入学式と出会い
体育館に着くと他のクラスの生徒が既に椅子に座っていて、その横にある区画の椅子に座るように指示された。
椅子に座ってしばらくすると入学式が始まるというアナウンスが入り、校長の挨拶や担任の紹介などがあった。
中でも1番生徒の目を引いたのは新入生挨拶だった。
選ばれた生徒はミリシア・フォーカス。有名人だ。
彼女の父は電磁投射砲の開発者の1人。ハルバン・フォーカス。
電磁投射砲の開発者達の地位は当然高いため、彼女はそうとうよい暮らしをしているだろう。
特にフォーカス家は有名で、国内では知らない人はいない。
彼女が呼ばれた時は皆入学式中だと言うのに騒がしくなった。
当人はとても高潔で礼儀正しそうな空気を帯びて登場し、一礼した後ゆっくりと挨拶の言葉を述べた後去っていった。
その淑女然とした姿に、誰もが見とれていた。
入学式の後、直ぐに解散となり時間はまだ10時半を回ったところだった。
ルクスは先に帰ってしまったので教室でボーッとしながら待っていると、1人の女生徒が話しかけてきた。
「キミは寮の時間待ち?」
「そうだが、君は?」
そう聞くと女生徒はにこやかな笑みを浮かべてこう答えた。
「わたしはエリス・マツタニ!エリスでいいよ!」
「俺はタクヤ・クロミネだ」
「タクヤくんね!よろしく!」
「ああ、よろしく」
すごくハキハキと話すが、堅苦しい訳ではなく明るいヤツだ。
悪いヤツでは無さそうだな。
「まだまだ時間がありそうだし、一緒に学校を見て回らない?」
面倒くさかったから教室でじっとしていたが、どこに何があるのか知っておくのも悪くないな。
「ああ、いいぞ」
「やった♪」
というわけでエリスと廊下を歩いている訳だが、こいつはなぜか手を繋いできた。
女子は何を考えてるか分からんが、何を裏で言うかも分からないから用心しなくては。
「おい、格納庫に行ってみたいんだが…」
「そう?じゃあそうしよっか!」
そう言うとエリスは駆け出した。
「ちょっ、おい!廊下を走るな!」
急に加速したので腕が痛い。本当に元気なやつだ。
「わたし鋼鎧甲冑見たことないから早く見たいんだよね!」
そう言ってスピードを落さずに走る。
「いや、誰かにぶつかったらどうするんだ!いいからやめろ!」
エリスの腕を引っ張りながら言うも、既に遅かった。
エリスはトイレから出てきた女子と衝突し、倒れ込んだ。
しかし加速したままの俺はエリスの腕に引っ張られ、床に叩きつけられた。
「ごフッ…」
あまりの衝撃で内臓が傷んだためジーンとした痛みが残ったが、直ぐに立ち上がりエリスがぶつかった女生徒に声をかけた。
「すいません、大丈夫ですか?」
あれだけの速さでぶつかったら大丈夫なわけがないのだが一応聞いてみる。
「イタタ…大丈夫です…」
そう言って顔を上げたのは噂の人、ミリシア・フォーカスだった。
(うわ…面倒臭いことにならんと良いが…)
そう考えながらも未だに突っ伏しているエリスを起こす。
「おい、いつまで寝てるんだ」
「ウーン…タクヤくん…?」
意識が朦朧としているのか、寝ぼけたような声を出す。
「いいから起きろ、言った通り事故っただろ。早く謝れ」
「ウーン…あっ!ミリシア・フォーカスさん!?ごめんなさい!」
ぶつかった相手をみて、エリスは反射的に謝った。
「いいんです…こちらこそよく見ていなかったもので、申し訳ありません」
ぶつかった所をさすりながらミリシア・フォーカスは続けた。
「それより…そんなに急いでどちらに?」
「鋼鎧甲冑の…」
「鋼鎧甲冑の格納庫に行こうとしてたんです!」
俺の言葉を遮ってエリスは元気に言った。
「まぁ…!私も時間が余っていたもので、少し校内を見て回ろうかと思っていたのですけれど…ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「いいよ!」
「俺も構わない」
「有難うございます!折角ですからお昼も一緒にどうですか?」
そういや寮の時間は13時と昼時だし、先に昼食をとった方が良いだろうな。
「全然いいよ!あっわたしはエリス!」
そういや自己紹介がまだだったな。向こうの名前は知ってたから忘れていた。
「俺はタクヤだ」
「私はご存知だと思いますが、ミリシア・フォーカスです。どうぞミリシアとお呼びください」
「よろしくね!ミリシアさん!」
「ええ、よろしくお願いします」
こうして3人で格納庫へと向かうことになったのだった。
今回は女の子を2人出してみました!
元気のあるエリスと清楚なミリシアです。
よく見かけるような出会い方をしていますが、気にしないでいただけると嬉しいです。
だって他に思いつかなかったんだもん。
次回からロボット関連の説明が長ったらしくなると思いますが、ちんぷんかんぷんだったらすいません。