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おいお前ら、なんで気づかないん?(・ω・)

作者: 林太郎

今日は隣の家が燃やされた。


住んでたアイツは良いヤツだった。少し抜けているところがあったけれど、人には優しいし面白いし、仲良くしてた。


燃やしたのはこの町に住んでるギャングたちだ。


正直、町の回覧板にアイツの悪い噂が書き込まれたと知ったときから嫌な予感はしてたんだ。アイツは俺に電話して来て、泣きながら「俺はそんなつもりでしたんじゃない!」と訴えてた。


俺はそれを無視した。俺の家まで火をつけられちゃあ堪らないからだ。


ギャングたちは容赦をしない。悪のレッテルが貼られた人間をナイフで切り刻むのは、彼らなりの正義なのだ。だから彼らの仲間内ではこの正義の執行のことを、粛清と呼んでる。


一度どこかで粛清が始まると、ギャングたちは町中から終結してきて、何週間も、彼らの気が済むまで、悪人を切り続ける。


もう、一ヶ月くらい前になるが、裏の通りで粛清が始まった。野次馬根性が働いて、ギャングに取り巻かれている家を見に行った。

家を取り巻く群衆の外側にいたヤツが「お前なんか死んだ方がいい!」と叫んでいた。何があったのか気になって、叫んでたヤツに悪人が何をしたのか聞いてみたら「詳しいことは知らないっす」と言われた。


ああ、なんかこれ、聞いたことあるなと思って、中学時代の、義務教育時代の歴史の教科書を開いてみた。


うん。同じじゃないか。


誰かが悪のレッテルを貼り、周囲はどうして悪なのか大して検討せず、自分がどうして悪を裁けるのか考えず、言われるがままに、ナイフを振る。それが正義だと疑わずにナイフを振る。銃弾を撃ち込む。


きっとこのギャングたちがあのときのドイツにいたら。


ああ、考えたくもない。そんなヤバイ奴らが町を闊歩してる。なんの自覚もなく、笑ってやがる。


ギャングじゃない奴らも、それに気がついていない。裁かれるべきは、顔写真と住所が町中にさらされるべきは、ちょっと不謹慎な発言をした隣人ではなく、ギャングどもだということに。


なんで気がつかない?


ギャングたちはユダヤ人虐殺に加担した人間たちにこんなにも似ているのに。


玄関のドアが強く叩かれた。


「お前も生きてる価値なんてねぇよ!」


炎上が始まる。

届け。

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