【短編】誰か銭湯の男湯に美少女(ロボ)が居た時の正しい対処法を教えてくれ。
駄作です。嗤ってやってください。
そういうの要らないって人はブラウザバック!
既に連載化しております。後書きのオマケは連載欄には無いのでそこだけ読むのがオススメ?
H29.5.13:本文を加筆、修正させて頂きました。
その日はいつもの様に近くの公衆浴場に行っていた。
早くに親を失くし、某額に傷の有る魔法使いのその叔父さんの様な人達に高校に入って直ぐに追い出されれば、そりゃあ大学に行くのを諦めてバイトの掛け持ちで食い繋ぐ羽目になる訳だ。
そんなこんなで築五十は軽く越えてくるし、近所から霊が出るとか何とか言われてる風呂無しボロアパートに一人暮らしして、毎晩寒い中徒歩十分ほどの銭湯に通っている。
平日は一日三本、休日は午前・午後の合計五本のバイトを掛け持ちしてる僕にとっては、銭湯は唯一の休息時間の様なものである。
まぁ、何が言いたいかっていうと———風呂は嫌いじゃ無い。
衣服をもう自分の場所の様になっているロッカーに放り込み、百均で買ったヨレヨレのタオルを持った僕は風呂場の戸を勢い良く開き……
そっと閉めた。
……浴槽に、女の子が居た。
まあ、それだけじゃまだ良かったんだ。いや、良くは無いけどもマシだったんだ。
その子は首から下が某シュワロツ○ネガーが溶鉱炉でアイルビーバッグする映画のあのロボットじみた機械仕掛けの身体だった。
うん、自分でも何を言っているのか判んないな。
取り敢えず素数を733まで数え、落ち着きを取り戻した僕はアレが一体何なのか真剣に考察する。
先ず、どう考えても人間じゃあない。距離が遠く湯気も有って見難かったが、シルエットは人間のソレじゃあなかった。
そうなると答えは見えてくる。恐らくこの銭湯の番頭である「九条 楓花(20)」の仕業であろう。
彼女は高校時代の先輩であり、事ある毎に僕にイタズラを仕掛けてくる。今日は一番風呂だと言ってきたのは彼女であるし間違い無いだろう。
全く今回は手の込んだ嫌がらせだ。そう思ったら急に心が冷めてきた僕は二重トラップが無いか警戒しながらかけ湯をし、ゆっくりとお湯に浸かった。
よくよく見ると本当に精巧に作られてるな……
肩に掛かるほど長い銀髪。綺麗な青色で切れ長の目はどう見ても人間にしか見えない。一体どうやってこんな物を用意したというのか到底理解出来ない程素晴らしい出来だった。
僕はそっと彼女(?)に近づき恐る恐るその顔に触れる。
湯気の所為で少し濡れており熱気に中てられていたからか少し温かい。質感はほぼ人間と同じ。と、いうより人間そのものの様だった。
益々こんな物を用意出来たのか解らない。そもそも先輩は面倒くさい事はやらない性格なのだ。やるとしても風呂場中に油を撒き散らしたり、ゴキブリのフィギュアを並べたりする事位である。そんな人がこんな手の込んだ物を作るだろうか?
……因みに、先程挙げた例は既に数ヶ月前に仕掛けられている。その時はもう僕の先にお爺さんが入ってしまうわ、掃除は手伝わされるわで大変だっt「そろそろ手を離して頂けますか、変態さん」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ⁉」
「五月蝿ですねぇ…… 喋りますよそりゃ。」
耳を塞ぎながら彼女はそう言った。
いや、全くもって理解できない。何で只の銭湯に流暢に喋るヒューマノイドが居るんだ? 何処から来た? 誰が作った? 目的は? てか何で首から下だけ機械感醸し出してるんだ? まぁ、そこが人間っぽかったら僕の精神がゴリゴリ削れるんだろうけど……
「私を使ってあんな事やこんな事を妄想している所申し訳ありませんがその醜い局部を隠して頂けますか? 潰したくなります。」
「何をかな!?」
「わ、私の口から言わせるつもりですか?」
「今更もじもじしても真顔で言われたら恥じらってる様には見えないからね!?」
「はいはい、分かりましたから前隠して下さい。」
何か納得出来ないが流石にロボとはいえ美少女に見られるのは厳しいものがあるので、言われた通り僕は腰にタオルを巻く。
少し間を置いてから未だジト目で此方を睨んでいる彼女に声をかける。
「……取り敢えず上がる?」
「もう妄想は終わったんですか?」
「此処で考えるより人に聞いたほうが良いと思ってね。後、妄想はして無い。」
その身体にどうやって欲情しろっていうんだ……
「そうですね。確かに私の(プライベートな)事はマスターから聞いた方が良いかもしれません。私なら殴ってしまうかもしれませんからね。」
「いや、普通に君の正体を聞くだけだからね!? ……ますたぁ?」
*
「んで?この子は一体何なんですか九条先輩。」
「あ、シロちゃん入れっぱだった!」
抜けた声を出したポニーテールの美人は先程から言っている九条 楓花先輩である。
「入れっぱだったじゃありませんよ! てか、シロちゃんって名前なんですか!? 先輩が付けたんでしょその名前! ネーミングセンスが皆無ですもん!」
「ごめんね?シロちゃん。」
「聞けぇーー!!!」
「マスター、私この男に穢されてしまいました。」
「え!? 遂にロボ欲情するようになったのセンくん!」
「するわけないじゃないですか!」
センくんとは僕こと仙台 零人の事である。
何故名字の方を渾名にするのかこの人のセンスは理解し難い。
「はぁ…… それで? この子は何なんですか?」
「ロボット!」
屈託の無い満面の笑みで先輩は此方に謎のピースサインを向けてきた。
「見たら判りますよ……」
「いや〜。アマ○ンで衝動買いしちゃった!」
「ア○ゾンスゲえ!」
そんな文明の壁を超越した商品まで扱ってるのか○マゾン……
「シロちゃんっていうんだ〜。カワイイでしょ?」
「……少なくとも首から上は美人って事だけは認めます。」
「だってさ、シロちゃん褒められたよ!」
「この男に褒められても嬉しくありません。初対面でいきなり髪を触ってきた変態さんですから。」
「いや! まさか動くとは思わないでしょ!?」
「は?」
刹那、シロちゃん(?)の握り拳が光り輝き腕に張り巡らされているパイプが肥大化した。構えた右腕から「シュー」という音が鳴る。
あ、ヤバイ奴だこれ。
「……スイマセンでした。」
「ふん、まあ良いでしょう。」
何故僕はロボットに変態扱いされているのだろう……
*
話を纏めるとこうである。
アマゾ○でシロちゃん(仮)を買った先輩は思ったより彼女が人間っぽかったので、ちょっとテンションが上がって御飯を振る舞おうとしたら油をぶっかけてしまってまだ人が居なかったので男湯に入れさせていたらそのまま忘れた。
うん! 訳分かんねぇ!
何でテンション上がったら飯を振る舞おうとするんだ? そもそもアンタ自炊出来ねぇだろ! てか、ロボに飯を食わそうとするな! どうやったら油をぶちまける事態になるんだ! そしてどう見ても女な奴を男湯に入れんな! つうか何でロボがお湯に浸かって無事なんだよぉぉぉぉ!!!
「――くん! ねえセンくん! 聞いてる?」
「……何ですか。」
「いやさ、シロちゃん今日届いたんだけどさ、お父さんには正直に言えないじゃん?」
「あー。此処は元々お爺さんが経営してて先輩は実家から通ってるんでしたっけ?」
良かった。流石に馬鹿正直に他人に通販でロボット買ったなんて言う程馬鹿じゃ無かった。
「うん。今月のお小遣いと貯めてた貯金全部使って買ったから言い出しにくくって……」
馬鹿だった。
「知りませんよそんなの。此処に置かせて貰えば良いんじゃ無いんですか?」
そう言いつつ話題の張本人を見ると、左の手首からスマホが生えてきてそれでゲームをしていた。どうなってるんだ君の腕は。
「いや〜、お爺ちゃん新しい物嫌いだからな〜。」
「新しいとかいう次元じゃありませんけどね…… それで? 僕にどうしろと?」
「うん! 君の家でシロちゃんを預かってくれない?」
「「は?」」
二人(一人と一体)の声が重なる。
「ちょっと待ってくださいよ先輩!僕の住んでるアパートはどう考えても一人用ですし、先輩と違って僕は忙しいんです。ロボを養う暇なんてありません!」
六畳一間のアパートにこれ以上何かを持ち込める幅は無い。
「この男と同意見なのは誠に遺憾ではありますが、私もこんな変態とひとつ屋根の下なんて御免です。そんなことをするぐらいなら私は橋の下に住みます。いざとなれば砂を食べてでもエネルギーは生み出せますので。」
どんだけ僕の事嫌いなんだよ…… てか無駄にスペック高いなオイ。
「えー」
「残念そうな顔しても駄目です。大体、本ロボがいいって言ってるんだから橋の下で良いじゃないですか。」
僕がそう言った瞬間、先輩の目が途端に鋭いものになる。
「センくんの馬鹿! 鬼! 悪魔! 邪神! 諸悪の根源! 変態! 犯罪者!」
「少なくとも変態でも犯罪者でもないです!!」
どんだけこの短期間でロボに感情移入してんだこの人は!
暴言のボキャブラリーが無くなったのか先輩は僕の胸をポカポカしてくる。尤も、その威力はボカボカであるが……
「痛! ああもう! だったらそのロボを説得して見せて下さいよ!!」
なんか銀髪がコッチを睨んでいる気がするが気にしない。
説得出来なくて泣いても先輩は単純だから口八丁で誤魔化してさっさと家に帰ろう。
「ふっふーん。言ったな〜?」
先輩が何時に無く自信満々な顔で此方を見つめてくる。此れが先輩の死亡フラグである。
「シロちゃん! コード『命令』! 今日からセンくんの家に住みなさーい!」
「……了解しました。マスター。」
凄く嫌悪感を醸し出して此方を見つつ、無情にも彼女はその命を受理した。馬鹿な! フラグを折ってきた、だと!?
「どういう事ですか先輩!」
「説明しよう! シロちゃんにはもしも暴走とかした時の為にマスター、つまり持ち主の命令を必ず聞くというプログラムが組まれているのだ!」
しまった! そんな機能が付いているというのは普段の僕なら簡単に予想出来た事だった!
「どうしてくれるんですか変態さん。」
はい、今のは完全に僕の読みが甘かったです……
「約束は約束です。先輩は絶対に命令を解除しないでしょうし、家にこの子を置くのを許可しますよ……」
「やったー!」
「「はあ……」」
こうして僕は(何故か)美少女と同居する事になった。
いや、何でだ。
読んで頂き有難う御座います。
この小説への苦情、誤字脱字報告、作者の悪口、純粋な感想、連載化の希望(多分来ない。尚、既に連載化している)等は感想欄へお願いします。
今なら作者が心臓の活動を停止させるほど驚きます。
以下、本編に入り切らなかったネタ(オマケ)
※零人=零 楓花=楓 シロ=シ
・1 潰したく……
シ)わ、私の口から言わせるつもりですか?
零)今更もじもじしても真顔で言われたら恥じらってる様には見えないからね!?
シ)真顔? 一応笑顔のつもりなんですが……
零)口角が上がってないよ。
シ)ええ、疑似表情筋モジュールは節電の為使用を控えているので。
零)何の為に付いてるか判ってる!?
・2 名前の由来
シ)マスター、私の名前の由来って何ですか?
零)どうせ、髪が銀髪だからぎんちゃんにしよっかな〜 でもそれじゃあストレート過ぎるな〜って感じでしょ?
楓)何で判ったの!?
零)…………(冗談で言ったんだけどな……)
シ)最初から言おうと思ってたんですけど……
楓)ん? 何?
シ)この名前、正直ダサいです。
楓)!? き、きっとロボットには理解できない良さが……
零)ダサいですね。
楓)うわぁーん(泣)