第4話:不思議な感情
キーンコーンカーンコーン――
静かだった空間に、大きなチャイムの音が響き渡る。
「よし、今日の授業は終わりだ。もう帰りの仕度を始めてていいぞ。」
ソラのクラスの担任でもあり、理科の授業担当でもある田中修は大声で言った。
どうやらこれが最後の授業だったらしい。
「ん……もう終わりか……。」
ソラは眠たそうな声でそうつぶやくと、大きく背伸びをした。
「ずいぶん気持ちよさそうに寝てたね。」
突然冷がソラに声をかける。
「ん?……あ、あぁ……昨日ちょっと眠れなくて……。」
「何かあったの?」
ソラの返答を待ちわびていたかのように冷はすばやく問いかけた。
「?……いや、少し妙なメールが来てね……。」
「どんな?」
冷が興味津々な顔をしている。
「何か、このメールが見えますかとかそんな感じだった。」
ソラがそう言うと、冷がなるほどといった顔でうなずいた。
「?……何か心当たりでもあるの?」
ソラは冷の反応を見ると、少し気になったのかそう問いかけた。
「いや、別に。」
冷は静かな声でそう答えた。
「ソラー、今日暇ぁー?」
すると、突然前の方から優の声が聞こえてくる。
「暇だけどー……何か用事でもあるの?」
「いや、別にこれといった用事があるわけじゃないけど……暇だから遊ぼうかなと。」
優がそう大声で言うと、ソラがとりあえずこっちに来て話そうと手招きをした。
「まぁ僕も暇だから別にいいけど……どこで何して遊ぶ?」
「あー……そうだな、じゃあ俺んちに4時集合は?これしようよ、これ。」
優はそう言うと、ギターを弾く素振りを見せた。
「そうだなー……久々に音合わせでもしよっか。」
ソラはそう言うと、少し考えてからOKと返事をした。
そしてちょうどその時、ソラの目に転校生、海音瑠衣の姿が映った。
(さっきからずっと座りっぱなしで……何してんだろ。)
ソラは少し不思議そうに海音瑠衣を見つめていた。
すると、突然海音瑠衣が立ち上がりこっちを振り向いた。
「あ……。」
ソラは思わず声をあげてしまった。
「あの……何かご用でも。」
海音瑠衣はおっとりとした口調で問いかける。
「あ……いや、何でもないです。ただちょっと考え事をしてて……。」
「そうですか……。」
そう言うと、海音瑠衣は平然と自分の席へ戻っていった。
「何だろう……あの人とは……自分と同じ感じがする。」
ソラは、小さな声でそうつぶやいた。
ソラには時々、何か人の感情を読み取る不思議な力があった。
この人はこんな性格だろうとか、この人とはこれから深く関わっていく事になるだろうとか。
そういう発想が突然頭によぎり、そのほとんどが実現しているのだ。
しかし、ソラ自身は自分に何か特別なものがあるとは思ったことは一度も無かった。
「ソラー、帰ろうぜ。」
優は帰りの仕度が終わったのか、既に教室から出ようとしている。
「あっ……ごめん、すぐ行く。」
そう言うと、ソラはいそいそと帰りの仕度を始めた。
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