られた喧嘩を買った結果です」

 嬉しそうにこたえるふたりの言葉に最初の男の眉間の皺がさらに増える。

「どうせ入店拒否をされた腹いせに強引に喧嘩を売らせたのだろう。君たちの日頃のひどいおこないを見ていれば、そこにいなくても何をやってきたかなど思い浮かぶ。少しは品行方正な私を見習ったらどうだ」

「なんという言いがかりと過大すぎる自己評価」

「まったくです」


「……ところで、俺を襲った男たちはどうなった?」

 雑談が始まったところで、彼が訊ねたのは自分を襲ってきた男たちのことだった。

「それはもちろん全員、話を聞かせてもらったあとにすみやかにお帰りいただいた。いや、別の場所に出向いてもらったと言ったほうが正しいか」

 会話に割り込んで訊ねた自らの問いに、三人分の怪しげな笑いとともに返ってきたその言葉を彼はどう理解していいのか考えあぐねた。

 ……この場にはいないということはわかったが、では、どうしたのだ?

 ……だいたい出向くとは何だ?もしかして、こいつらは奴らの仲間か?

 ……だが、そうなると俺を助けたことと矛盾する。

 ……さっぱりわからん。

 彼の困惑の表情に男が言葉をつけ加える。

「安心したまえ。彼らがもう一度君を襲うことはない」

「本当に?」

「約束しよう。君のこの世界にいるかぎり、彼らがもう一度君を襲うことは物理的に絶対に不可能だ。それよりも……」

 男が言葉を続ける。

「君たちが狙っていたというものについてもう少し聞かせてもらおうか」


 もちろん彼らが何者かはわからない。

 だが、その気があるなら自分はとっくに殺されている。

 それどころか助けることもしなかった。

 ……それに俺が盗みを生業にしていると言っても動じない。

 ……もしかして、同業者なのか?

 ……そうであれば……。


 彼は自らの新しい目的完遂のために彼らを利用しようと、自分たちが調べ上げたあの建物にあるお宝についての情報を残らず話す。

 少しだけ細工をして。

 彼は真っ先に公式には行方不明となっている重要文化財を含む多くの工芸品の名を挙げるが、期待に反し、彼らのそれらに対する反応は非常に薄かった。

 その彼らの表情が一変したのは兄から聞いたある書物の名を口にしたときだった。


「……ほう。その建物にはそのようなものがあるのか」

「興味がそそられるか。まあ、あそこにあり、兄貴がターゲットに選んだのだから、それなりのものなのだろうが、俺はその名を聞いたことがない。それはそんなに有名なものか?」

「まあ、そうだな。有名というよりは貴重な書物といったほうが正しいだろう」

「手に入れたいのか?」

「もちろん」

 ……この感じでは、こいつらは書籍専門の盗賊団。

 ……そういえば、そのような輩がいると風の噂で聞いたことがある。

 ……あの噂はこいつらのことだったのか。

 彼は目の前にいる三人をそう理解した。

「もしかして、盗むのか?……」


 だが、「そうであれば、手伝わせてくれ」という彼の言葉が終わらぬうちに、その言葉はやってくる。


「……まさか。そんなことはしない」


「だが……」

「君は我々を同業者だと勘違いしているようだが、そうではない」

「違うのか」

「もちろん違う。我々はもっとスマートなやり方でそれを手に入れる」

「スマートなやり方?それは?」

「交渉による買い取りに決まっているだろう」


 買い取り。

 それは盗みなどとは比べものにならないくらいに真っ当な方法だ。

 だが、彼のなかにはぬぐい切れない違和感とそれに倍する不信感が存在していた。

 それは彼らの言動ひとつひとつから漏れ出している同類の匂い。

 そして、自分を助けた際に見せたあの圧倒的な強さ。

 とても男が口にしている言葉どおりとは思えなかった。

 そして、結論をいえば、その盗人の勘は正しかったといえるだろう。

 男が言葉を続ける。

「疑っているようだな」

「まあ、本心を言えばそういうことになる」

「なるほど」

 男は笑った。

 もちろん笑っただけではない。

「そこまで素直に白状するのなら、もうひとつの方も白状したらどうだ?」


 男がつけ加えたその言葉に彼は驚く。

 ……まさか。

 ……だが、今の会話でそれを察することなど無理だ。

「もうひとつの方?何の話だ」

「決まっている。君が隠している我々にやらせたいと思っていることだ」


 驚くほど長い沈黙後、男が口を開く。


「……なぜわかった?」

「我々の圧倒的な力を目にしながら、行方不明の兄の救助を願うどころか、どうなっているか調べてくれとも言わないのはさすがに不自然だ。しかも、そうでありながら、君の言葉には我々をその屋敷に向かわせようとする意図が感じられる。それを考え合わせればその答えに辿り着くのは容易なことだ」

 ……なるほど。

 ……敢えてそれに触れず、こっそりと誘導するつもりだったが、どうやらこいつらは俺ごときがおこなう小手先の策などが通用しない相手のようだ。

 ……そうなると、こいつらは口が軽いただのコソ泥ではないな。やはり。

「さすがにそこまでわかっているのならもう隠す必要はないようだ」

 彼の顔から薄ら笑いが消え、頭が深々と下がる。

「……どうか……」

「残念だが、その依頼は受けられない」

 続く言葉を聞かずに依頼を断った男の顔をここに来て初めて感情を露わにした表情で眺める。

「なぜ?」

「我々の仕事に人助けというカテゴリーはないからだ。それに、君も薄々わかっているのだろう。君の兄上がもうこの世の住人ではないということを」

「……」

「君の話を聞くかぎり、君の兄上が生きているとは思えない。あきらめろ。そして、せっかく助かった命だ。今後は真っ当に生きることを勧める。君の兄上たちがどうなったかについては今後おこなう買い取り交渉のついでに我々が確認し、わかれば教えてやる」

「……足りない」

「何?」

「それでは全然足りないと言っている。兄貴を殺した奴がのうのうと生きているなど俺は認めん」

「だとしても、君が現場に行っても兄上の後を追うだけの話だ。兄上はそんなことを望んでいないと思うぞ。安心しろ。君が提供した情報に対して我々が払う対価は今後つつましくすれば数十年は生活できるくらいの金だ」


「情報料などいらん。その代わりに兄貴を殺した男を殺してくれ」


 二日後。

「北添さん。彼はどうなりましたか?」

 ホテルの一室でくつろぐ三人のうち一番若い男が口にしたその問いに北添という名の男が答える。

「我々の仕事が終わるまでこの地から離れてもらうというのが、鮎原さんの判断だ」

「当然ですね。あのような者は我々の仕事にとって足手まとい以外の何物でもないですから」

「それで、鮎原さんからは交渉開始のゴーサインは出たのですか?」

「いや。相手は腐っても国会議員。交渉を始めるにはそれなりの手続きと準備が必要となる。許可が出るまでは接触を避けて情報収集をおこなうようにということだった」


 同じ日の東京都千代田区神田神保町。

 彼らを含めた全蒐書官を束ねる立場のその男が主と話をしていたのはまさにその件だった。

「客人は?」

 主の簡素な問いに彼は事実を最大限に誇張した表現で答える。

「もちろん快適な暮らしが約束された場所でしばらくご逗留していただきます」

 ……つまり、軟禁ですか。

「結構です」

 言外の意味をそう受け取った彼女は薄く笑いながら小さく頷くと言葉を続ける。

「報告では、その男から兄の敵討ちを頼まれたとのことですが」

「依頼を受けたのは事実ですが、そこに盗みに入らなければそのようなことにならなかったわけですから、私に言わせれば、客人の言葉は単なる逆恨みです。義理人情だけですべての理が成り立つ美しい物語の世界ではあるまいし、そのような依頼に我々がいちいち関わる義理はありません」

 ……つまり、捨ておけということですね。

 相槌を打った彼女がティーカップに手を伸ばすのに合わせて自らもコーヒーを口にし、男はさらに言葉を続ける。

「ですが、客人からの商品情報はさすがに放置というわけにはいきませんね」

「……商品?それは『松が枝』のことですね」

 松が枝。

 それは清少納言が自著の中でその名を挙げたものの、原書どころか写本すら存在しないため詳細はまったくわからない幻の物語の名である。

「……あなたはそこにあるものは本物の『松が枝』だと思いますか?」

「それは何とも。ですが、特別な趣味や素養がある者でもないかぎり知るはずのないその名を彼が口にするはずはありませんので、少なくても彼らはそれがあるものと認識していたのは事実でしょう。いずれにしても、本当にあるかないかを含めて確認するためにも、まずは行動を起こすべきです。そして、そこで問題になるのは……」

「所有者ということですね。日山宗剛。与党の国会議員だとか。しかし、どうしてでしょうか。なぜかその名は聞き覚えがありますね」

 彼女の口から零れ落ちたその言葉に男は思わず小さな笑みを浮かべてしまう。

 立花家次期当主には劣るものの、それでも常人では決して到達できない驚異の高みにある彼女の記憶力。

 だが、実を言うと、彼女の場合は対象が興味の外側にあるものになると、その能力は地上スレスレにまで急降下する。

 そして、その急降下の代表格が人物の名前であるため、その彼女がうろ覚えではあるものの、部外者の名を覚えているというのはたいへん珍しいことであった。

 男はその笑みを残したまま彼女自身が不思議に思っていることの種明かしをする。

「まあ、そうでしょうね。最近方々でその名前は連呼されていましたから。もっとも彼の名前がその 手のニュースの俎上に上がるのは今回が最初ではありませんが」

「そうなのですか?」

「はい。当然本人は完全否定ですが、彼の名は癒着だの賄賂だのというものにはほぼ確実に名前が登場します。そのくせ逮捕どころか尻尾を掴まれたことさえ一度もない。小物のくせに逃げ上手のようです」

「……それはなかなか見どころがありますね」

 男は自らの言葉に皮肉がたっぷりと込められたその言葉で応じた彼女をチラリと眺めてからさらに言葉を続ける。

「与党幹部も彼には手を焼いているようで、あの牟田口氏も『あれは金に汚くて困る』とぼやいているそうです」

「……牟田口?」

「はい」

「誰ですか?それは」

「牟田口氏とはもちろん夜見子様もお会いしたことがある我が国の首相閣下のことですよ」

「……そういえば、あのゴキブリにはそのような名がついていましたね」

 彼女自身が住む国の首相の名も覚えていない。

 これこそが彼女にとっての通常運行なのである。

「……ですが、私利私欲の権化のようなあのゴキブリにそこまで言わせるとはますます見どころのある男と言わざるを得ませんね。それで、それの経歴はどのようなものなのですか?」

「官僚から議員に転身したのですが、本人の言として伝わっているものが正しければ、もともと議員になるつもりだったようですね」

「そのような者なら、看板はともかく本心まで国民のために働くつもりで国会議員になったということはないでしょうね。目的はやはり金もうけですか?」

「というよりも、金のかかる趣味のためにといったほうがいいでしょう。さらにいえば官僚以上に特別な権限を持つ国会議員になってその趣味を効率的におこなうためでしょうね」

「趣味?」

「どうやら彼には収拾癖があるようです」

「収拾癖?」

「はい。彼はいわゆるコレクターです。表裏両面の世界での」

「つまり、私と同類ではありませんか。それで、突然親近感が涌いたその男は何も集めているのですか?もしかして書籍ですか?」

 少しだけ警戒色に染まった彼女の言葉に男がかぶりを振る。

「いいえ。彼は特定のアイテムを専門に集めているわけではなく、珍しいものなら手当たりしだいのようですね。ですから、『松が枝』もかねてから狙いをつけて追いかけていたというよりも偶然目の前に現れたものを手にいれたといったほうがいいのではないでしょうか」


 彼女は紅茶を、男はコーヒーを口にした短い休憩が終わると、男が口を開く。

「ところで、この日山宗剛氏には金に汚いというほかにもうひとつ別の噂があります」

「ほう」

 ……ここでその話を持ち出すというは、すでに裏を取っているということですね。

 薄く笑みを浮かべた彼女が訊ねる。

「聞きましょう。その噂とはどのようなものでしょうか?」

「元官僚という肩書からは信じられないことですが、彼は裏で政界の汚れ仕事を一手に引き受けているというものです」

「汚れ仕事?汚れ仕事といってもその種類は色々あるでしょう。その男がおこなっている汚れ仕事とは?」

「口封じ」

「つまり、都合の悪い誰かを事故や自殺に見せかけて密かに葬っているということですか?」

「そのとおりです。北添君たちが尋問後あの世に送った六人も彼が抱える実行部隊の一部だったのでしょう。もちろん彼らの公式な仕事は自宅やコレクションの警備のようですし、おそらくその裏仕事も彼のコレクション警備をおこなっている組織が発展し始めたものでしょう」

 ここまで聞いたところで、彼女は合点がいった。

 役職についているわけでもないにもかかわらず金の匂いがする場所に常に顔を出す。

 しかも、絶対に捕まらず、党の幹部も顰め面をしながらも男の行動に掣肘を加えるわけではない。

 ……つまり、彼らは皆その男の裏仕事の世話になっているから彼に手が出せないというわけですか。

「それで?」

「彼はそれを政界における自らのストロングポイントだと思っているわけですが、実はそれは弱点でもあります」

「というと?」

「自らの弱みを握っている彼には政治の舞台から早急に降りてもらいたい。それどころか、ついでにこの世からも消えてもらいたいと思っている者が多数いるということです」

 ……つまり、蒐書官が「松が枝」を手に入れるためにその男を害しても、誰も咎めることはなく、それどころか喜んで消火に手を貸すということですか。

 ……そして、そのことを口にするということは、あなたはそれをおこなうつもりだということなのですね。

「では、そろそろ教えてもらいましょうか。あなたが考えるその国会議員から『松が枝』を手に入れる方法を」

「……承知しました」

 彼女の言葉に男が軽く頭を下げる。

「と言っても、特段奇策を用いるわけではありません。こういうときこそ正攻法でいくべきなのです」

「つまり、いつもどおり情報を手に入れた北添たちに任せて所有者と買い取り交渉をさせると」

「そういうことです。ただし、担当者は変更します」

「理由は?」

「例の一件がありましたから」

 ……先に手を出したのは自分たちだとはいえ、交渉相手が手下を六人も殺した者だと知ったら、うまくいくものもいかなくなるということですか。

「では、誰に任せますか?」

「やはり、硬軟自由に使い分ける朝霧君を交渉の責任者を任せるのがいいでしょう。ただし、我々から見れば素人同然ですが、とりあえず武装集団を抱えている相手と、先ほど言った状況を考えれば荒れる可能性がありますから、当然朝霧君たちだけではなくいくつかのチームにサポートさせます」

「その口ぶりでは、北添ら三人だけではないようですね」

「せっかくですから、御菩薩木たちにも加わってもらいましょう。このような場合、投入戦力はケチってはいけない。それから最初から全力投入というのが鉄則です」

「……ただの勝利ではいけない」

「そのとおり。目指すのは完全無欠な勝利です」


 では、そろそろふたりの会話から二週間後となる現在の新潟に話を戻すことにしよう。


 下見を兼ねた散歩が終わった五人の男が姿を現したのは新潟市内では指折りの名店として知られている古風な喫茶店だった。

 急遽決まったことがよくわかるような手書きで「本日貸し切り」と書かれた札がかかるその店で彼らを待っていたのは朝霧と、彼の現在のパートナーであるもうひとりの蒐書官柳沢のふたり。

 ……のはずだったのだが、なぜかそこには予定外の三人の男が加わっていた。


 後からやってきたうちのひとりが目の合った顔見知りの男に訊ねる。

「……鈴川君。なぜここに呼ばれていない君がいるのかね?」

 言葉の外側で何を言いたいのかが実にわかりやすいその質問に、訊ねられた男はこれ以上ないというくらいの出来の悪い愛想笑いを浮かべ、口を開く。

「もちろん皆さんのお手伝いをするためですよ」

「そういうことであれば、仕事をするために十分な人数がすでに揃っている。すぐにお引き取り願おうか」

「そうはいきません」

「ほう。君のことだ。どうせまたろくでもない言い訳をするのだろうから聞きたくもないが、とりあえず聞いてやるからその理由を言ってみたまえ」

「たしかに現在でも数は十分です。ですが、仕事をこなすには質も大事です。ところが現状は質に関しては十分ではないでしょう」

「質が十分ではない?つまり、我々だけではこの仕事は成功できないと君は言いたいのかね」

「それ以外に聞こえたら驚きです」

「なるほど。鈴川君は自分がいなければこの仕事は成り立たないなどと実におもしろいことを言っているが、それについて君はどう思う?御菩薩木君」

「北添君はおもしろいと言ったが、私にはその話のどこがおもしろいのかがさっぱりわからん。そもそも素人に毛の生えた程度の実力しかないこの馬鹿な男の助力とやらがどこでどのように役に立つというのだ。私には想像もつかないが君にはこの男の使い道がどこにあるかがわかるかね。葛葉君」

「いいえ。私にも蒐書官になったことさえ奇跡である無能な彼の使いどころなど思いつきませんね。ですから、私はこう考えます。彼がここにやってきた理由は、手伝いではなく実は何年経っても上がらない自らの能力向上のために優秀な蒐書官である我々の仕事の見学なのではありませんか?……いや。才能の欠片もない彼の場合は見学などしても無駄な時間を過ごすだけですからただの物見遊山。つまり、見物といったほうがいいかもしれません」

「なるほど。見物か。確かに口はよく動くが仕事はさっぱりであるこの無能な男にふさわしい行為だ。そういうことなら、邪魔にならぬところで見ていくといい。見物人の鈴川君」

「皆さん言いますね。相変わらず」

「そちらこそ」

 一触即発の雰囲気が漂い……。

 と言いたいところだが、これが同期である彼らがたまに顔を合わせたときにおこなう挨拶。

 度し難い儀式である。

 だが、やってきた彼らにとって三人が予定外であるのは確かではある。

 その種明かしをしたのが、今回の仕事を仕切る朝霧だった。

「まあ、鈴川君たちが参加になったのは急なことなのは確かだ」

「それで、その理由は?」

「本人の申し出だ」

「ということは、やはり見学か」

「違いますよ」

「では、見物だ」

「なおさら違いますから。先崎君。君からも何か……」

「私は鈴川さんに引っ張られて渋々来ただけですから」

 多勢に無勢、遂には自分のパートナーにも見捨てられ、あっという間に防戦一方になったその男は理由のありかに指し示すように視線を動かし、それに釣られるように他の男たちも視線をやったのは、後からやってきた五人が唯一顔を知らなかった男である。


「誰ですか?その男は」

「畠山さん。挨拶を」

「畠山俊次と言います」

 朝霧に促されて挨拶をしたのは冴えない中年男だった。

「畠山俊次と言われても……誰ですか?」

「ただの盗人ですよ。私はこの男が今回の仕事に加わると聞いて心配で飛んで来たわけです」

 本人の代わりに、侮蔑の色を大量に加えてその男の前歴を紹介したのは鈴川だった。

 元パートナーである鈴川の相変わらずの言葉に苦笑しながら朝霧は補足するように言葉を加える。

「まあ、それは彼の元職であり、今は橘花グループのホテルで働いている」

「その元盗人を連れてきた理由は何ですか?」

「もちろん前歴を生かして今回の仕事に協力してもらうことに決まっているだろう」

「それはそうでしょうが、それだけでは少々言葉が足りないのではないかと。もう少し補足説明をしていただけますか」

「いいだろう」

 朝霧はまず店主自慢のコーヒーで口を潤す。

 それから、ゆっくりと口を開いた。

「我々は蒐書官。書については誰にも負けない鑑定能力がある」

「そのとおりです」

「だが、その他についてはどうか。たとえば仏像を眺めただけでその良し悪しがわかるのかな。北添君」

 ……たしかに古さだけなら判別できる。

 ……だが、そのようなものの価値は古さだけで決まるわけではない。

 ……作者、保存状態、そして、もちろんその出来など多くの要素が加わってそれが決まる。

 ……門外漢である我々がそこまでの判断できるかと問われれば……。

 朝霧に指名された男が彼の言葉を慎重に吟味にし、その言葉を口にする。

「いいえ。まったく」

「つまり、畠山氏にそれを担ってもらうということなのでしょうか?」

「そうだ。もちろん我々のメインターゲットである『松が枝』を何事もなく買い取りできればそれで終わるが、交渉決裂となれば、そういう事態になるかもしれない。というか、鮎原さんから相手は国会議員で買い専門であることから交渉で決着する可能性は低いので、それに見合った準備をするようにと指示を受けている」

「つまり、荒事になる?」

「そういうことだろうな」

「では、持ち主を葬ったあとに、あるものすべて持ち出せば済むことではないのですか?」

「素晴らしい提案ではあるが現実的ではないな。それは」

「数が多いということですか?」

「そうだ」

「つまり、トリアージが必要だと。ですが、本人を前にして言うのは申しわけないのですが、彼の眼力を信用してもいいものなのですか?」

「彼はそれこそ骨董品の専門家だ。少なくても我々よりは確かな目と知識を持っている」

「では、いっそのこと持ち出すものは我々が必要とする書籍に絞ったらいいではありませんか。仏像や掛け軸など……」

 高台で美的センスを散々こきおろされた若い男が口にしていた言葉を止めたのは朝霧の表情が変わったからだ。

「そういう考えは好かんな。私は」

 一睨みで言葉を打ち切らせたその男はさらに言葉を続ける。

「最大限努力しても救えないものは仕方がない。まして、それによって自身の利益が損なわれるのであれば。だが、そうでないのなら、できるかぎり救うのは当然のことだろう。そこにあるものはすべて本来失われよいものではないのだから」

 ……なるほど。そういうことか。

 男が口にしたのはあくまで文化財に対する自らの考え方だけである。

 だが、薄々は気づいていたものの、その場にいる蒐書官の全員がその言葉で悟った。

 その建物が彼らの仕事が終わったあとにどうなるかということを。

 いや、男がその建物をどのようにする気なのかということを。


 それからさらに十日間が経ったその日。

 あの日の翌日から始まった交渉はこの日までに断続的に三回おこなわれていたが、進捗状況はお世辞にも順調とは言えなかった。

 だが、それはあくまで表面上のことであり、交渉の責任者である朝霧にとってその成果は十分満足できるものだった。


 ……病的なコレクターが議員になったようなこの男は、法に違反して手に入れたコレクションを同好の士に自慢したい。

 ……だが、それをおこなえば自らの違法行為が世間に知られてしまうと恐れている。


 彼は最初の交渉で早くも相手の男が抱える日の当たらない世界に関わったコレクターならではの悩みを見抜いていた。

 そして、相反するその望みこそ、この男最大のウィークポイントだと確信した彼は、次の交渉で「口が堅い裏世界の美術鑑定家」というアンダーカバーを施したある男を引き合わせた。

 もちろん、それは功を奏す。


 ……それなりの知識があり、さらに裏世界の住人ということはここで見たことを口外できる立場の人間ではない。

 ……しかも、いわゆる学者肌ではないため、こちらが主導権を取れるのも好都合。

 ……これぞ理想的な話し相手。

 やっと出会えた自慢する相手だといわんばかりに日山は嬉々としてその男にコレクションを見せびらかし、交渉前にはわからなかった男が抱える蒐集物の全貌があきらかになる。

 もちろんそれだけではない。

 その結果として現れたものこそ彼の待ち望んでいた獲物。

 彼らのターゲットである「松が枝」だった。


 前回の交渉時。

「……古い書籍を専らとする闇商人というということだったが、では、このようなものがあることは知っているか?」

 それまでそれについてひとことも触れてこなかった男が大事そうに持ち出してきたのはひと目で古いとわかる一冊の書であった。

 ……どうやら畠山氏にコレクションを見せた時点で箍が外れたようだな。

 彼は心の中でニヤリと笑うものの、もちろんそれを顔に出すことはない。

 それが何かなどすぐにわかったが、彼は何食わぬ顔で訊ねる。

「……それは?」

「名を『松が枝』という」

「『松が枝』?それは初めて聞く名ですね」

「知らないのか?」

「残念ながら」

 彼が口にした言葉は当然安っぽいエサである。

 だが、前回まではまだわずかに残っていた警戒心も失い、自らのコレクションを自慢したいだけの男に成り下がっていた日山はすぐさまその言葉に食いつく。

「闇商人とは意外にものを知らないのだな。では、教えてやる。平安時代の書で、清少納言がこれに言及している。と言っても、名が伝わっているだけなのだが」

「……なるほど」

 その感嘆の言葉に続くのは、相手に気づかれぬまま薄皮を一枚ずつ剥いでいく巧妙な尋問だった。

「そのような貴重な書をどのようにして手に入れたのですか?」

「おまえと同類の者が数年前に売りに来たのだ。もっとも、金に困っていたようだったので思い切り買い叩いてやった。と言っても、支払ったのはこの辺なら豪邸が建つ金ではあるのだが」

「それはご愁傷様としか言いようがありませんね。それで、聞きづらいことではありますが、それは本物なのですか?」

「これ以外に『松が枝』は存在しないので、清少納言が言及したものと同一なのかは確かめる術はないが、紙は平安時代のものと確認した」

「……できるのですか?そのようなことが」

「こっそりと検査を頼んだ。こういうことができるのだよ。国会議員になると」

「……なるほど。それは羨ましいことです」

 そして、ここで彼は隠し持っていた言葉を口にする。


「……少し中身を眺めさせてはいただくことは可能でしょうか?」


「目を通した者どころかその存在を知っている者さえいない貴重なものだ。それを読ませろとはあまりにも虫が良すぎる要求だ」

 ……さすがに、そううまくいかないか。

 ……それはたしかに虫が良すぎ話ではある。

 予想通りの言葉に彼は心の中で頷く。


 だが、男の口から続いて流れ出てきた言葉は彼にとってもまったくの予想外のものだった。

「と言いたいところだが、足を運ぶたびに表裏両面で献金してくれた恩もある。さすがにいくら金を積まれても売りはしないが、読む名誉くらいなら売ってやってもよい」

 ……まさかあの程度の言葉で扉が開くとは思いませんでした。

 ……扉をこじ開けるために硬軟さまざまな策を用意していたのですが、すべて無駄になってしまいました。ですが、楽ができたのは確かなのですから、ここはよしとしましょう。

 心の中で自嘲した彼は口を開き、心を込めてその言葉を口にした。


「……ありがとうございます。本当に」


 もちろん優秀な蒐書官である彼はほんの一瞬紙に触れただけでそれを感じとる。

 ……確かに平安時代前期から中期のもの。

 さらにそれを読み、その思いは確信へと変わる。


 ……写本か原本かまではわからぬものの本物であることは疑いようもない。


 彼がどうしても欲しかったのはこの情報だった。

 最低でも「松が枝」の存在が確認できるまでは強硬策は使えない。

 それが空振りの許されない彼に科せられた枷だった。

 だが、存在が確認できただけでなく、それが本物だとわかれば、彼の行動を掣肘していたものはすべて消える。

「……それは存在する。だが、相手がそれを売る気がない。となれば、やはりこちらが前に進まねばならない」

 それが彼の下した結論だった。


「だが、とりあえずもう一度交渉し、買い取り価格を提示する必要はあるのだろうな。そこで、相手が折れればよし。そうでなければ……」


 その日、最後の交渉に出かける彼は出かかったその言葉を心に押し込め、目の前に並ぶ八人の蒐書官に声をかける。


「諸君。仕事の時間だ」

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