02‼
「おぉ~…、お前キレイだなぁ…」
この黒くてデカいスライム、ツルツルでツヤツヤなだけではなく、なんと光が当たるとその部分が反射で色が変わって見えるのだ。
似ているのは以前、石屋で見たブラックラブラドライトだが、こいつは蒼く見えるだけではなく、角度やタイミング?によって碧や紅や金、銀などに、ゆったりと様々に変化をしている。
場所が森の中、しかも程よく日も差しうっすら風もあるので、見ているそばから森の木々が揺れるに合わせて色を変えている。
思わず時間を忘れて見つめていたが、当のスライムがプルンッと身動きをしたので我に返った。
「ヤバッ、どのくらい見てたんだ?ていうか今何時だ?」
腕時計を見ると針は午後3時過ぎを指している。
「う~ん……、これ夜になったらどうなるんだ……?」
知らない場所で森の中、服装以外の持ち物と言ったら腕時計、使えないスマホ、あとは財布などを入れたショルダーバッグ……。とてもではないが夜の森を過ごせる装備ではない。
「マズいな、キャンプの知識もない一般人の俺にサバイバル生活なんて無理だぞ。そういえば昼も抜いたし、さっき全力で走ったから喉も乾いたな……」
などと考えていると、目の前のスライムが再びプルンッと動く。
「あぁ、お前がいたな。キレイなものを見せてもらったから、お礼に何か上げられればいいんだけど……」
飴でもないかとポケットなどを探っていると、ショルダーバッグに入れた手がいきなり奥に吸い込まれた。
「おわぁ‼ な、なんだ⁉」
慌てて手を引くと、ショルダーバッグから普通に出てくる。
「……そうか、ワイルドカピバラさんはともかく、デカいスライムだもんな。まぁ、これで……異世界が確定だな……」
ショルダーバッグを開いて覗いてみれば、奥は真っ黒、何も見えない……。改めてこの中に手を突っ込むのは勇気がいるが……、そ~っと、ゆっくり手を入れて中を探ってみると、
『ピロリン♪』
「おわっ⁉」
『マジックバッグが起動しました』
可愛らしい音と共に、頭の中でスーパーで買ったはずの物が一覧になって並んでいた。
「……うん、マジックバッグ?収納袋?なのか。おっと、とりあえずお前に何か……」
と良さげなものを探すと、袋詰めのチョコのウェハースがあった。
「男の一人暮らしだし、新しいお菓子とかにも興味がなかったしなぁ。んじゃ、ほら、一つ食べてみるか?」
と自分に言い訳しつつ、袋から1つ取って小袋から出し……、近くの石の上に置く。……まぁ、スライムだしな。持ったままだと腕ごと……っていう心配も一応、ね。
その姿を見ていたのか言葉が分かったのか、スライムはゆっくり近づき、その体にチョコウェハースにくっつけて中に取り込む。
すると、とくに咀嚼する音などは聞こえないが、代わりにポヨンポヨンとリズミカルに体を揺らし始めた。
間もなく食べ終わったのか揺れがおさまると……、動きを止め近づいて体をこちらに寄せ、何かを訴えるかのようにジッとしている。ジッとしている。ジッとし
「わかった!わかっよ!もう一つやるから!」
スライムの圧に屈し、苦笑しながらもう一つを出して石の上に置いてやる。すると再びチョコウェハースを取り込んでポヨンポヨンと揺れだした。