なな
森の中には街道があるため、森に詳しい地図がある。町から半日はかかるが、森の向こうにも町があり、町を行き来するための街道だ。その地図を持って、探索を行う事になった。
「昨日はこっちから来たよね。」
「うん、猫に付いて来たから道があやふやだけど…」
「取り敢えずはこっちの方向で範囲を広げて探そうか。」
二人は歩き始めた。
「足跡は残ってないですね。昨日は晴れてたから仕方ないか…」
ユウは地面に向けた視線を上げて、回りを見渡した。
「もしかしたら、私がいた場所に鞄が落ちているかもしれない。鞄を目印に探してみよう?」
「わかりました。鞄を探して、鞄がある周りに何かないか見てみましょう。」
結局、この日は鞄を見つけることが出来なかった為、次の日も探索になった。
「今日こそは、みつけるぞ!」
ミライは意気込んで草むらに入っていく。そんなミライの後ろをユウは目印をつけながら進む。
チリン、鈴の音がした。ミライは辺りを見回すが、何もなかった。ユウにどうしたかと聞かれて、鈴の音がしたと答えたが、ユウには聞こえていない。
また、チリンと音がして、ミライは聞こえた方に足を向けた。茂みの奥にあの時の猫がいた。
「にゃあ」
猫はひと泣きして、歩き出した。ミライは猫について行く。ユウはいきなり歩き出したミライを追って付いて行った。
しばらく歩くと、少しだけ開けた場所にポツンと鞄が落ちていた。ミライは鞄の中身を確認した。誰も触った形跡はなかった。ユウも追いつき、ミライが気が付いたらいた場所ということで、周りに何かないかと探し始めた。
ぐぅぅぅっと音がした。ミライは、咄嗟にお腹を抑えた。
「そろそろお昼の時間ですね。休憩にお昼にしましょうか。」
ユウはそう言って、鞄からお弁当を取り出した。
完熟目玉焼きとベーコンを挟んだサンドイッチ、コールスロー、うさぎさんりんご、そして水筒には紅茶。
「美味しそーだね!うっ、人参が入っている…」
コールスローにオレンジ色の細く切られた野菜を見て、顔を青くするミライ。
「人参、お嫌いですか?」
「………う…だ、大丈夫、た、食べられる…よ?」
上目遣いに聞いてくるユウにミライは数秒間を置いて、吃りながら答えた。
「刻んであるから大丈夫!問題ない、ない。」
空回るミライを見て、次からは分からないように料理に潜ませようと思った。