水たまり
笑顔、笑顔、えがお、エガオ。
笑わなくちゃ笑わなくちゃ。
「えみは笑ってるのがいいよ」
私は笑ってるのがいいの。
笑って。
ぽたんと落ちた赤い雫は少し錆びた匂いがした。
次に透明な綺麗な雫が赤い水たまりに飛び込む。
綺麗。
私は笑み。
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ん…眩しい…。
カーテンからのぞく陽の光が私の目を覚ます。
「あーもう朝かあ、早いなー寒いしまだ起きたくないな」
自分体温で温かい布団の中でもぞもぞと動く。
布団の中は温かいなーここから出たらどれだけ寒いんだろう…うぅ、考えただけで震える。
そっとそのまま目を瞑ろうとした時、
バタンっと勢いよく玄関が閉まる音が聞こえた。
さっきから激しい物音はしてたけど喧嘩かな?
私の家族は三人家族、あっペットもいるから正確には四人家族、だね。
お父さんとお母さんと私、とあと犬のスマイル。
スマイルって名前は私がつけたんだよ、私の名前が“えみ”だからそれを英語にしてスマイル。
それに舌を出してる時のスマイルは笑ってるみたいでとっても可愛い。
それにしてもさっきの玄関の音や激しい物音はなんだろう。
うぅ、この布団から出ないと真相は確かめられないか。
仕方ない。
ゆっくりと布団をめくると冷たい風が少し出した足をするりと通り過ぎていく。
やっぱり寒いなあ。
ぺたぺたと冷たい廊下を歩いてリビングへ向かう。
「お、お母さん?お父さん?」
さっきとは真逆で物音一つ聞こえない。
もしかしてお父さんが遅刻ギリギリに起きて急いで支度をしててあんな激しい物音がしたのか、玄関の音もきっとそうだよね。
「はーもう驚かさないでよー」
ガチャリとドアを開け中へ入ると何かがこぼれていたのかすべって尻餅をついた。
「いったーい、もうお父さん急ぐのはいいけど珈琲こぼしっぱなしはやめ…」
ふと、足の裏を見ると足の先からは赤い水が滴っている
赤い珈琲?そんなのないよ。
まさか、そんなわけないよね…?
苦笑いをしながら目線を少しあげてみると、そこには大きな水たまりができていた。