ビール缶2本
「ただいまー」
「おかえり。バイトお疲れさま」
夜遅めにバイトから帰宅する。
シャワーを浴び、リビングに行くとお酒を飲んでいた。
「ちょっと、まだ20歳じゃないでしょ!」
「あとちょっとで20になるからいい」
そういば、誕生日知らないな……
「それでもダメっ、危なっ」
お酒を取り上げようと彼に近づくと腕を引っ張られ、彼の腕の中に収まる。
「酒臭い~」
私はしかめっ面で鼻をつまんだ。
「慣れて」
そういうと、つまんだ手を外され、キスをされる。
「んんっ」
ファーストキスなんですけど。こんなムードもへったくれもないキスだなんてっ!
「はぁっ、はぁ、はぁ……」
「キス下手」
お得意の鼻笑をかましてくる。
「ファーストキスなんですけどー」
下唇を突き出す。
「うん、じゃないと許さない」
ペロリと下唇を舐められたかと思うと、キスが再開する。
私には刺激が強すぎるっ……!
下唇を舐められたかと思えば、甘噛みされる。キス上級者にタジタジにされた。
「これは、毎日キスの練習だな」
自然と出た涙で視界がぼやける。なんで余裕しゃくしゃくなのよ~。悔しい……
「ギャフンと言わせてやる」
「フッ楽しみにしてる」
しばらくキスの余韻に浸る。
「「そういばさ、」」
出だしが被る。
「はいっ!私が先に言う」
「普通、譲り合わない?爽果らしいけど」
ドクン、心臓が跳ねる。
実はまだ、名前呼びに慣れていなかったりする……
「夏希ちゃんの所、5月に文化祭あるんだってね。一緒にいこう?」
「あー、俺も同じこと言おうとした。そういえば、文化祭の2日目、俺の誕生日なんだよね」
「5月12日?」
「そっ。プレゼント、爽果がいいな。あと好きって言われたことなかったなー」
意地の悪い笑みを浮かべ、私を上から見下ろす。
「好きって言われたいとか女子なの?ねぇ、女子っ!?てか、プレゼントはわ、た、し……なんてするかボケぇ!」
「別にしなくてもいいんだけどさ。恥ずかしがる顔が見たいだけだし」
「性格悪っ」
「罵られるのも好きかな」
「んん~~」
言葉に詰まる。
「アンタなんて嫌い」
「フッ、嘘つけ。寝ようか」
私にキスを1つ落とし、寝る準備を始める。
甘い疼きが私の胸をいっぱいにした。
「ビール缶2本……」
ほろ酔いの彼はベタ甘だ。