09‼
「企業秘密で」
「…………」
ということで、マヨやチョコや鞄のことを知りたい2人をどうにか乗り切った。いや、振り切った。二人とも納得してないしな。
「では、あとは夜が明けるまでここで待機ですね」
「ええ。ただモンスターが来ないとは言っても、普通の獣もいますので見張りは立てなければなりませんわ」
「あぁ、普通の動物もいるんだっけ。では、見張りは俺が立ちますよ」
まぁ、男だしな。『むこう』では普通に徹夜の仕事もしてたし、一日くらいなら問題ないだろう。
「いえ、私たちも訓練でやっていたことなので、安全の為にもここは3人で2人ずつ、交代でやりましょう」
「……はい、よろしくお願いします……」
うん、経験の差が出ました。男といっても素人だしな、ここは素直に従っておこう。
「では、順番は……」
「ム、ムム~ム」
「ん?スライムさんも見張りをしてくれるのか?」
「ム~ム」
「え?一人でやってくれるの?」
「ム」
「あの、カケルさん?」
「え~と、スライムさんが一晩くらい寝なくても大丈夫だから自分だけでいいって……」
「「…………」」
その後、全員で相談の結果、スライムさん+1人ということでまとまった。俺は、せめてカッコつけさせてもらおうと、一番ツラい真ん中の順番にしてもらった。2人は苦笑いしてたけどね。
「それじゃ、お先です」
「はい、おやすみなさいませ」
「おやすみなさい」
「ム~」
一番手のサラさんと馬車で寝るルルティアさんに挨拶し、敷くものもないので馭者席へ。寝心地は……まぁね……。そうして仰向けになり夜空を眺めると、
「…………あぁ、本当に異世界に来たんだなぁ…………」
空に浮かんでいたのは大きな月。
それと…………
その横で優雅に泳ぐ巨大なクジラがいた。
幸い、見張りを問題なくこなし、何事もなく朝を迎えられた。
「では、朝ご飯を食べたら出発しましょうか」
「朝ご飯もいただけるのですか?」
「えぇ、そんな豪華なものは出来ませんが……ん?え⁇」
そう言って鞄の中を確認するとおかしなことが。
「(使った材料が戻ってる⁇)」
そう、昨日使った食材が元に戻ってるのだ。パンやサラダチキン、さらに食べ切ったはずのチョコウェハースまで。これは…………
「あの、カケルさん……?」
「え?あ、すみません。すぐに準備しますね。え~と、昨日と同じものでも大丈夫ですか?」
「ええ!感謝いたしますわ!」
「それほどでも。それでは、サラさん。水とお湯をお願いしますね」
「かしこまりました。お任せください」
とりあえず鞄の検証は後に回し、4人?で朝ご飯を済ませる。
その時の話によると、領都へは普通の馬車で3~4日。しかし、昨日乗った馬車のスピードなら、遅くとも明日、早ければ今日中に着くのではないか、ということだった。
「それじゃ、スライムさん。頼むね!」
「ム~!」