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鬼、捕まる
この人混み、抜けるの大変そ~。予定の電車乗れないかも……
「あっちにイケメン2組がいるって!見に行こうっ!」
「今年は豊作みたいねー」
そんな会話が耳を刺激する。
「気になる……」
そんな言葉につられ、ついていくと、
「なんだ、夏宮さんかい。もう1人は……チャラいっ」
意外な組み合わせだ。
あっ!
バッチリと夏宮さんと目が合う。ごめんのジャスチャーを周りにしながらこちらに近づいてくる。
追い掛けられると逃げたくなるのは人の性だ。
「来ないでくれっ!」
たびたび、人とぶつかりながら校門へ一直線に駆けた。
「捕まえた。送ってあげるよ」
校門が目と鼻の先に見えたとき、ついに捕まる。好奇の目が集まる。
「わかった、あの輪から抜け出す口実がほしかったんでしょ。じゃあ、送ってもらおうかな」
繋がれた手を強調するように持ち上げる。
「だから、手、離して」
パッと離れてゆく手。なんだか、
「昔と立場、逆だな」
「私も思った」
君と穏やかに笑いあう日が来るなんて、思いもしなかった。