スマイル
水たまり?
いや、違う。
水じゃなくて…
私は恐る恐る赤い液体に触れてみた。
少しベタついていて…
ん?これ…ケチャップ?
少しあたりを見渡すとスマイルと横には半分以上中身のなくなっているケチャップがあった。
「スマイルー!こんなにしてもう!」
ぐしゃぐしゃとスマイルの顔を撫で回す。
スマイルは気持ちよさそうに目を細めている。
良かった。何考えてたんだろう私。
季節外れのホラー映画なんか見るんじゃなかったな〜
昨日見たホラー映画を後悔しながらリビングの机へと向かう。
今日の朝ごはんは…
ない。
嘘でしょ!!朝ごはんがない!!
いつもだったら机の上に完璧に置いてある朝ごはんがご飯1粒も乗っていない。
「お母さんの馬鹿…」
お父さんと喧嘩するのは勝手だけどご飯作らないって言うのはどうかと思うね!
心の中で怒りを爆発させながら冷蔵庫の中になにか入っていないか確認をしに行く。
その途中でケチャップの海をまた目にする。
そうだ、これも片付けないとな。
うーん、それにしても大きなケチャップ海だ…飛び込んだりなんかしたら足を取られて沈んじゃいそう。
なんて、ケチャップの海なんか入る機会なんかないよね。
あ、そうだだったらタオル取りにいかないと。
タオルを取りに洗面台に行くとお風呂の電気がついていた。
誰か使ってるの?
ってそんなわけないよね。
お父さんの消し忘れだよね
モヤモヤする。
何も無いに決まってる、大丈夫大丈夫。
そう心に思いながら
お風呂場のドアを開ける。
そこにはいつもと変わらないお風呂場。
なんて、そんなわけはなかった。
「す、すまいるぅ…こんなところにまでケチャップまいちゃったの…?い、いけない子…だなぁ」
そこは鉄の臭いが充満していてとてもではないがずっといることは不可能だった。
1度ここから出ないと。
思ってるのに体が動かない。いきなりの出来事に頭がついていけない。
わんわんと声がする。
スマイル!
そうだ。スマイルが危ない。
腰が抜けて起き上がれない。
仕方ないか。
ズルズルと体を引きずりながらリビングに戻る。
「スマイル!!」
大声で叫ぶがスマイルが来ない。
「スマイル!」
なんで?
頑張ってリビングに向かいながら声を張り上げる。
もう少しで着く。
「スマッ…」
リビングに入ると私は声を失った。
スマイルはケチャップの海にプカプカと浮かんでいた。