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プロローグ
ちりん、と鈴の音が聞こえる。学校帰りの少女は辺りを見回してみた。ちりん、とまた聞こえ、少女の体の正面に一匹の猫がいた。茶色の虎柄の短い毛、触り心地が良さそうで、瞳は翠と琥珀が混じった様な色だ。猫は少女に背を向けて歩き出した。たまに少女を振り向いては歩きを繰り返している。まるで着いて来いと言っている様である。少女は猫の後に着いていった。
ーーー貴女を待っていました。ーーー
少女が猫を追いかけていたら、不思議な雰囲気の女性が現れた。花嫁が着けるようなベールを頭に被り、深い青色のハイネックのドレスを着た女性だ。髪の長さはベールに隠れていてわからない。
その女性が手に持っていた分厚い本を開いた途端、本が光輝き、眩しさに目を閉じた。
ーーー彼女をーーー
その女性の声なのか、何か言っているようだが少女にはよく聞こえていないようだ。眩しさに目を開けていられない少女は光に包まれた。その後、少女が立っていた場所に少女の姿はなかった。
ーーーどうか彼女を、彼女を目覚めさせてーーー