甲冑の乱舞
『君に模擬戦闘を申し込みたい』
急に通信してきた相手は凛とした声音でそう言ってきた。
《オヴェール》…
聞いたことがない訳では無い。確か代々軍人の一家だった筈だ。
武勲も高く、知名度もそこそこ高い。
『何故俺なんだ?俺とは面識が無いだろ?』
『タクヤと面識がないのに模擬戦闘を申し込むなんて、いささか急じゃないかな?』
『君とは話していない』
オヴェールはクルスの批難を切り捨てた。
『軍人の家柄のお前なら俺と模擬戦なんてしなくていいくらい強いんじゃないのか?』
『君こそ、鋼鎧甲冑の扱いが素晴らしいじゃないか。それこそ、まるで扱ったことがあるかのようだった』
『そんな訳ないだろ、触ったのは昨日が初めてだ』
『まぁそれはいいとして、私は強い者と戦いたいのだ』
『何故?』
『強く在る為に』
オヴェール家にはそのような風習があるのだろうか、それとも家訓だろうか?
『受けるのか受けないのか、はっきりしてくれ』
『分かった。受ける』
『そうか、ありがとう。では、早速始めようか』
俺とオヴェールは互いを模擬戦闘の相手に設定し、模擬戦闘モードを起動する。
模擬戦闘モードは実際の攻撃で受けたダメージを演算で正確に割り出して出来たシステムだ。
模擬ブレードや銃などでは鋼鎧甲冑は傷一つ付くことは無い。
しかし、当たった部分に実戦で得たデータを当て嵌めて被害を予想、その部分の機能の停止ないし戦闘不能の判定を下すことが出来る。
模擬戦闘では先に戦闘不能の判定が出た方が敗北である。
『こちらから行くぞ!』
オヴェールの短機関銃から激しい銃撃が放たれる。
これを高速で飛行し回避、機体を転回し突撃銃で反撃する。
その反撃もスラスターの出力を瞬間的に増大するブーストで器用に回避され、攻撃の機会を与えてしまう。
(このままでは…そうだ!)
俺はブーストで短機関銃の有効射程から離れ、中〜遠距離から攻撃することにした。
これを察知したのかオヴェールはブーストで距離を詰めようとするが、これを銃撃で阻止する。
そして突撃銃をフルオートからセミオートへと切り替えて距離を取りつつ狙撃を始める。
高起動のタイタン級は当てるのが難しいが、俺はなんとか数発当てることに成功する。
しかしこちらがリロードに入るとその機を逃さずに、つかさず距離を詰めてくる。
「チッ…」
リロードを終えると俺はすぐさまフルオートに切り替えて射撃し距離を置こうとするが、オヴェールは模擬ブレードを抜いて弾を弾きながら尚距離を詰めてくる。
(甘いッ…)
向かい撃つべくこちらも銃をしまい、模擬刀を構えてブーストで接近する。
ギィンッ!!!!
両者の刃が激突する。
ブーストで運動エネルギーも加算された斬撃はブレードを押し返し、オヴェールの機体ごと吹き飛ばす。
この隙を逃さずに即座に突撃銃に切り替えて、畳み掛けるように銃撃を撃ち込む。
これを察知し、ブーストで無理やり体勢を立て直したオヴェールは左腕を犠牲にして戦闘不能を回避する。
俺は弾幕を張りながら接近するも、短機関銃で応戦されスラスターなどの動力機関に被弾する。
それでも構わず模擬刀に切り替えて突っ込む。
ガチィンッ!!!!
深く重い金属音。
上から切り込まれる模擬ブレードを模擬刀でいなし、腹部に一撃を加えた。
痛手を与えたはずだがそれでなお抗おうとするため、ブーストで離脱しようとするもスラスターの一部が使用不可により思った速度が出せない。
あまりスピードが出ていないところに短機関銃による追撃を受けてしまう。
全身に満遍なく銃撃を受けたせいでスペアマガジンと突撃銃、そして脚部のスラスターが使用不可になってしまった。
オヴェールもスペアマガジンが被弾で使えなくなったのか、マガジンの弾を全て撃ち切ると模擬ブレードを抜いてブーストで突っ込んでくる。
こちらも模擬刀を抜いて少なくなったスラスターを噴かせてブーストで迎え撃つ。
ガチィィィンッ!!!!
先程よりも激しい金属音を打ち鳴らしながらしのぎを削る。
低くなったスラスター出力は片手で戦うオヴェールを押し返すほどの力は残っていなかった。
模擬刀を弾かれるも背中の残っているスラスターやバーニアを全て動員しブースト。
模擬ブレードを振りかぶったオヴェールの装甲に模擬刀を切り込んだ。
ギィンッ…
『マリーシャ・オヴェール機、戦闘不能判定を確認』
『模擬戦闘はタクヤ・クロミネ機の勝利 』
どうもこんにちは、白い六角柱です!今回も読んで下さりありがとうございます!初めての戦闘シーンで難しかったです。読みづらかったりわかりにくかったりした場合はすいません。クロミネくんは今はあまり強い設定ではありませんが、経験を積んで強くなってもらうつもりです。では、拙い文章ではありますが次回もよろしくお願いします!