手に入れてはいけない物(1)
Let's God
「それじゃあ開始するぞ」
「おう、いつでもいいぞ」
シキガミ・オンラインを買ってきた俺たちは雷鬼の家で初期設定を終えたところだった。
「剣十はちなみにどの神になりたいんだ?」
「俺はベータテストでも使ってたスサノオがいいかな」
「スサノオか〜、カッコいいよな」
「そんなことよりさっさとプレイしようぜ」
「分かったよ。そんなに急かすなって」
雷鬼の部屋のベッドに二人で寝そべり俺たちはヘッドギアの電源を入れると目をつむってゲーム起動の合図を口に出した。
「「Let's God」」
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目を覚ますとそこはユーザー設定用の仮想スペースだった。
「ユーザー名の入力、キャラクター設定をお願いします」
機械による音声ガイドに従って俺は設定を進めていく。ユーザー設定するのなんて久しぶりだな、名前はどうしようか……そういえばベータテストの時のアカウントがあったな。
ユーザー名は剣十のケンと十のジを取ってケンジだったな。アカウントはベータテストの引き継ぎだから……。
ユーザー設定を終えた俺は最後に表示されたウィンドウの決定を押すとユーザー設定用の仮想スペースからゲーム用の仮装スペースへと転送された。
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「やっと来たか」
「設定に時間かかちゃって」
先にユーザー設定を終えた俺が最初の村の真ん中にある噴水の前で待っていると雷鬼ことプレイヤー名、オニヤが現れた。
この手のゲームを始めたばかりのオニヤはまだ、ユーザー設定に慣れないらしい。
「これからどうする?」
「とりあえず最初の狩り場に行ってみようぜ」
「了解、ベータテスト経験者に案内は任せるぜ」
最初の村を出てすぐの所にある初心者用の狩り場で俺たちは一時間、二時間、三時間と時間を忘れて狩りまくった。
「いや〜、結構狩ったな。レベルも初日にしてはそれなりに上がったんじゃないのか」
「そうだな。この調子なら最初のクラスアッププレイヤーになれるかもしれないぞ」
「そしたら最高なんだけどな」
最初のレベル上げは確かに順調だがこのペースじゃあ後、最低でも半年かけなきゃクラスアップは出来ない。
「俺はそろそろやめるけど、ケンジはどうする?」
「俺はもう少しやってからにするよ」
「分かった。それじゃあまた明日な」
オニヤはメニューを開くとログアウトボタンを押した。オニヤのキャラクターは光の粒となり少しずつ消えていく。
「宿屋じゃなくてもログアウトできるんだな」
一人で呟くとさらにレベルを上げるために俺は狩り場の奥へと足を進めた。
狩りを一人でやり始めてから一時間、流石に眠くなってきた俺がそろそろログアウトしようと思いメニューを開くと持ち物の欄に謎のマークが表示されていた。
なんか特別なアイテムでも手に入れたのかな? アイテムボックスを開くとそこに入っていたのはこのゲームにおける最重要要素、序盤に手に入れては絶対にいけない物。それは
神器 天叢雲剣だった……。
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