知る side夏宮
「まこっちゃん、待ってくださらない?お話、しましょ」
浮きかけた腰を戻す。
「いいですよ」
探るように俺を見る、和美さんの視線。
「まこっちゃんは、あの子の彼氏さんかしら?」
なぜ、人は男女がいると恋人にしたがるのだろうか?
「違います」
即答すると、深いため息をつく和美さん。
「残念ね。あの子はすごく寂しがり屋だから、ずっと一緒にいてくれる人がいたらよかったんだけれど……」
寂しがり屋、そうは見えないが……
「そうは見えないでしょ?でもね、昔は人の気を引きたくてヤンチャばっかりしてたのよぉ。本当に酷くて、ヤンチャでお返ししたら落ち着いてね。きっと、どんなことをしても離れていかないっていう保証が欲しかったんでしょうね。オホホホホ」
ヤンチャで返したってどういうことだろうか……突いてはいけない気がするから、止めよう。
「あの、彼女を育ててくださってありがとうございました。俺は彼女に救われました。そんな彼女を育てた貴女に会えてよかった」
金の亡者なとこはアレだけど……
「こんな事を言われる日が来るだなんてんてね、嬉しいわ……貴方とくっついてくれれば安心なんだけどぉ、わからないわよねぇ。私はこの先長くないから、いつまで彼女の、ここにいる子たちの帰る場所になれるか……」
「こらー!おねぇさんのスマホ返しなさーい!!」
原木さんの声が聞こえる。
その声だけで、彼女がどんな表情、どんな動きをしているのか容易に想像できる。笑みがこぼれた。
「彼女も、この場所も、引き受けます。まだ、学生で頼りないですが」
彼女がいると自分を素直にさらけ出せる。たぶん、惹かれていたんだろうな出会った途中から。
「ありがとう、爽果のことお願いします」
和美さんが頭を下げたとき、ドタバタと廊下を走る音がし始める。
「そっちは行っちゃダメーー!」
彼女の叫ぶ声。ドアが開き、坊主の少年がこちらを覗く。
「うぉー!姉ちゃんのコレ、めっちゃイケメンだぞ!!」
小指を立てる少年。どこから覚えてきたのやら……
「ほんとぉー。お兄さん、遊んでーーー」
小さい子から大きい子まで続々と応接間に集まり、あっという間に手狭になる。
「遊んでやるから。広いとこに案内してくれ」