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君と僕の心世界  作者: エンゼルケーキ
4/18

出会いの日

 街に朝の陽射しが差す頃、部屋の窓から漏れて来た眩い光で僕は目覚めた。

 見慣れない場所、見慣れない部屋、少しだけ自分が誰なのかも忘れたような感じがした。

 

 眠気もある中、ベッドの上でゆっくりと思い出そうとしていると顔の横に物が当たり、何かと思い僕はそれを手にして確認して見た。


「うん……何だ、えっと。学園の……手引き!?」


手に取った物を見た僕は、一瞬でこれまでのことを思い出した。新しい街、新しい学園と生活のことを。


「あれ、僕は寝ちゃったの!? えっと、もしかして、遅刻!? 学園って始まってるのかな!?」


 壁に掛けてある時計を確認して見るとまだ朝の時間帯、だがシフォンは昨晩の夜その学園の説明となる物を読む前に寝入ってしまった為に学園が始まる時刻を把握していないので焦りの色を見せた。


「とりあえず、急いで向かわないと!」


 慌てていたシフォンは何も準備もせずに、急いで自室の扉から出て寮の廊下へと出た。

 すると扉の開ける勢いで音が鳴ったせいか寮の廊下を歩いていた何人かの生徒達から注目を浴びた。


「あれ。まだ学園の生徒が……いる? まだ時間は大丈夫なのかな?」


 シフォンは寮の廊下を歩いている学園の生徒を見て、学園はまだ始まってはいないのだと思い少し冷静になり再び自分の部屋へと戻っていった。


「と、とりあえず、学園の始まる時刻だけでも確認しないと。」


 急いで学園の手引きを流し読みして学園の時刻だけでもと確認した、そして壁の掛けてある時計の時刻と照らし合わせシフォンは安堵した。


「良かった、あんまり時間は無いにしても少なくとも遅刻の心配は無さそうかな。」


 冷静になったシフォンは自分の身の回りの準備と確認を始めることにした。


「とりあえず、顔でも洗って急いで制服に着替えて――――うわっ、制服のまま寝てたのか僕は! どうしよう制服が皺になってる、しょうがない手で皺伸ばして誤魔化そう。」


 朝から色々と忙しくなっている僕は、もう一つの問題がある事をお腹の音によって気がつかされた。

 そう昨日からずっとお腹を空かせたままだったことに。

 

「うー。そうだった、お腹も空いたな……さすがに朝食は食べて行きたいな。さっさと準備して寮にある食堂で何か食べよう。」


 そう呟いたシフォンは身嗜みもほどほどに自室を出て、寮の食堂がある場所へと向かうことにした。

 

 空腹のせいか目的地に近づくにつれ食べ物の匂いを敏感に感じ取れるような気がする自分に少しだけ可笑しくなった。

 そして食堂に着いたシフォンは聞き慣れた声をした人物に声を掛けられた。


「よう、シフォンじゃねーか! おはよう、随分と遅いんだなお前。先に行ってるもんだと思ってたぜ。」

 

 フェンだ、どうやら先に食堂へと朝食を食べに来てたみたいだ。

 

「おはよう、フェン。それが昨日の後、自分の部屋で学園の手引きを読もうとしてたらそのまま朝まで寝ちゃってて……」

「なははは、お前ってどっか抜けてるところあるよな。まぁそういうのも含めて俺個人としては気に入ってるんだがな。」


 果たして抜けているところ含め何が気に入られたのか、不思議に思う僕だった。


「まぁいいや、ほらお前も飯食いに来たんだろ? あんまし時間も無いんだから早くしたほうがいいぜ。」

「そうだね、ちょっと行ってくるよ。」


 僕は適当なメニューを選びに行き、またフェンがいる席へと戻ることにした。


「そういやシフォン。お前、昨日は学園の手引き見る前に寝ちまったんだっけ。そしたら今日は学園で最初に何するかまだわかってないのか?」

「うん、今朝は慌ててたから学園の始まる時刻しか確認できて無くて。だから行く途中にでも読もうかなって考えてたよ。」

「お前って何かマイペースだなぁ……」

 

 それを聞いたフェンは少し呆れた様子で、シフォンに今日の一日の流れを軽く説明し始めた。

 

「いいか、今日は学園に着いたらまず新入生は学園長に挨拶しに行く。次に学園と心学の授業についての講習を受けて終わりだ。新入生の初日は午前中に終わり、んで後は自由に学園内を見学するって感じだな。」


 そういえば僕はフェンと出会ってから、ずっと彼に頼りきりだ。 

 これじゃ誰かの助けになったり力になるの事を頑張るどころか、人に迷惑を掛けてばかりで情けないな。

  

「それと学園は街の中心の広場から南東の位置にあるからよ。こっから西の方角に向かえば寮から学園にそのまま着くぜ。」

 

 それに心の力の問題もある、学園とこれからの生活をしていく上で巧く扱えなければ必ず問題になってくる。

 僕はここにいる意味も失く、自分の本当やるべきことを見つけ探し出すことができない、そんな気がする。

 どうにかして僕は変わらないといけない。


「そうなんだ……。うん、わかったよ。いつもありがとうフェン……。」

「おう、気にすんな――――ん? どうしたシフォン、具合でも悪くなったのか?」


 僕の自分を追い込む思考が表立ってしまったようだ、彼に無駄な心配をさせてしまった。


「い、いや、なんでも無いよ!それより早く食べて学園に行こっか。」

「そうだな、時間に余裕があるわけでもねーし。んじゃ、行くとするか。」


 こうして僕たちは会話もほどほどに食事を終えてから、一緒に学園へと向かうことにした。

 そして、寮の玄関先を出ようとしている途中でロビーのソファで本を読んでいる見覚えのある生徒をフェンは見つけた。


「あ、おい、シフォン。あの本読んでる子、なんつったっけ昨日の夜に寮に着いたばかりの俺らに寮長のこと教えてくれた。」

「えっ、それって確か――――」


 昨日の夜に寮に着いた僕たちが出会った同じ新入生の子、少し暗めで物静かな感じの小柄な女の生徒。

 そう彼女、ジェラ・アイトスだ。


「――――ジェラさんだ。おはようございます、ジェラさん!」

「おー、そうだそうだ。よう、おはよう、昨日は助かったぜ。」


 僕たちの声に気づいた彼女は本を閉じ、こちらへと振り向き挨拶し返してくれた。


「……ん、おはよう。昨日、わかったんだ……よかった。」

「はい、おかげ様で無事に寮長に会えました。ありがとうございました! そうだジェラさん、折角ですから僕たちと一緒に学園に行きませんか?」

「おぉ、それはいいなシフォン。新入生同士、親睦でも深めながら行くか!」


 すると彼女は思い出すように承諾してくれた。


「……学園。もう、そんな時間。……わかった、行く。」 


 そんな彼女の様子を見て僕とフェンは顔を見合わせた、たぶん同じことを考えてたと思う。

 

(声を掛けなかったら、ずっとここで本を読んでいたのだろうか。)


 こうしてジェラと合流した僕たちは、寮を出て再び学園に向かう事にした。

 僕たちは街中を歩きながら他愛の無い会話をしている。


「なぁ、お前って出身どこなんだ? 俺は東の街で、シフォンの奴は北の地方なんだけどさ。結構遠くから来たりしてるのか?」

「私は、ここの街。」

「ん、ならわざわざ寮を借りる必要なんて無いんじゃないか? つか自分の家があるなら、そっちのが楽だし。」


 それを聞いたフェンは疑問に思ったことを口に出した。同じく僕もそんなことを考えていた。


「……家うるさい、本読めない。……だから、学園生になる時に寮借りたの。」


たぶん彼女の家庭環境の問題か何かだろう、それを察した僕たちはすぐに別の話題をすることにした。


「そうだ、ジェラさんはこれからの学園生活で何か願い事や目的があったりするんですか?」

「あー、ちなみに俺は信徒として頑張るつもりで、シフォンは人助けってか探し中? だぜ。」


 急な話題の変更だったが、学園生となるとやはり願いや目的が誰しもあるものだ。

 しかし彼女は興味のなさそうな感じで、ただ一言だけだった。


「……別に本読めればいい、私。」


 フェンはやっぱりマイペースだなと、考えている様子だったが、僕に取ってはその一言で少し気が楽になった気がした。

 僕は自分で自分を追い詰めるようにして何かを探す必要なんて無いのかもしれない、時に身を任せて見るのも一つの道なのだろうか。

 そうだ、だから今は今の僕にできることで満足しよう。人を助け、そして力になるのも今の僕でも何かできることはあるはずだ。

 

 新しい考えを僕の中で想像していると、大きな建物が見え始めてきた。恐らく学園なのだろうか。

 その大きな学園の敷地内を囲む様に周りには壁が隔ててあり、まるで絵本のお話に出てくるような城のようだ。


「す、凄く大きいね、もしかしてここが学園なのかな?」

「あ、ああ、凄く大きいな……たぶんここであってると思うぜ。」


 あまりにも衝撃的過ぎて二人して驚いて確信を持てずにいると、この街の出身である彼女がはっきりと答えてくれた。


「そう……あれが、私たちの学園。この世界の中心にある街(始まりの街)心臓(学園)。」


 世界の中心にある街(始まりの街)、この街の名前なのだろうか。どこか納得できる、そんなような気がする。

 これだけ大きく発展した街並みは、この世界で一番最初にできたのだろうと思わせる創りだからだろう。


「よし、さてと学園にも着いた事だし中に入って学園長とやらに会いに行くか!」

「そうだね、そうしよう!」

「……私、その前にすることある。……先に行く。それじゃあ、また。」

 

 二人で学園の門の前で意気投合の掛け合いをしてたら、ジェラが何かに気が付いた様な感じで急に僕たちに一言掛けて去って行った。


「ん、どうしたんだジェラの奴?」

「まあ、何か用事とかあるならしょうがないよ。僕たちも行こう。」


 門前でジェラと別れた僕たちは、学園の領内に入り学舎に向かおうとしていた途中の事だった。

 それは突然として、周囲の生徒が騒ぎ起き始めた。


「おい皆気をつけろ! また神徒同士が戦い始まってる、巻き込まれる前に離れろ!」


 何処からか聞こえてきた、それは注意を喚起する生徒の大きな声だ。

 

「神徒同士が戦っている……? どうしてだろう、聖戦でもないのに。」

「さぁな、何かしら事情があるんだろ。それより俺たちも学舎に急ぐぞ、神徒の戦いに巻き込まれるなんてやばそうだからな。」


 フェンは急ごうとしたが、何故なのか気になった僕は戦いが起きてる方へと駆け出した。


「ごめん、フェン!先に行ってて、ちょっと気になるんだ。」

「あ、おい、シフォン!待て、お前が一番危ねぇだろうが!」


 彼の心配も余所に、僕は戦いが起きている場へと向かった。

 そこには知らない男女の神徒が対立していて、それを囲む様にと野次馬であろう生徒達がいた。


「今日こそは貴様の私利私欲に満ちた欲念を改めさせてやるぞ、神徒の名を汚す者め。」


 その武人気質な男の神徒は女の神徒を相手にそう言い放つと、同時に心の力(ハーティスト)を仕掛けた。

 男の神徒が足で地を打ち砕き、その石塊が彼の周りを渦巻いた。

 周囲が心で満ちてるのがわかるほどの凄い力強さだ、そして男の神徒が一喝すると石塊が女の神徒を目掛けて飛び出した。


「はぁ、また貴方なの?いい加減しつこいのね。それと人の勝手でしょ願い事なんて、あと私は好きで神徒になった訳じゃないから。」 

 

 彼の言い分に対して返答しつつも微動だにせずその場で立っている、僕は思わず危ないと叫び飛び出そうになったがその必要は全く無かった。

 女の神徒に向かって飛んでいった石塊は全て彼女に届く前に視えない何かに阻まれて全て消えさったのだった。

 心の力(ハーティスト)の衝突と衝撃の反動による物か、風が吹き荒れた。


「貴方もわかってるでしょ、私には通用しないから。それと、面倒事は嫌いなの! 止めて貰えるかな。」


 その様子と口ぶりから以前から何度も男の神徒は彼女に戦いを挑んでいたみたいだ。

 

「…………」


 男の神徒は何かを考え覚悟を決めたように次への行動と出た。 


「大地を引き裂き、悪しきモノの全てを貫け、天より抱きし聖槍よ、我が心の姿を具現化あらわせ。」


 男の神徒が何かを呟くと、彼の身体から光が満ち溢れた。

 その光は身体の一点に、心臓の位置へ集まりそして光は体外へと生み出され槍のように形創られた。

 そう彼は心の力で槍を創り出したのだった。


 おい、心装具ハーティファクトだ。


 野次馬に混ざっている生徒の誰かが言ったのだろう。

 心装具ハーティファクト、フェンに聞いた事のある言葉だ、確か心の力が強い者の中でもさらに限られた者しか扱えない物だと。

 神徒なのだから使える物だとは思っていたが本物が見れるとは思ってなかった。


「ねぇ、貴方のがよっぽど神徒としての自覚が無いんじゃないの、周りの生徒を巻き込むつもり?」

「……力の使い方は理解している、他の配慮は心得てる。」


 先程のやり取りが冗談の様に思えるほど場の空気が緊迫とした。

 野次馬の生徒達も心の力(ハーティスト)を発現し、身体に纏わせ始めた。


「そう、まぁ私は別にどうでもいいんだけどね。それで、まだ続けるの?」

「無論だ、貴様の考えを改めさせるのだからな。」


 男の神徒は空中へ飛び上がり、彼女に向かって身体の回転を入れつつ槍で薙ぎ払った。

 槍から放たれる衝撃波による一閃が彼女へと襲い掛かった、しかし先程と同じように視えない何かに阻まれ弾き消された。

 しかし打って変わって彼女は少しだけ疲れの色を見せた、心の力(ハーティスト)を消耗したせいなのか。


「はぁ、面倒事は嫌い。だけど私って疲れる方がもっと嫌いなのよね、本当に貴方って迷惑の塊ね。」


 やれやれといった様子で女の神徒は相手に対して皮肉めいた。心装具ハーティファクトによる一撃であったが、それでも彼女はまだ余裕を見せている。


「ふん、さすが神徒と呼ばれるだけの実力はあるか。まぁいい、本気で行くぞ!」


 あの攻撃で本気では無いとなると、どれだけの力を出せるのだろうか。

 身の危険よりも心の力という純粋な物に僕は興味を惹かれた。


「はぁー、ねぇ、もう面倒だから全て弾き飛ばすけどいいよね? 周りの生徒の皆には一応言っておくけど本気で、心の力(ハーティスト)纏ってね! 大怪我するかもしれないから。それかできる限り離れれば、たぶん大丈夫だからよろしくね。」 


 心の力(ハーティスト)を纏うってそんな簡単に僕はできない、どうしよう大怪我するって言ってるし急いで離れるしか――――


「おーい、シフォン。大丈夫かー?」


 遠くから僕の心配をしてくれて来てくれたのだろう、フェンがこちらに駆け寄ってきてる。


「ダメだ! フェン、こっちに来ないで離れるか身を護って!!!」

「それじゃ行くよー。みんな弾け飛んでね!」


 次の瞬間、女の神徒から周囲に閃光の様に一瞬で広がりを見せる視えない何かが大きく広がったのを感じ取れた。

 視えない何か、壁のような何かが――――光の壁? 全てが光によって、弾き飛ばされた。

 周りにいた生徒達が軽く数十メートルほど吹き飛ばされてる、男の神徒は吹き飛ばされつつも防御的な姿勢を構えていた。

 僕は――――僕? 僕はどうなっているんだろう、光に包まれた僕は吹き飛ばされた?

 

――やっと君に会えたよ、懐かしいね――

(やっと僕に会えた? 君は誰なの、懐かしい?)


――そうだね、また君に会えて嬉しい――

(私に会えて嬉しい? また会えた? 何を言ってるの、君は誰?)


 光から抜け出し目を開き、その場の状況を確認してみた。

 生徒たちは吹き飛ばされ遠くで伸びているようだ、男の神徒はどうやら弾き飛ばされた遠くの場所で膝を付いている。

 僕は、僕だけが何故か戦いを見ていた、この場から一歩も動いてなかった。

 この場にいるのは僕と神徒だと思われる女の人だけ、そしてお互いに目があった。


「あ、あれ……? 君はどうして、私の力で弾き飛ばされてないの?」

「えっ、いや、ごめんなさい、わからないです……」


 彼女と僕はお互いに困惑して現状を飲み込めてなかった。

 すると彼女は何かを試すかのように僕に向けて手をかざしてみた。


「えい、弾け飛べ、ほら、臓物撒き散らしなさい。そりゃ!」

「あ、あの……」


 何かとても恐ろしい事を試している彼女に思わず恐怖した、もし試してる事が起きたらと。

 そして諦めたかのような様子で僕の顔をぺちぺちと叩きながら質問してきた。


「ねぇ、君って何者? もしかして新しい神徒? 何の心の力を使ってるの?」

「えっと、僕はシフォン・ケーキです。」

「いや、私は好きなケーキを聞いてるんじゃなくて名前とか素性をね?」

「好きなケーキじゃなくて、僕の名前がシフォン・ケーキなんです……。今日から新入生なんです……」

「うん、そうなの美味しそうね。それで新入生なんだ? 心の力はどんなの?」

「……僕は実はその、上手く心の力を発現できないんです。」


 凄い質問の嵐だ、戸惑う僕にお構いなしに質問してくる。

 あまり人には聞かせたくない自分の心の悩みまで告白してしまった。


「えっ、君って心の力を発現すらしてない状態だったの!? あはは、さ、さっきは色々試してごめんね、本当に身体が真っ二つになったかもしれなかったね。」

「…………」


 僕は、身震いした。それにしても彼女は僕が心の力を発現すらできないことすら気に止めず話続けた。

 普通の人であれば驚くなり何かしらの反応を見せるのに、きっと彼女は変わり者なのだろう。こんな感じなのだから。


「あはは、ごめんね! って今、何か失礼なこと考えなかった? まぁいいや、それより今回のお詫びで私が心の力の練習に付き合ってあげる! 本当なら面倒なことも疲れることも嫌なんだけど、何故か君には凄く興味が惹かれるから特別だよ。」


 本来なら僕自身の心の問題に人をもう巻き込みたくない、自分でどうにかするんだと決めていた。

 けど彼女なら何故か、心を許せてしまう様な気がした。


「あの、でも僕の心の力は他人を巻き込んでしまうんです。もし怪我でもさせてしまったら……」

「あははは、私に怪我させる? できるのなら試して欲しいよ。まぁ、任せて! これでも神徒って呼ばれてるみたいだから。」


何処から出てくる自信なのだろうか、でも不思議と彼女を信じ頼りにしてしまう自分がいた。


「何の騒ぎですか一体、もう学園が始まる時刻ですよ!」


 遠くから騒ぎに駆けつけてきた誰かが声をあげて、こちらへと向かってきている。


「あの声は堅物お嬢様! うーん、不味いわね逃げるしかないわ。私、行くから!」

「あぁ、そうだ、あまり神徒としての自己紹介は好きじゃないんだけど、あなたは新入生みたいだからわかりやすく教えとくね。」


 その綺麗な金色の瞳でこちらを見つめ、腰にまで届く長い白銀に輝く髪をなびかせながら君は僕に言った。


「私は第6のティファレトを冠する神徒エンゼル・ケイキス よ。」


 これが君と僕が出会った最初の日だった。

 彼女の心の力に触れた時に何か大切な事があった気が、いや思い出しそうな気がしたが忘れてしまった。

 だけど大丈夫、これからは一緒なのだから。




――これから彼女と共に何か新しいことが始まるのだろう、そんな予感がする。――





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